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六八八
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「俺も柄物を使うか」
バルログはそう言うと右手を握った。
しゅうっ
たちどころに手に三叉戟を握る。
武器を作り出しているのか。
俺はサフィリナックスヒューイットを地面に這わせる。
「ふっ!」
短く息を吐きながら腕を素早く振る。
たしっ!
地面を打って毒の触手が跳ね上がった。
波打ちながらバルログの正面を強襲する。
「ふん!」
だがバルログはいとも容易く三叉戟で跳ね退けた。
毒に触れないように武器を手にしたのだ。
戦い慣れているな。
だが。
触手と戟で数回打ち合いながら、俺は間合いを詰める。
威力のある攻撃は格闘の間合いで無ければ繰り出せない。
長射程の攻撃はサフィリナックスヒューイット以外無い。
「大口を叩いた割にはそんな物か。その毒はたいした物だが」
バルログが無駄口を叩く。
相手が悪魔であろうが、なんであろうが、実体を伴っていれば毒が効く。
常識はずれの強毒だ。
バルログも、さすがにサフィリナックスヒューイットには警戒している。
こういった地下や洞窟のような場所では激しく動き回れない。
俺のように動き回って相手を襲う戦い方は、動きを制限されてしまう。
触手以外の方法で大ダメージを与える。
やはり近接格闘しかない。
「ククク。何を考えているか判るぞ」
なに。
バルログが鼻で笑う。
「狭い所では動きが制限される。何とか近付かなければ。だろう?」
やはり読まれていたか。
さっきから俺は攻め立てている割りに、決定打を決められていない。
あれこれと試行錯誤する動きから、俺の考えを見透かしたのだ。
「だったら俺は好きに攻めさせてもらおう。小物に魔法などもったいないが、相手の嫌がる事はしておかないとな」
バルログが嫌らしく笑う。
ぼっ!
バルログが三叉戟を突き出す。
その先端から火の玉が飛び出す。
ファイヤー・ボールか。
さすがはバルログ。
無詠唱のファイヤーボールなど、当然のように撃ってくるな。
俺はそれを連続で避けた。
連発してくる所も、魔力量が無尽蔵な所をうかがわせた。
「はっはっはっはっ。いつまで避けられるかな?」
近付けば三叉戟が、離れればファイヤーボールが。
全く付け入る隙が無い。
死角が無かった。
くそ。
「焦りが見えるぞ」
バルログが嫌味を言う。
明らかに向こうに余裕があるな。
しかし、これは何とかしなければ。
「よそ見してんじゃねえ!」
バルログが突然吼えた。
ビリビリビリ
怒声が振動となって体に当たる。
体が一瞬、すくんでしまう。
オオオオオオオオオォ……
しまった。
一瞬の隙を突いて、バルログの前に巨大な魔方陣が組上がる。
まずいぞ。
ゴオオオオオオオオオ!
バルログの正面に魔方陣が完成すると同時に、巨大な火柱が発射された。
「くっ……!」
ガードが間に合わない。
とっさに顔を背けるのが精一杯だ。
ガオオオオオオオォォン……ッ!
獣の咆哮のような音を伴って、火柱が俺を吹き飛ばす。
「うわあああああっ!」
どがあっ!
そのまま天井に叩き付けられた。
「まだだぜ!」
バルログが畳み掛けてきた。
「ボルケーノ!」
バルログの叫びと共に地面が裂けて、地下から更に火柱が上がる。
デカいぞ!?
ドバッシャア!
マグマのような粘度の炎が俺を持ち上げ、更に爆発した。
バルログはそう言うと右手を握った。
しゅうっ
たちどころに手に三叉戟を握る。
武器を作り出しているのか。
俺はサフィリナックスヒューイットを地面に這わせる。
「ふっ!」
短く息を吐きながら腕を素早く振る。
たしっ!
地面を打って毒の触手が跳ね上がった。
波打ちながらバルログの正面を強襲する。
「ふん!」
だがバルログはいとも容易く三叉戟で跳ね退けた。
毒に触れないように武器を手にしたのだ。
戦い慣れているな。
だが。
触手と戟で数回打ち合いながら、俺は間合いを詰める。
威力のある攻撃は格闘の間合いで無ければ繰り出せない。
長射程の攻撃はサフィリナックスヒューイット以外無い。
「大口を叩いた割にはそんな物か。その毒はたいした物だが」
バルログが無駄口を叩く。
相手が悪魔であろうが、なんであろうが、実体を伴っていれば毒が効く。
常識はずれの強毒だ。
バルログも、さすがにサフィリナックスヒューイットには警戒している。
こういった地下や洞窟のような場所では激しく動き回れない。
俺のように動き回って相手を襲う戦い方は、動きを制限されてしまう。
触手以外の方法で大ダメージを与える。
やはり近接格闘しかない。
「ククク。何を考えているか判るぞ」
なに。
バルログが鼻で笑う。
「狭い所では動きが制限される。何とか近付かなければ。だろう?」
やはり読まれていたか。
さっきから俺は攻め立てている割りに、決定打を決められていない。
あれこれと試行錯誤する動きから、俺の考えを見透かしたのだ。
「だったら俺は好きに攻めさせてもらおう。小物に魔法などもったいないが、相手の嫌がる事はしておかないとな」
バルログが嫌らしく笑う。
ぼっ!
バルログが三叉戟を突き出す。
その先端から火の玉が飛び出す。
ファイヤー・ボールか。
さすがはバルログ。
無詠唱のファイヤーボールなど、当然のように撃ってくるな。
俺はそれを連続で避けた。
連発してくる所も、魔力量が無尽蔵な所をうかがわせた。
「はっはっはっはっ。いつまで避けられるかな?」
近付けば三叉戟が、離れればファイヤーボールが。
全く付け入る隙が無い。
死角が無かった。
くそ。
「焦りが見えるぞ」
バルログが嫌味を言う。
明らかに向こうに余裕があるな。
しかし、これは何とかしなければ。
「よそ見してんじゃねえ!」
バルログが突然吼えた。
ビリビリビリ
怒声が振動となって体に当たる。
体が一瞬、すくんでしまう。
オオオオオオオオオォ……
しまった。
一瞬の隙を突いて、バルログの前に巨大な魔方陣が組上がる。
まずいぞ。
ゴオオオオオオオオオ!
バルログの正面に魔方陣が完成すると同時に、巨大な火柱が発射された。
「くっ……!」
ガードが間に合わない。
とっさに顔を背けるのが精一杯だ。
ガオオオオオオオォォン……ッ!
獣の咆哮のような音を伴って、火柱が俺を吹き飛ばす。
「うわあああああっ!」
どがあっ!
そのまま天井に叩き付けられた。
「まだだぜ!」
バルログが畳み掛けてきた。
「ボルケーノ!」
バルログの叫びと共に地面が裂けて、地下から更に火柱が上がる。
デカいぞ!?
ドバッシャア!
マグマのような粘度の炎が俺を持ち上げ、更に爆発した。
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