見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

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七〇九

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 それから三日経った。
フィエステリアームが城へケーキを運びに行った後、突然管理人が話し始めた。

「王国の使者と名乗る者が麓に現れました」

 なんだって。
王国の使者?
と言う事はカッパー王国国王の命によって何かを伝えに来たと言う事か。
いったい何だよ。

「上がって来いと言え」

 オオムカデンダルが面倒くさそうに言う。

「一人で上がって来られる奴なんか居ないでしょうよ」

 カルタスが呆れたように言った。
だいたい麓に管理人の声は届かない。

「ちぇー、面倒だな。インターホンでも作るか」

 オオムカデンダルはそんな事を良いながら俺を見た。
判ったよ、行けば良いんだろ。

「すまねぇな。俺たちじゃ自分が行くのは良いが、人を連れて帰ってくるのはちょっと骨が折れちまう」

 判ってるよ。
その為のミスリル銀山でもあるからな。

 俺は黙って手をあげると広間を出た。
わざわざメタルシェルを出すまでも無い。
ボードで充分だな。

 アジトの外へ出ると俺はボードを呼び出す。
すぐにボードが飛んで来て、俺の足下へと滑り込んでくる。

 そのまま足を乗せて地面を蹴ると、ボードは空中へと滑り出した。
人間の足では結構な距離だが、ボードなら一分掛からない。
道に沿わず最短距離で一直線に麓へと辿り着く。

 山の入り口で使者とおぼしき男がウロウロしているのが見える。
俺はその前に飛び降りた。

 ざっ

 男は目の前に降ってきた俺に驚いた。

「何の用だ」

 俺は男の態度は無視して用件を尋ねる。

「お、お前はネオジョルトの者か?」

「そうだ」

「さ、サンドラ王女よりお言葉がある。ネオジョルトの首魁に会いたい」

 震えているな。
大丈夫か。

「オオムカデンダルは上がって来いと言っている」

「ひ、一人で……?」

 使者は明らかに不安そうな顔を見せた。

「無理だろう?俺が連れていこう」

 俺は使者の腕を掴み、再びボードへと上がった。

「ひ……」

 使者はおっかなびっくりでボードに乗ったが、その瞬間に空中へと滑り出す。

「ひゃあああー!」

 使者は恥も外聞も無く、俺にしがみついた。

「ちょっ、ちょっと待てよ。危ないだろうが」

 俺はそう言ったが、使者は構わず俺にしがみついて絶対に離すまいと力を込める。
バランスを崩す前に着いた方が良いな。
俺はボードのスピードを上げて安定させると一気にアジトへと舞い戻った。

「連れて来たぞ」

 俺は小脇に使者を抱えて広間に入った。

「何だそれ。どう言う状態だ」

 オオムカデンダルが珍しい物を見たように言う。

「足がすくんで動けないそうだから、運んできた」

 俺は使者を床に立たせるとそう言って側を離れる。

「で、使者が俺に何の用だ」

 オオムカデンダルに言われて、使者はやっと本来の仕事を思い出した。

「さ、サンドラ王女のお言葉を伝える」

 使者は腰の鞄から羊皮紙を取り出すと、それを広げて読み始めた。

「秘密結社ネオジョルトは今回の戦争の責任をとり、賠償金として西の繁華街を王国に差し出す事」

 何を言っているんだ。
攻めて来たのも王国だし、負けたのも王国軍じゃないか。
何故我々が賠償金を支払わねばならんのか。

「ふむ。なかなか面白い内容だな」

 オオムカデンダルは鼻で笑って背もたれにもたれ掛かる。
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