見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

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六三九

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 あっという間だった。
一瞬で二人も食われた。

「ディーレぇ!バルバぁ!」

 ルガが狂ったように取り乱す。

「待て!落ち着け!」

 ガイが必死にルガを取り押さえる。

「離せー!この化け物めー!返せよー!」

 ルガはガイを振り払おうと必死で暴れた。
どうする。
早く何とかしなければ、消化が始まってしまう。

 しかし、うかつに真っ二つにするのは危険だ。
あの頭の中がどうなっているのか。
食われた二人がどの部分にあるのか判らなければ、彼らごと真っ二つになりかねない。

「顔だけのくせしやがって……どんな造りになってるんだ」

 俺は一人ごちる。
ただし、時間は無い。
すぐに決めなければ。

「よし。脳天だ……」

 俺は狙いを脳天に定めた。
人間の頭の形状からすれば、口は口である。
他にスペースが有るとすれば、脳天以外に考えられない。

 じゃあ脳はどこなのか。
そんな事は知らん。
あんな化け物が理性を持って行動していると考える方が無理があるだろう。

 パッと見、頭蓋骨の厚みは七、八センチといった所か。
ジャンプして脳天を切り開く。

 そうと決まれば行動あるのみだ。
俺は助走をつけて飛び上がる。

 だっ!

 地面を蹴って女の頭の上へと舞い上がった。
ここだ。

 しゅらる

「なんだと!?」

 空中から襲い掛かる俺に対して、女の髪の毛が絡み付く。
髪の毛まで操れるのか。
しかも一本一本が太い。
ただでも人間の髪の毛は丈夫なのに、この太さでは。

 俺はほどこうと試みるが、ちょっとやそっとでは引きちぎれそうも無い。
サフィリナックスブレードで切ろうにも、二の腕に絡まった髪の毛が腕を振らせてはくれない。

 ちゃんと前腕部分には触れないように俺を捕らえている。
知能はあるのか。
脳はどこだ。

「あぁーん……」

 女が口を大きく開く。
髪の毛が俺を口元へと運んだ。
食う気か。

 何とか逃れようとするが、空中に持ち上げられて踏ん張る所が無い。
髪の毛を引きちぎる事も出来ない。
そしてサフィリナックスブレードで切る事も。

 どうする。
俺は考えた。
しかし、如何せん時間が無い。
もう口元まで運ばれている。
クソッ。

「チェストおおお!」

 雄叫びと共に女が態勢を崩す。
雄叫びの主はガイだった。

「やああああっ!」

 ルガが反対側で女の脚を斬りつけている。
ガイとルガが、両側で女の脚をめった斬りにしている。

「餌が良いと食い付きも良いな」

 ガイが皮肉を言って鼻で笑う。

「こンのおー!ディーレを返せえ!」

 ルガが怒りに任せて女の脚を切り刻んだ。

「おおおお!」

 女が怒声をあげる。

 ぶんっ!

「うおあ!?」

 女は俺をガイへ目掛けて投げつけた。

「おっと」

 それをガイはヒラリかわす。
当然俺は地面へと激突した。

「ぐ……!くそったれ……めり込んでるじゃねえか……」

 俺は地面から体を引き抜いた。

「どうせ、あのくらいじゃくたばらねえんだろ?」

「避けるなよ」

「冗談言うな」

 俺は立ち上がると、再び飛び上がる。

「ちっ!学習しねえな」

 ガイが舌打ちした。

「ちゃんと引き付けてろよ」

 俺はそう言うと手首から触手を伸ばした。

「サフィリナックスヒューイット!」

 すぐさま群がる髪の毛を触手で迎え撃つ。
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