見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

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六五四

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 俺はそれからしばらくの間、アジトで過ごした。
特に命令が無ければ自由に過ごしているが、今はミーアの事が気掛かりでアジトを離れる気にはなれなかった。

 本当はプニーフタールを追いたい。
しかし今はミーアだ。
毎日ミーアの部屋を訪れるが、記憶が戻る気配は無い。
暴れて体を怪我する事もある為、最近は寝かせている事が多くなった。

 早く何とかしなければ。
オオムカデンダルはあまり心配するなと言っていた。
彼がそう言うのなら大丈夫なんだろうが、やはり落ち着かない。
焦りが払拭される事は無かった。

「レオ。広間に来い」

 オオムカデンダルの声が聞こえる。
俺はミーアの部屋を後にすると、広間へと向かう。

「なんだ」

「そろそろ晃が目を覚ます。アイツらを呼んできてやれ」

「判った」

 俺は一週間ぶりに街へと向かった。
銀猫を訪ねる。

「ああ、彼らなら食堂だろう」

 俺は銀猫に言われたように食堂を覗いた。
居るな。
奥のテーブルで食事をしている。

「おい」

 俺は四人に声を掛けた。

「レオ……アキラは目が覚めたのか?」

「そろそろ目覚めの時間だから呼んでこいと言われたんだ。行くぞ」

 四人は慌てて食事を口に詰め込むと、すぐに席を立った。

「しかし、この街には驚かされる」

 メタルシェルに乗り込むなり、バルバが開口一番そう言った。

「ご飯が美味しいの!」

 ルガがこれだけは言いたいとばかりに声をあげた。

「いや、それもそうだが……大陸中探してもこんな街は無い。いや、国として見ても無いだろうな」

 バルバが言いながら腕を組んだ。

「豊かさだけでは無い。みんなの表情が違う。何と言うか、ありきたりな言い方だがみんな笑顔が眩しいんだ。希望を感じる」

 コイツ、こんな事を言うヤツだったか。
俺は一瞬そんな事を思った。
だがバルバの言う事は当たっている。
ヤツがそう思うくらい西の繁華街は甦ったのだ。

 かつての暗い雰囲気は無い。
貧しく怪しい犯罪の温床だったあの頃とは、まったく見違える。

 秘密結社の直轄地がこれほど健全なのには違和感を覚えるが。

「漁業、農業は言うに及ばず、工業や飲食業、自警団のような物まである。どれもレベルはかなりの高さだ」

「職の無いヤツは全員ネオジョルトの職員と言う事になっている。自警団はその受け皿だ」

 俺はバルバに説明した。

「と言う事は……」

「無職は居ない。完全雇用だ。まあ、自警団だけでは無く、非常時には住民全員が戦闘員となるがな」

「なんだと」

 バルバが驚いた。

「あの街に住む全員が戦闘員!?」

「そうだ」

「けっ。役に立つのか一般人が」

 ガイが割り込んできた。

「ふふ、彼らはただの一般人では無い。希望者は訓練を受けているし、肉体強化の恩恵も受けられる。その辺の力自慢じゃ太刀打ちすら出来ん」

「……なんてこった」

 ガイはショックを受けた。
こんな街は世界にここだけだ。
常識を破壊されてはショックを受けるしか無かった。
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