見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

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五八二

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「そう警戒するなよ」

 ガイが歯を見せて笑った。
言われてみれば、そうれもそうなのだが。

 だが、やはり気になる。
何故ここへ現れたのか。
このタイミングも何だか嫌な感じがした。

 完全に俺の勘でしか無いが。

「お主たちは?」

 ソル皇子がガイに尋ねた。

「我々はユピテル皇太子の雇われ冒険者ですよ」

 ガイが笑顔で答える。
ユピテル皇太子の?
と言う事は……

「……兄上の。例のネオジョルト討伐軍の者か」

 ソル皇子が無表情で四人を見比べた。

「ご存知でしたか。おっしゃる通りです」

 コイツらが。
やはり悪い予感は的中したか。

 ソル皇子の話では、ユピテル皇太子が俺たちの討伐の為に軍を結成したと言う事だった。
そこに正体の判らない魔導士風が三人、そしてハイパークラスの冒険者が四人と言っていた。
それが中核なのだと。

 それがコイツらだったとは。

 将軍たちすら押し退けて、軍の中核に推されるなど、普通なら絶対に考えられない。
その為かどうかは判らないが、コイツらは短期間でブラックナイトに昇格されたと聞く。
単に便宜上そう計らわれたのか、それとも。

 俺は警戒した。
彼ら自体は悪い人間では無かった。
それは一緒に戦った俺が良く判る。

 だが、オオムカデンダルの事も知っている筈なのに、俺たちの討伐軍に加わっている。
これはいったい何を企んでいるのか。

 操られているのか?
いや、そんな単純な理由で四人も操られるものか。
何か見返りがあるのか。

 考え出すとキリが無い。
どんな理由も有り得そうで、そのどれもが馬鹿馬鹿しくも感じる。

「ずいぶんと出世したようだな?」

 ガイが続ける。
他の三人はそれを黙って見守った。
ソル皇子も、俺と四人のやり取りを興味深げに見守った。

「それは……お互い様なんじゃないのか?」

 俺もガイに返した。

「ふふふ。知っていたのか。ま、当然なのかな」

 ガイが含み笑いをする。

「知っているなら話は早いな。俺たちはネオジョルト討伐軍の指揮も任されている」

 つまり、将軍と同格だと言いたいのか。

「お前は秘密結社の幹部……の手下。俺たちは帝国軍の指揮官だ」

 だから何だ。

「ホンのちょっぴり差が付いちまったな」

 ガイが笑う。
他の三人も合わせて笑った。

「もともと俺はミラーナイト。アンタたちはハイパーナイトだ。出会った時から差は付いていただろ」

 俺は木訥と答えた。

「おっと。今はブラックナイトだ」

 ガイが首から下げたプレートを見せる。

「そうだったな」

 俺は認めて訂正した。

「どんな仲かは知らぬが少し不躾じゃの。こやつは余の知己じゃ。あまり礼を失する事は許さぬぞ」

 ソル皇子がガイに言った。
物腰の柔らかいソル皇子にしては珍しく、強い威圧感を感じる。

「これは失礼致しました……まさかソル皇子まで抱き込んでいるとは知らなかったもので」

 コイツ。
俺は、彼らに対する自分のイメージが、かなり現実と解離している事に気が付いた。
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