見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

文字の大きさ
上 下
582 / 826

五八二

しおりを挟む
「そう警戒するなよ」

 ガイが歯を見せて笑った。
言われてみれば、そうれもそうなのだが。

 だが、やはり気になる。
何故ここへ現れたのか。
このタイミングも何だか嫌な感じがした。

 完全に俺の勘でしか無いが。

「お主たちは?」

 ソル皇子がガイに尋ねた。

「我々はユピテル皇太子の雇われ冒険者ですよ」

 ガイが笑顔で答える。
ユピテル皇太子の?
と言う事は……

「……兄上の。例のネオジョルト討伐軍の者か」

 ソル皇子が無表情で四人を見比べた。

「ご存知でしたか。おっしゃる通りです」

 コイツらが。
やはり悪い予感は的中したか。

 ソル皇子の話では、ユピテル皇太子が俺たちの討伐の為に軍を結成したと言う事だった。
そこに正体の判らない魔導士風が三人、そしてハイパークラスの冒険者が四人と言っていた。
それが中核なのだと。

 それがコイツらだったとは。

 将軍たちすら押し退けて、軍の中核に推されるなど、普通なら絶対に考えられない。
その為かどうかは判らないが、コイツらは短期間でブラックナイトに昇格されたと聞く。
単に便宜上そう計らわれたのか、それとも。

 俺は警戒した。
彼ら自体は悪い人間では無かった。
それは一緒に戦った俺が良く判る。

 だが、オオムカデンダルの事も知っている筈なのに、俺たちの討伐軍に加わっている。
これはいったい何を企んでいるのか。

 操られているのか?
いや、そんな単純な理由で四人も操られるものか。
何か見返りがあるのか。

 考え出すとキリが無い。
どんな理由も有り得そうで、そのどれもが馬鹿馬鹿しくも感じる。

「ずいぶんと出世したようだな?」

 ガイが続ける。
他の三人はそれを黙って見守った。
ソル皇子も、俺と四人のやり取りを興味深げに見守った。

「それは……お互い様なんじゃないのか?」

 俺もガイに返した。

「ふふふ。知っていたのか。ま、当然なのかな」

 ガイが含み笑いをする。

「知っているなら話は早いな。俺たちはネオジョルト討伐軍の指揮も任されている」

 つまり、将軍と同格だと言いたいのか。

「お前は秘密結社の幹部……の手下。俺たちは帝国軍の指揮官だ」

 だから何だ。

「ホンのちょっぴり差が付いちまったな」

 ガイが笑う。
他の三人も合わせて笑った。

「もともと俺はミラーナイト。アンタたちはハイパーナイトだ。出会った時から差は付いていただろ」

 俺は木訥と答えた。

「おっと。今はブラックナイトだ」

 ガイが首から下げたプレートを見せる。

「そうだったな」

 俺は認めて訂正した。

「どんな仲かは知らぬが少し不躾じゃの。こやつは余の知己じゃ。あまり礼を失する事は許さぬぞ」

 ソル皇子がガイに言った。
物腰の柔らかいソル皇子にしては珍しく、強い威圧感を感じる。

「これは失礼致しました……まさかソル皇子まで抱き込んでいるとは知らなかったもので」

 コイツ。
俺は、彼らに対する自分のイメージが、かなり現実と解離している事に気が付いた。
しおりを挟む
感想 238

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

月夜の猫屋

来条恵夢
ファンタジー
「あの世」と「この世」の仲介人たちの生と死の狭間での話。 「あるときは怪しい喫茶店 またあるときは不気味な雑貨屋 またまたあるときは謎の何でも屋しかしてその実態は――」 「その名も虚しい、幽霊たちの迷子センター」 「決め台詞を! おまけに、虚しいって何、虚しいって!」

あなたの冒険者資格は失効しました〜最強パーティが最下級から成り上がるお話

此寺 美津己
ファンタジー
祖国が田舎だってわかってた。 電車もねえ、駅もねえ、騎士さま馬でぐーるぐる。 信号ねえ、あるわけねえ、おらの国には電気がねえ。 そうだ。西へ行こう。 西域の大国、別名冒険者の国ランゴバルドへ、ぼくらはやってきた。迷宮内で知り合った仲間は強者ぞろい。 ここで、ぼくらは名をあげる! ランゴバルドを皮切りに世界中を冒険してまわるんだ。 と、思ってた時期がぼくにもありました…

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

王が気づいたのはあれから十年後

基本二度寝
恋愛
王太子は妃の肩を抱き、反対の手には息子の手を握る。 妃はまだ小さい娘を抱えて、夫に寄り添っていた。 仲睦まじいその王族家族の姿は、国民にも評判がよかった。 側室を取ることもなく、子に恵まれた王家。 王太子は妃を優しく見つめ、妃も王太子を愛しく見つめ返す。 王太子は今日、父から王の座を譲り受けた。 新たな国王の誕生だった。

攫われた聖女~魔族って、本当に悪なの?~

月輪林檎
ファンタジー
 人々を恐怖に陥れる存在や魔族を束ねる王と呼ばれる魔王。そんな魔王に対抗できる力を持つ者を勇者と言う。  そんな勇者を支える存在の一人として、聖女と呼ばれる者がいた。聖女は、邪な存在を浄化するという特性を持ち、勇者と共に魔王を打ち破ったとさえ言われている。  だが、代が変わっていく毎に、段々と聖女の技が魔族に効きにくくなっていた…… 今代の聖女となったクララは、勇者パーティーとして旅をしていたが、ある日、勇者にパーティーから出て行けと言われてしまう。 勇者達と別れて、街を歩いていると、突然話しかけられ眠らされてしまう。眼を覚ました時には、目の前に敵である魔族の姿が…… 人々の敵である魔族。その魔族は本当に悪なのか。クララは、魔族と暮らしていく中でその事について考えていく。

処理中です...