見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

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六六九

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 兵士たちは、お互いに顔を見合わせた。

「世界征服しても何もしない……?」

 そこに引っ掛かったか。
まあ、気持ちは判る。
俺も完全に理解できている訳では無い。
何もしないなら征服などしなければ良いではないか。
彼らはきっとそう思っている。

「う、嘘を吐くな……!」

 隊長らしき男が言った。

「嘘など吐かん。信じなければそれでも良かろう。お前たちの意思など僕たちには関係無い。勝手に征服させてもらう」

 史上かつて、これほど勝手にされて困る事も無いが。

「人間は馬鹿だからね。まあ、愛すべき馬鹿な訳だが……自由が無ければ進歩しない。しかし、勝手にさせると自ら滅びの道を行こうとする」

 オオムカデンダルと違って説明はする気なのか。

「権力を持てば他人を隷属させ、富を持てばどこまでも自我が増長する。人間と言うのはホントにどうしようもない存在だ」

 兵士たちはオニヤンマイザーの話を黙って聞いた。

「だから自由にはさせる。ただし、あまりに道から外れたら取り除く」

「取り除く……」

 兵士たちが呟く。

「そうだ。この星にそんな人間は要らない。不要な害虫は駆除しなければならない。人間は嘘を吐くし、誤魔化そうとする。同じ人間がそれを裁き罰を下す。そもそも無茶な話だ。だから僕らがその役を引き受ける」

「ほ、法になろうと言うのか!?」

「へぇ。上手い事を言うね。そう言う見方も出来るな。まあ、事はそう単純でも無いが、判りやすく言えばそう言う事だ」

 本当はもっと複雑な筈だ。
だが、今のこの時点でネオジョルトの理想を完全に理解できる人間は、この世界には一人も居まい。

「ふ……ふざけるな!」

 兵士の一人が怒りを露にした。

「何様のつもりだ!我らが王がそんな事をお認めになる筈が無い!帝国の皇帝もだ!貴様のような異形の化け物に支配なんかされて堪るか!」

 なかなか度胸があるな。
オニヤンマイザーの姿を見てそこまで言い切れるとは。
だったらジャバウォックにも同じ感じで挑んで欲しかった。

「君たちの意見など聞かないと言っただろう?これだから馬鹿なヤツとは話したくないんだ」

「貴様あ……ッ!」

「そんな小市民の意見など一々聞いていたら、出来る事も出来ない。もう一度言う。僕らはお願いしている訳でも、意見を求めている訳でも無い。邪魔するなら殺すと言っている。難しい事などこれっぽっちも言っていない。理解したかね?」

「お……面白い。俺は誇り高き王国騎士団の団員だ。王国を滅ぼすと言われてスゴスゴ帰れるか!ここで貴様を成敗する!」

 コイツ、さっきの戦いを見なかったのか。
腰が抜けていただろうに。
なまじ会話が成立すると、相手を自分と同じだと錯覚する。
お前など一秒で痕跡すら残らないぞ。

「ま、待て!」

 隊長らしき男が若い兵士を止めた。

「止めないで下さい!」

「お前が敵う相手か良く考えろ」

「敵わないから立ち向かわないなんて、王国騎士団の名折れです!」

「良いから引っ込んでいろ!」

 隊長は強引に兵士を後ろへ引っ張った。

「アンタ……見た目によらず紳士的だな。鼻持ちならないが……」

 隊長がオニヤンマイザーに言った。
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