見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

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五九九

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 通路の途中で様々な人とすれ違う。
これが全員城に出入りしている人間なのだ。
何と言う数の多さか。
そして何と言う広さなのか。

 通路も広く、天井も高い。
それが上の階に行くほど小さく狭くなってくる。
おそらく敵の侵入に対して、大部隊を展開しにくい造りになっているのだな。

 それでもソル皇子の部屋までは、何とか冷蔵庫は通り抜けられそうだ。

「ここじゃ」

 ソル皇子がそう言って扉を開く。
広い。
ただひたすらに広い。
何だこれは、これが個人の部屋か。
死ぬまでにこのスペース全ては使いきれないんじゃないのか。

 天井も再び高い。
部屋の奥には庭がある。
ここは上階なんだぞ。
訳が判らない。

「ふむ。そうさの、この辺に置いてもらおうかの」

 部屋のど真ん中にか。
相変わらず、王侯貴族やら大金持ちの考える事は判らんな。
それともセンスの問題か。

 だがフィエステリアームはそんな事はお構いなしに、言われた所に冷蔵庫を置いた。
異様な光景だな。

 だだっ広い部屋のど真ん中に巨大な冷蔵庫。
まあ、いいか。

「じゃあ僕は帰る。また明日同じ時間に運んで来る」

 フィエステリアームがそう言って背中を向けた。

「判った。気を付けてな」

 そう言ってから、フィエステリアームが気を付けなければならない事など、この世には無いなと思った。

「ところでレオよ。今そこに居るのかえ?」

「はい」

「改めて凄いのう。全く見えん」

「殿下の警護にはうってつけかと」

「ほほほ。確かにな」

「基本的に私は殿下のお側に居るとお思い下さい」

「うむ。あい判った」

 そうして、地味にキツい警護が始まった。
ずっと黙ったまま、殿下の後ろを追って歩く。
しかも無駄に広い。
手荒いに行くのにもこの長い距離を着いて歩くのだ。

 普段、皇族の身の周りに居る、世話係の苦労が良く判る。
これはさすがに一人では務まらない。
この出入りする人間の数にも納得がいった。

 そんなこんなで数日が過ぎる。
毎日ケーキと珈琲が届けられ、それを城の人間に労いとして配った。
初日のうちにほぼ全員がこの味にやられた。
今ではもうすっかり、お茶の時間を楽しみにして、時間が近付くと皇帝から門番までそわそわしだす。

 こんなにも効果てき面か。
フィエステリアームが言うには、甘い物を食べると脳から幸せを感じる成分が分泌されるんだとか。
それは脳内麻薬とも呼ばれるほどに、人間に快感を感じさせるのだそうだ。

 まさか、これもオオムカデンダルの計算の内なのか。
まさかなと思う反面、彼ならやり兼ねないとも思った。

 これだけケーキと珈琲が広まったのだ。
奴らもきっと口にしているだろうが、さて。
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