595 / 826
五九五
しおりを挟む
しかし、あんな連中が城に出入りしていて、その城にソル皇子を帰すと言うのもどうなのか。
「構わぬ。別に余は気にせんぞ」
それはさすがに少しばかり危険なんじゃないか。
「まあ、城の中で堂々と殺るくらいならもう殺っている気もするな」
オオムカデンダルが言う。
更に続けた。
「だが、まあ大丈夫だろ。その内に手など出なくなる」
その自信はどこから来るのか。
「毎日大量にケーキと珈琲送ってやるからよ、城の人間にたっぷり食わせてやれ」
何だそりゃ。
「……餌付けするって事?」
令子が首をかしげながら言った。
「そういう事。意外と人間と言うのはこういう原始的な方法が有効だからな。しかも三大欲求の一つである食欲に抗うのは難しい。人は旨い物を際限無く求める」
それはそうかも知れないが。
「城内の人間全てが殿下を狙っている訳ではあるまい。ほとんどの人間は変わらずに殿下に接するだろ。これで餌付けしてやれば余計に殿下の好感度は上がる。誰もが次のケーキと珈琲を楽しみにする筈だ。そんな中で殿下に手出し出来ると思うか?」
それは……判らん。
そんな簡単な方法で暗殺が止められるとは思わないが。
「良いんだよ。人目に着く所で豪勢に振る舞えば。暗殺と言っても城内で剣を抜く馬鹿はいない。せいぜい毒殺が関の山だ」
じゃあ毒殺を企てられたらどうするのか。
「俺がそんな対策も立てられないと思うのか?」
その言い方はズルいぞ。
思うとは言えないだろう。
「……じゃあ何か対策があるのか?」
俺はおずおずと尋ねた。
「当たり前だろ。この世界の文化水準から言えば毒を盛るなら、かなりの確率で青酸カリだ。最初からこの珈琲とケーキには、青酸カリを主な対象として、強い解毒成分が含まれている。誰かが毒を盛っても効果はほぼ無い」
ケーキと珈琲以外に毒を盛られたらどうするんだ。
「一回ケーキと珈琲をセットで食べると三十時間は効果がある。殿下はもっと食べるだろうが、だとすれば余計に安心だ。問題など無い」
大丈夫なのかそんな劇薬ぽい物。
「天然の成分から蜻蛉洲が作った解毒薬だ。副作用などある訳無いだろ」
蜻蛉洲の名前が出ると信頼感が違うな。
何と言うか、謎の信頼感がある。
俺は何となく安心した。
「……何かムカつくなお前」
オオムカデンダルがボソッと言った。
俺は気付かないふりをする。
「それとレオ。お前、今日から城へ入れ」
は?
「まて、それはいったいどう言う意味だ」
「判らんか?城で寝泊まりをしろと言っている」
いや、それは判る。
俺が言っているのは何故、秘密結社の怪人が城で寝泊まりをしなければならんのか、と言う事だ。
「鈍いなお前は」
悪かったな。
判るように言ってくれれば良いだけだと思うが。
「余の警護だな?」
「その通り。さすがは殿下。話が早くて助かるぜ」
ちぇっ。
「だからと言って、そんな簡単に城に入れる訳無いだろ」
俺は反論を試みる。
「相手は化け物連れ込んでるんだぞ?別に改造人間が入ったって良かろう」
そう言う問題なのか。
「構わぬ。余が認めれば文句は出まい」
本気か。
「じゃあ準備が出来たらレオに土産も持たせる。ふつつか者だが宜しく頼むよ」
「ほっほっほっ。あい判った」
「構わぬ。別に余は気にせんぞ」
それはさすがに少しばかり危険なんじゃないか。
「まあ、城の中で堂々と殺るくらいならもう殺っている気もするな」
オオムカデンダルが言う。
更に続けた。
「だが、まあ大丈夫だろ。その内に手など出なくなる」
その自信はどこから来るのか。
「毎日大量にケーキと珈琲送ってやるからよ、城の人間にたっぷり食わせてやれ」
何だそりゃ。
「……餌付けするって事?」
令子が首をかしげながら言った。
「そういう事。意外と人間と言うのはこういう原始的な方法が有効だからな。しかも三大欲求の一つである食欲に抗うのは難しい。人は旨い物を際限無く求める」
それはそうかも知れないが。
