見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

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五八四

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 これは、戦闘になるな。
俺は覚悟を迫られた。
この雰囲気では、どう考えても『ではまた後日』とはならないだろう。

 安い言い方をすれば、喧嘩を売られているのだ。
だが、こちらにはそれを買う理由が無い。
勘違いとかそう言う次元の話では無さそうなのが、更に事態をややこしくしている。

 吹き込まれているな。

 俺の印象はそうだ。
ただし、ただ吹き込まれていると言う訳でも無さそうだ。
黒幕まで判らないと、どうにもなりそうも無い。

「……ソル殿下。聞き捨てなりませんな。それはどう言う意味ですかな?」

 ガイが凄んだ。
皇族に凄むのか。
普通では無い。
明らかに、端っからソル皇子を敵視している。
つまり、殺しても良いと言う意思の表れだ。

 俺はソル皇子の前に体を割り込ませる。

「……殿下に対して許される態度では無いな。どう言うつもりだ」

 ガイが意外そうな顔をした。

「世界征服を企んでいるくせに、第二皇子に媚びへつらうとはな……お前こそ何を考えているのだ」

 わざわざ第二皇子と言ったな。
こいつら、このままではラチがあかない。

「世界征服だ。知っているんだろ?」

 俺は腹をくくった。
優柔不断で迷いながら揉め事に突っ込んで行くのが俺の悪い部分なんだそうだ。
これはオオムカデンダルの言葉だが、自分でも確かになと思ってしまったのだから認めるしかない。

 ここは仮にでも自分の立ち位置と、意思をはっきりさせるべきだ。
でなければ、事態は先に進まない。
コイツらも、黒幕も、どうせ色々と企んでいるのだろうしな。

 ソル皇子を後ろにかばいながら俺は構えた。

「どうせそのつもりで来たのだろう?相手になってやるぞ。遠慮など要らん」

 四人の表情が一瞬驚いたように見えた。
やはり想定外だったようだな。

「……俺たちとやる覚悟があるんだな?相手が四人だと言う事も忘れている訳では無さそうだが」

「……貴様たちで俺の相手が務まるかな?」

「舐めやがって……!」

 ガイが怒りをあらわにする。

「お前こそ我々を読み違えると死ぬぞ」

 バルバが後ろから声を掛けた。

「ふ。モンクの拳でこの俺の体が砕けるか……試してみろ!」

 俺は間髪入れずに目の前のガイを蹴り上げた。
腹に爪先から思い切り蹴り込む。

「ぐっ!」

 ガイの体がくの字に折れ曲がる。
隙だらけなんだよ、お前は。

「ガイ!」

 ディーレがガイの名を叫ぶ。

「貴様……!」

 バルバがルガを押し退けて前へと出て来た。

「おしゃべりが長いな。余裕見せすぎだ」

「おのれ!」

 俺は振り下ろされるバルバの手刀を、難なく片手で振り払う。

「しゅっ!」

 短い息吹と共に下から爪先が迫ってくる。
手刀は囮か。

 がっ!

 バルバの蹴り上げた爪先が、俺のみぞおちへと突き刺さる。

「ふふふ」

 バルバが不敵に笑った。
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