見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

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六九〇

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「くっ……くく……くぅ……」

 バルログが俺を睨み付けながら唸った。
やったぜ。
不安もあったが、俺だって強くなっているんだと言う気持ちは間違っていない。
マンモンだって圧倒できた。
勝てるのだ。

 俺を掴むバルログの手に力がこもる。

「く……くっ……くっ……」

 まだ抵抗するか。

「くっ……くっ……くっ……くっくっくっくっ」

 なんだ。

「くっくっくっくっはっはっはっはっ!」

 バルログが突然噴き出すように笑った。

「こんな事で勝ったと思ったのか。甘ったれめ」

 笑いながらバルログが腕を引き抜く。

「悪魔が心臓を潰されたくらいで死ぬかよ。欲しけりゃ土産に持って帰りな。僕ちゃん」

 どかっ!

 片手で俺の腕を握ったまま、もう片方の手で俺を殴り付けた。

「ぐぅ!」

 俺は吹っ飛んで地面に突っ伏した。
くそ、体の表面にいくつか損傷がある。
マグマをモロに受けてしまったからな。
ダメージもゼロでは無い。

「ふぅむ。お前、なかなかやるな。俺の配下にならんか?面白く使ってやるぞ」

 バルログが首をゴキゴキ言わせながらそう言う。
うかつだった。
そう言えば、マンモンも心臓など無くても平気だった。
ホント、学習しないな俺も。


「ちっ……冗談じゃない。悪魔となんか共存出来るか。プニーフタールの復活を望んで何をする気だ」

 俺は立ち上がってバルログに向かう。

「プニーフタールはただの道具だ。この三叉戟と同じ、人間どもをたくさん殺せる武器だよ」

「なんだと」

「人間は多過ぎる。増え過ぎだ。少しは魔界の生き物も済んでいるって事を忘れてもらいたくねぇやな。だから間引かねぇと」

 バルログはそう言ったが、どこまで本気で言っているのか。
本当にそれが理由なのか。

「世界のどこに行っても人間が我が物顔で住んでいやがる。弱っちいくせによ。偉そうにしやがって」

 俺は近付いてくるバルログに対して構えを取る。

「……だからよ、ちょっとぐらい殺しても良いよな?なぁに、ほんの数億人だ」

 だっ!

 言い終わると同時にバルログが駆け出す。
俺もそれを合図に走り出した。

 バキイッ!

 お互いにぶつかり様にパンチを繰り出す。
それがお互いの横っ面にめり込んだ。

「くっ……!」

 頭の中に血の血の匂いが広がる。
この野郎、殴り合いが希望か。

「お前は久しぶりに殴り甲斐があるな!嬉しいぜ人間!」

 冗談じゃない。
こちとら、この体になってから化け物とばっかり殴り合ってんだよ。
やってられるか、こん畜生。

「数億人も死んだら人口のほとんどじゃねえか。駄目に決まってんだろ!」

「代わりに魔界をくれてやるからそこに移住しろよ。良い所だぜ?水は無えし、食い物は砂みてえだし、人間を食うのが大好きな飢えた魔獣ばっかりだ!だって食いモンが無えんだからよ!はっはっはっはっ!」

 うるせえ野郎だ。
そんなに戦いが好きか。

「いぃやぁ、殺すのが好きなんだ」

 バルログがニィと笑う。

 だっ!

 俺はそれを無視して高く跳んだ。
久しぶりだがお前にはお見舞いしてやるぜ。
取って置きだ。
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