682 / 826
六八一
しおりを挟む
またそんな簡単に。
今に始まった事では無いが、オオムカデンダルは面白そうかどうかで判断している部分も多い。
問題が起こるとも思っていないだろうが、何なら問題が起こるのを期待している節さえある。
困ったもんだ。
「アキラ」
ヴァルキリーが九条晃を見た。
「おっと。例えお前がここに来ても、俺はアンタの物にはならない」
「ふふふ、先の事は判るまい?」
会話だけ聞いていれば妖しい会話に聞こえなくも無いが、命をくれと言われているのだから色気などあった物では無いな。
「で、リッチはどうした。持って帰らなかったのか?」
「あれは無理だ。死んでも悪影響を撒き散らしている。ここに持ち帰れば生身の者は毒気に当てられる」
「ふむ……仕方がないな。まあ、あんなモノ欲しがるのは蜻蛉洲くらいだし良いか」
オオムカデンダルはそう言って背もたれに深くもたれた。
「リッチを倒したって事は、後はバルログって奴だけか。そいつを倒せばプニーフタールを復活させようってヤツは居なくなるな」
「……倒す気か?」
「もちろん。部下の悲願なんでね。自分の手で本懐を遂げさせてやりたいだろ?」
そんな事を思っていたのか。
いや、どこまで本気か怪しいな。
「そう簡単にいくかな。プニーフタール復活に必要なタレントは、もう間も無く揃う。バルログでさえ手に負えんのにプニーフタール復活を阻止できるとは思えん」
ヴァルキリーは慎重な姿勢を崩さない。
「プニーフタールが復活したら何が起こるんだ?」
俺は一番肝心な部分を尋ねた。
ハッキリ言ってその目的を俺は知らない。
「さあ。邪神の力を自分の目的の為に利用しようと言う奴は多いが、プニーフタール自身に意思があるのかどうかは不明だからな。ただ、本能のままに餌を求めてさ迷い出したら誰にも止められまい。だから太古に人間が封じ込めたのだ。倒せなかったのだよ」
人間には倒せずとも神や悪魔なら倒せるのでは無いか。
例えばドラゴンやそれに近い力を持つモンスターでも対抗できないのか。
「無理だな」
そんなに強大な力を持っていると言うのか。
「戦闘力は未知数だ。しかし空間を越えたり曲げたりする事は判っている。逃げられたら追う事もままならない。かつて封印しただけでも大金星だな」
空間を曲げる。
想像もつかない。
曲げたらどうなるんだ。
何が起こるんだ。
「よくもまあそんな生き物が生まれたな。この世界は成り立ちからして俺の知る世界とは違う。魔法は発達しているのに科学の『か』の字も見当たらない」
確かに。
カラクリ仕掛けと呼べそうな物は、風車や水車くらいだし、一番近代的な物で銃くらいの物だ。
しかも造れるのはドワーフから方法を教えてもらったからで、一部の職人しか作ることが出来ない。
「……プニーフタールはこの星の生き物では無いと言われている」
ヴァルキリーが突然信じられない事を言い出した。
「宇宙生物かあ」
オオムカデンダルが嬉しそうに言った。
椅子をくるくると回転させ始める。
「イマイチ乗り気じゃ無かったんだが、俄然興味が湧いてくるな」
確かにオオムカデンダルはそれほどプニーフタールに関心を示していなかった。
俺のやりたいようにやらせてくれていたのも、そう言う部分が大きかったのかもしれない。
今に始まった事では無いが、オオムカデンダルは面白そうかどうかで判断している部分も多い。
問題が起こるとも思っていないだろうが、何なら問題が起こるのを期待している節さえある。
困ったもんだ。
「アキラ」
ヴァルキリーが九条晃を見た。
「おっと。例えお前がここに来ても、俺はアンタの物にはならない」
「ふふふ、先の事は判るまい?」
会話だけ聞いていれば妖しい会話に聞こえなくも無いが、命をくれと言われているのだから色気などあった物では無いな。
「で、リッチはどうした。持って帰らなかったのか?」
「あれは無理だ。死んでも悪影響を撒き散らしている。ここに持ち帰れば生身の者は毒気に当てられる」
「ふむ……仕方がないな。まあ、あんなモノ欲しがるのは蜻蛉洲くらいだし良いか」
オオムカデンダルはそう言って背もたれに深くもたれた。
「リッチを倒したって事は、後はバルログって奴だけか。そいつを倒せばプニーフタールを復活させようってヤツは居なくなるな」
「……倒す気か?」
「もちろん。部下の悲願なんでね。自分の手で本懐を遂げさせてやりたいだろ?」
そんな事を思っていたのか。
いや、どこまで本気か怪しいな。
「そう簡単にいくかな。プニーフタール復活に必要なタレントは、もう間も無く揃う。バルログでさえ手に負えんのにプニーフタール復活を阻止できるとは思えん」
ヴァルキリーは慎重な姿勢を崩さない。
「プニーフタールが復活したら何が起こるんだ?」
俺は一番肝心な部分を尋ねた。
ハッキリ言ってその目的を俺は知らない。
「さあ。邪神の力を自分の目的の為に利用しようと言う奴は多いが、プニーフタール自身に意思があるのかどうかは不明だからな。ただ、本能のままに餌を求めてさ迷い出したら誰にも止められまい。だから太古に人間が封じ込めたのだ。倒せなかったのだよ」
人間には倒せずとも神や悪魔なら倒せるのでは無いか。
例えばドラゴンやそれに近い力を持つモンスターでも対抗できないのか。
「無理だな」
そんなに強大な力を持っていると言うのか。
「戦闘力は未知数だ。しかし空間を越えたり曲げたりする事は判っている。逃げられたら追う事もままならない。かつて封印しただけでも大金星だな」
空間を曲げる。
想像もつかない。
曲げたらどうなるんだ。
何が起こるんだ。
「よくもまあそんな生き物が生まれたな。この世界は成り立ちからして俺の知る世界とは違う。魔法は発達しているのに科学の『か』の字も見当たらない」
確かに。
カラクリ仕掛けと呼べそうな物は、風車や水車くらいだし、一番近代的な物で銃くらいの物だ。
しかも造れるのはドワーフから方法を教えてもらったからで、一部の職人しか作ることが出来ない。
「……プニーフタールはこの星の生き物では無いと言われている」
ヴァルキリーが突然信じられない事を言い出した。
「宇宙生物かあ」
オオムカデンダルが嬉しそうに言った。
椅子をくるくると回転させ始める。
「イマイチ乗り気じゃ無かったんだが、俄然興味が湧いてくるな」
確かにオオムカデンダルはそれほどプニーフタールに関心を示していなかった。
俺のやりたいようにやらせてくれていたのも、そう言う部分が大きかったのかもしれない。
0
お気に入りに追加
32
あなたにおすすめの小説
穢れた救世主は復讐する
大沢 雅紀
ファンタジー
吾平正志はクラスメイトたちから虐められ、家族からも無視されていた。追い詰められた彼は自殺を計るが、死の寸前に現れた大魔王サタンと契約を結び、新人類となる。復活した正志は仲間を増やし、家族、学校、そして社会全体を破壊していく。すべては人類の救済のために
余命宣告を受けた僕が、異世界の記憶を持つ人達に救われるまで。
桐山じゃろ
ファンタジー
剣と魔法の世界にて。余命宣告を受けたリインは、幼馴染に突き放され、仲間には裏切られて自暴自棄になりかけていたが、心優しい老婆と不思議な男に出会い、自らの余命と向き合う。リインの幼馴染はリインの病を治すために、己の全てを駆使して異世界の記憶を持つものたちを集めていた。
前世で処刑された聖女、今は黒薬師と呼ばれています
矢野りと
恋愛
旧題:前世で処刑された聖女はひっそりと生きていくと決めました〜今世では黒き薬師と呼ばれています〜
――『偽聖女を処刑しろっ!』
民衆がそう叫ぶなか、私の目の前で大切な人達の命が奪われていく。必死で神に祈ったけれど奇跡は起きなかった。……聖女ではない私は無力だった。
何がいけなかったのだろうか。ただ困っている人達を救いたい一心だっただけなのに……。
人々の歓声に包まれながら私は処刑された。
そして、私は前世の記憶を持ったまま、親の顔も知らない孤児として生まれ変わった。周囲から見れば恵まれているとは言い難いその境遇に私はほっとした。大切なものを持つことがなによりも怖かったから。
――持たなければ、失うこともない。
だから森の奥深くでひっそりと暮らしていたのに、ある日二人の騎士が訪ねてきて……。
『黒き薬師と呼ばれている薬師はあなたでしょうか?』
基本はほのぼのですが、シリアスと切なさありのお話です。
※この作品の設定は架空のものです。
※一話目だけ残酷な描写がありますので苦手な方はご自衛くださいませ。
※感想欄のネタバレ配慮はありません(._.)
