見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

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七〇三

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 なんで出ないんだ。
このままだと西の繁華街を取られてしまう。
ソル殿下とせっかく契約を取り付けたのに。

「良いから、このまま静観だ。管理人、銀猫を呼べ」

「了解しました」

 天井から管理人の声がする。
銀猫をどうするつもりだ。

「はい。銀猫です」

 すぐに銀猫が通信に出た。

「今、そっちに王国の大軍が進軍している。銀猫、お前に指揮を任せる。どこまで抵抗できるかやってみろ」

「はっ、お任せ下さい」

 銀猫はそう言うと、通信を切った。
銀猫に指揮を任せる?
どう言う事だ。

 オオムカデンダルは黙ってモニターを見ている。
俺たちにも黙って見ていろと言う事なのか。

 街の至る所が映し出される。

「敵の軍隊が接近中。対象、カッパー王国正規軍。ネオジョルト戦闘員は各自、戦闘配置に付け。非戦闘員は地下公民館にて支援準備」

 街中に銀猫の声が響き渡る。
スピーカーも複数設置されているのか。

 銀猫の声を聞いて、住民は一瞬色めきだった。
しかしすぐに、全員が足早に移動を始める。

「おおいっ!戦闘員はこっちに集合だ!みんな、気合い入れろよおっ!」

 あれは宿屋の親父だ。
元気そうだな。
いや、そんな事よりもあの親父、戦闘員のリーダーなのか。

 かあん!かあん!かあん!

「二班はこっちだよ!グズグズするんじゃないよ!ほら、走って!」

 別の場所ではおばさんが鍋をおたまで叩いて声を張り上げた。
あれは、確か食堂のおばさんだ。
あのおばさんも戦闘員リーダーなのか。

 俺は驚いた。
全然知らなかった。

 住民たちは家から飛び出すと、それぞれの場所へと集まっていく。
全員がネオジョルトの紋様の入ったベルト、ブーツ、手袋、胸当て、そして兜のような物を被っている。

「なんだあの兜は」

 カルタスが呟く。

「軽くて丈夫、通信機能と酸素供給が可能なヘルメットだ。例え煙や毒ガスに巻かれても、一定時間なら堪えられる。暗視機能と光学望遠機能も付いている」

 蜻蛉洲がどことなく得意気に説明した。
こう言う時の蜻蛉洲は少し感情が見えやすいな。

「すげえな……俺たちの装備よりも良いんじゃねえか?」

「君たちは装備など無くてもモンスター級だろ。彼らは強化処置を施されているとは言え、ただの民間人だ」

 蜻蛉洲がカルタスに言う。
確かにあそこに居るのは、普通のオヤジやおばさんたちも多い。
戦闘力も多少上がっているだろうが、特徴はやはり戦闘員の数と連携による戦闘だろう。
その為の通信装置であり、各種機能なのだ。

「実践は初めてだからな、俺も興味深い」

 オオムカデンダルはそう言うと、嬉しそうに椅子に腰を下ろした。

「オオムカデンダル様、敵はどのように致しましょうか?」

 銀猫の声が聞こえる。

「全て任せる。日頃の成果を見せてみろ」

「了解しました」

 全権委任か。
銀猫に相当期待しているな。

「ふふふ、幸運な事に、うちは良い人材に恵まれているな。レオのお陰かな」

 オオムカデンダルが俺を見た。
おだてには乗らんぞ。
俺はそう言いながら、自分も手に汗を握っている事に気が付いた。
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