見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

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六八一

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 またそんな簡単に。
今に始まった事では無いが、オオムカデンダルは面白そうかどうかで判断している部分も多い。
問題が起こるとも思っていないだろうが、何なら問題が起こるのを期待している節さえある。
困ったもんだ。

「アキラ」

 ヴァルキリーが九条晃を見た。

「おっと。例えお前がここに来ても、俺はアンタの物にはならない」

「ふふふ、先の事は判るまい?」

 会話だけ聞いていれば妖しい会話に聞こえなくも無いが、命をくれと言われているのだから色気などあった物では無いな。

「で、リッチはどうした。持って帰らなかったのか?」

「あれは無理だ。死んでも悪影響を撒き散らしている。ここに持ち帰れば生身の者は毒気に当てられる」

「ふむ……仕方がないな。まあ、あんなモノ欲しがるのは蜻蛉洲くらいだし良いか」

 オオムカデンダルはそう言って背もたれに深くもたれた。

「リッチを倒したって事は、後はバルログって奴だけか。そいつを倒せばプニーフタールを復活させようってヤツは居なくなるな」

「……倒す気か?」

「もちろん。部下の悲願なんでね。自分の手で本懐を遂げさせてやりたいだろ?」

 そんな事を思っていたのか。
いや、どこまで本気か怪しいな。

「そう簡単にいくかな。プニーフタール復活に必要なタレントは、もう間も無く揃う。バルログでさえ手に負えんのにプニーフタール復活を阻止できるとは思えん」

 ヴァルキリーは慎重な姿勢を崩さない。

「プニーフタールが復活したら何が起こるんだ?」

 俺は一番肝心な部分を尋ねた。
ハッキリ言ってその目的を俺は知らない。

「さあ。邪神の力を自分の目的の為に利用しようと言う奴は多いが、プニーフタール自身に意思があるのかどうかは不明だからな。ただ、本能のままに餌を求めてさ迷い出したら誰にも止められまい。だから太古に人間が封じ込めたのだ。倒せなかったのだよ」

 人間には倒せずとも神や悪魔なら倒せるのでは無いか。
例えばドラゴンやそれに近い力を持つモンスターでも対抗できないのか。

「無理だな」

 そんなに強大な力を持っていると言うのか。

「戦闘力は未知数だ。しかし空間を越えたり曲げたりする事は判っている。逃げられたら追う事もままならない。かつて封印しただけでも大金星だな」

 空間を曲げる。
想像もつかない。
曲げたらどうなるんだ。
何が起こるんだ。

「よくもまあそんな生き物が生まれたな。この世界は成り立ちからして俺の知る世界とは違う。魔法は発達しているのに科学の『か』の字も見当たらない」

 確かに。
カラクリ仕掛けと呼べそうな物は、風車や水車くらいだし、一番近代的な物で銃くらいの物だ。
しかも造れるのはドワーフから方法を教えてもらったからで、一部の職人しか作ることが出来ない。

「……プニーフタールはこの星の生き物では無いと言われている」

 ヴァルキリーが突然信じられない事を言い出した。

「宇宙生物かあ」

 オオムカデンダルが嬉しそうに言った。
椅子をくるくると回転させ始める。

「イマイチ乗り気じゃ無かったんだが、俄然興味が湧いてくるな」

 確かにオオムカデンダルはそれほどプニーフタールに関心を示していなかった。
俺のやりたいようにやらせてくれていたのも、そう言う部分が大きかったのかもしれない。
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