組長様のお嫁さん
ヨモギ丸
BL
いい所出身の外に憧れを抱くオメガのお坊ちゃん 雨宮 優 は家出をする。
持ち物に強めの薬を持っていたのだが、うっかりバックごと全ロスしてしまった。
公園のベンチで死にかけていた優を助けたのはたまたまお散歩していた世界規模の組を締め上げる組長 一ノ瀬 拓真
猫を飼う感覚で優を飼うことにした拓真だったが、だんだんその感情が恋愛感情に変化していく。
『へ?拓真さん俺でいいの?』
いらないと言ったのはあなたの方なのに
水谷繭
恋愛
精霊師の名門に生まれたにも関わらず、精霊を操ることが出来ずに冷遇されていたセラフィーナ。
セラフィーナは、生家から救い出して王宮に連れてきてくれた婚約者のエリオット王子に深く感謝していた。
エリオットに尽くすセラフィーナだが、関係は歪つなままで、セラよりも能力の高いアメリアが現れると完全に捨て置かれるようになる。
ある日、エリオットにお前がいるせいでアメリアと婚約できないと言われたセラは、二人のために自分は死んだことにして隣国へ逃げようと思いつく。
しかし、セラがいなくなればいいと言っていたはずのエリオットは、実際にセラが消えると血相を変えて探しに来て……。
◆表紙画像はGirly drop様からお借りしました🍬
◇いいね、エールありがとうございます!
【完結】契約結婚は閃きの宝庫
つくも茄子
恋愛
アリックス・リードは二十三歳になる子爵令嬢。若い頃、婚約に失敗して行き遅れになった彼女は、王妃付きの女官をしていた。結婚願望ゼロの彼女にとある人物との結婚話が舞い込む。そのお相手とは、社交界きっての貴公子であるオエル・ブリトニー伯爵。両親を早くに亡くし、爵位を若くして継いだ彼は、超有望物件。ただし遊び人として有名だった。だからと言う訳ではないが伯爵は未だに独身。結婚する気配すらなかった。それもそのはず、伯爵本人が結婚する気が全くないのだから。
そんな伯爵との結婚に疑問を感じるアリックス。実はこの結婚は彼女の兄が持ってきたもの。実は、兄と伯爵は学友。色々な思惑アリの結婚話。一見、アリックスには全くメリットのない結婚と思われた。だが、彼女はこの結婚を承諾する。契約結婚として・・・。
何故、彼女は契約結婚を承諾したのか?
茶番には付き合っていられません
わらびもち
恋愛
私の婚約者の隣には何故かいつも同じ女性がいる。
婚約者の交流茶会にも彼女を同席させ仲睦まじく過ごす。
これではまるで私の方が邪魔者だ。
苦言を呈しようものなら彼は目を吊り上げて罵倒する。
どうして婚約者同士の交流にわざわざ部外者を連れてくるのか。
彼が何をしたいのかさっぱり分からない。
もうこんな茶番に付き合っていられない。
そんなにその女性を傍に置きたいのなら好きにすればいいわ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる