見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

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六二七

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 着陸出来そうなのはここだけか。
周りは全て森だ。
少し開けた場所に着陸したメタルシェルから俺たちは外に出た。

「ここから歩きだな。だいたい百メートルって所だ」

 俺はそう言って、北の方角に向かって歩きだした。
七人は俺の後を付いてくる。

「おい、何でお前が先頭なんだよ」

 ガイが文句を言ってきた。

「ならお前が先頭を歩くか?」

「……いや、いい」

 何なんだよ。
お前らが恐れるマンモンの屋敷だぞ。
代わりに先頭を歩いていると言うのに。

「ねえ……暗くない?」

 オレコが突然言った。
最初、何を言っているのか判らなかったが、すぐに薄暗くなってきているのに気が付いた。

「おかしい。まだ昼過ぎだぞ」

 俺は空を見た。

「おい、太陽が……」

 カルタスが西の方に傾いていく太陽を指差した。
俺たちの影もどんどん伸びていく。

「なんだこれは……」

 バルバが動揺しながら空を眺める。

「……夜になろうとしている」

 低い声がした。
振り向くとトラゴスがしゃべっている。
これは、バフォメットか。

「マンモンの力だろう。獲物を逃すまいと急いで夜にしているのだ」

 獲物だと。

「我らの事だ」

 なるほど。
納得したぜ。
話に聞けばマンモンは『七つの大罪』に数えられるほどの実力者だと言う。
悪魔たちの中でも原始と言っても良い。

「アンタとどっちが強いんだ?」

 俺は皮肉を込めてバフォメットに尋ねた。

「……」

 バフォメットは黙って答えない。
言いたくないって事か。
つまりマンモンの方が格上って訳だ。
上級悪魔に数えられるバフォメットでさえ躊躇するとは。
俺は少し緊張感を持った。

 そんな間にも雲は空を覆い、小雨が降りだしてくる。
遠くに雷光も見え始めた。

「これもマンモンの影響か」

「さすがね。天変地異くらい朝飯前って事かしら」

 カルタスとオレコが緊張しているのが判る。

「雨が本格的になりそうだ。走るぞ」

 俺はそう言って駆け足になった。
七人は俺に合わせて走り出す。
木々を抜けると目の前に屋敷が見えてくる。
古い錆びた門が行く手を阻んでいた。

「とお!」

 俺は掛け声と共に門を蹴破る。
閉じていた門は左右に吹き飛んだ。

「乱暴だね。家でもそうなのかい?」

 ルガが言う。

「まさか。他人の家だからな」

 俺はそう言って敷地内に入り込んだ。

 何だ。

 入った瞬間に空気が変わる。
冷たく張り詰めた雰囲気が辺りに充満している。

「凄い負の魔力だわ……」

 ディーレが呟く。
マンモンの魔力なのか。
姿も見せないうちから殺る気満々だな。

「気を付けろ。何をしてくるか判らんぞ」

 俺はみんなに声を掛けた。
そのまま進む。
屋敷の入り口から中に入る。
ノブを引くと、簡単に扉が開いた。
不用心だな。

 いや、これは招き入れようとしているな。

「面白い。受けて立つ」

 頭の中にオオムカデンダルの声が聞こえた。
見ているのか。
当然だな。
だが、受けて立つのは俺なんだが。

「堅い事を言うなよ。ほれ、進め」

 俺はオオムカデンダルに急かされて、屋敷に足を踏み入れた。
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