「城内の人間全てが殿下を狙っている訳ではあるまい。ほとんどの人間は変わらずに殿下に接するだろ。これで餌付けしてやれば余計に殿下の好感度は上がる。誰もが次のケーキと珈琲を楽しみにする筈だ。そんな中で殿下に手出し出来ると思うか?」
それは……判らん。
そんな簡単な方法で暗殺が止められるとは思わないが。
「良いんだよ。人目に着く所で豪勢に振る舞えば。暗殺と言っても城内で剣を抜く馬鹿はいない。せいぜい毒殺が関の山だ」
じゃあ毒殺を企てられたらどうするのか。
「俺がそんな対策も立てられないと思うのか?」
その言い方はズルいぞ。
思うとは言えないだろう。
「……じゃあ何か対策があるのか?」
俺はおずおずと尋ねた。
「当たり前だろ。この世界の文化水準から言えば毒を盛るなら、かなりの確率で青酸カリだ。最初からこの珈琲とケーキには、青酸カリを主な対象として、強い解毒成分が含まれている。誰かが毒を盛っても効果はほぼ無い」
ケーキと珈琲以外に毒を盛られたらどうするんだ。
「一回ケーキと珈琲をセットで食べると三十時間は効果がある。殿下はもっと食べるだろうが、だとすれば余計に安心だ。問題など無い」
大丈夫なのかそんな劇薬ぽい物。
「天然の成分から蜻蛉洲が作った解毒薬だ。副作用などある訳無いだろ」
蜻蛉洲の名前が出ると信頼感が違うな。
何と言うか、謎の信頼感がある。
俺は何となく安心した。
「……何かムカつくなお前」
オオムカデンダルがボソッと言った。
俺は気付かないふりをする。
「それとレオ。お前、今日から城へ入れ」
は?
「まて、それはいったいどう言う意味だ」
「判らんか?城で寝泊まりをしろと言っている」
いや、それは判る。
俺が言っているのは何故、秘密結社の怪人が城で寝泊まりをしなければならんのか、と言う事だ。
「鈍いなお前は」
悪かったな。
判るように言ってくれれば良いだけだと思うが。
「余の警護だな?」
「その通り。さすがは殿下。話が早くて助かるぜ」
ちぇっ。
「だからと言って、そんな簡単に城に入れる訳無いだろ」
俺は反論を試みる。
「相手は化け物連れ込んでるんだぞ?別に改造人間が入ったって良かろう」
そう言う問題なのか。
「構わぬ。余が認めれば文句は出まい」
本気か。
「じゃあ準備が出来たらレオに土産も持たせる。ふつつか者だが宜しく頼むよ」
「ほっほっほっ。あい判った」
0
お気に入りに追加
33
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
王が気づいたのはあれから十年後
基本二度寝
恋愛
王太子は妃の肩を抱き、反対の手には息子の手を握る。
妃はまだ小さい娘を抱えて、夫に寄り添っていた。
仲睦まじいその王族家族の姿は、国民にも評判がよかった。
側室を取ることもなく、子に恵まれた王家。
王太子は妃を優しく見つめ、妃も王太子を愛しく見つめ返す。
王太子は今日、父から王の座を譲り受けた。
新たな国王の誕生だった。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
三度目の創世 〜樹木生誕〜
湖霧どどめ
キャラ文芸
国単位で起こる超常現象『革命』。全てを無に帰し、新たなる文明を作り直す為の…神による手段。
日本で『革命』が起こり暫く。『新』日本は、『旧』日本が遺した僅かな手掛かりを元に再生を開始していた。
ある者は取り戻す為。ある者は生かす為。ある者は進む為。
--そして三度目の創世を望む者が現れる。
近未来日本をベースにしたちょっとしたバトルファンタジー。以前某投稿サイトで投稿していましたが、こちらにて加筆修正込みで再スタートです。
お気に入り登録してくださった方ありがとうございます!
無事完結いたしました。本当に、ありがとうございます。
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる