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五七九
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「名前はあったのかい?」
オオムカデンダルがふと尋ねた。
「ルナと言う。レナと言う妹と双子じゃ」
つまり、レナ姫と言うのが城には居る訳か。
「そのレナ姫を姫に立てて、ルナは殺してしまおうとした訳か」
「……そう言う事になるな」
「惨い事を考えるな」
オオムカデンダルの言葉にソル皇子は黙った。
「それでも人智を越えた邪神の力には抗えぬ。皇族と言えども抗えぬ以上は、国と血筋を絶やす事だけは避けなければならぬ」
ソル皇子は無表情に努めたが、悔しさが滲んでいた。
きっとソル皇子の悔しさは本物だったに違いない。
しかし部下を含めた国民全てに、それを悟られてはならなかったのだ。
皇族と言うのも、俺たちが考えるほど簡単な仕事では無いらしい。
「兄上は諦めておらぬ。お主らを壊滅させ、必ずルナを殺すつもりじゃ」
そこまで執念を燃やす理由は何なのか。
「決まっておろう。兄上は兄上で、国と我らが血筋を守る事に必死だからじゃ」
それだけなのか。
それだけの為に?
「……そう言うな。我らにとってはそれが全てじゃ。馬鹿馬鹿しく映るかも知れぬがな。その為の皇族なのじゃ」
国を守るだけでは駄目で、繋げていかなければならない、そう言う事なのか。
一冒険者の俺には、考えも及ばない話だな。
「ふふ、どうだ。会ってみるかい?」
オオムカデンダルが唐突に言った。
「会えるのかえ!?」
ソル皇子が身を乗り出す。
蜻蛉洲たちは反応しなかった。
ソル皇子がここへ来た時点で、こうなる事は判っていたのかもしれない。
「まあな。ちゃんと生きていると言うのを、殿下も見たいだろ?」
オオムカデンダルはそう言うと、管理人に『頼む』と伝えた。
ややあって、広間の扉が開かれた。
先程のように、大きめの台がゆっくりと入ってきた。
上には何やらドーム状の卵のような物が乗っている。
オオムカデンダルはやおら立ち上がると、ソル皇子を招いた。
「こっちへ来いよ。見てみな」
オオムカデンダルに招かれて、ソル皇子は台へと近付いた。
「これは……」
俺も僭越なら横から覗く。
中には赤子が入っている。
あの時の赤子に違いなかった。
「ルナ……」
ソル皇子は目を細める。
「無事であったか。済まぬ……鬼のような兄を許してたもれ……」
ソル皇子はそう呟いた。
その目にうっすらと涙がこぼれる。
駄目だ。
俺はこう言うのに弱い。
どうしても、ミーアを思い出してしまう。
「この悪魔の証、まだ謎が多いが俺たちが解明してみせる」
ソル皇子は驚いたように、オオムカデンダルの顔を見た。
「誠か!?何とかなるのかえ!」
「ふふ、何とかして見せよう。と言っても、このアザその物を消す気は無いが」
「どう言う事じゃ?」
「邪神がうるさいから赤子を殺さなければならないと言うのならばやる事は単純だ。邪神の方を殺すのさ」
オオムカデンダルがそううそぶいた。
オオムカデンダルがふと尋ねた。
「ルナと言う。レナと言う妹と双子じゃ」
つまり、レナ姫と言うのが城には居る訳か。
「そのレナ姫を姫に立てて、ルナは殺してしまおうとした訳か」
「……そう言う事になるな」
「惨い事を考えるな」
オオムカデンダルの言葉にソル皇子は黙った。
「それでも人智を越えた邪神の力には抗えぬ。皇族と言えども抗えぬ以上は、国と血筋を絶やす事だけは避けなければならぬ」
ソル皇子は無表情に努めたが、悔しさが滲んでいた。
きっとソル皇子の悔しさは本物だったに違いない。
しかし部下を含めた国民全てに、それを悟られてはならなかったのだ。
皇族と言うのも、俺たちが考えるほど簡単な仕事では無いらしい。
「兄上は諦めておらぬ。お主らを壊滅させ、必ずルナを殺すつもりじゃ」
そこまで執念を燃やす理由は何なのか。
「決まっておろう。兄上は兄上で、国と我らが血筋を守る事に必死だからじゃ」
それだけなのか。
それだけの為に?
「……そう言うな。我らにとってはそれが全てじゃ。馬鹿馬鹿しく映るかも知れぬがな。その為の皇族なのじゃ」
国を守るだけでは駄目で、繋げていかなければならない、そう言う事なのか。
一冒険者の俺には、考えも及ばない話だな。
「ふふ、どうだ。会ってみるかい?」
オオムカデンダルが唐突に言った。
「会えるのかえ!?」
ソル皇子が身を乗り出す。
蜻蛉洲たちは反応しなかった。
ソル皇子がここへ来た時点で、こうなる事は判っていたのかもしれない。
「まあな。ちゃんと生きていると言うのを、殿下も見たいだろ?」
オオムカデンダルはそう言うと、管理人に『頼む』と伝えた。
ややあって、広間の扉が開かれた。
先程のように、大きめの台がゆっくりと入ってきた。
上には何やらドーム状の卵のような物が乗っている。
オオムカデンダルはやおら立ち上がると、ソル皇子を招いた。
「こっちへ来いよ。見てみな」
オオムカデンダルに招かれて、ソル皇子は台へと近付いた。
「これは……」
俺も僭越なら横から覗く。
中には赤子が入っている。
あの時の赤子に違いなかった。
「ルナ……」
ソル皇子は目を細める。
「無事であったか。済まぬ……鬼のような兄を許してたもれ……」
ソル皇子はそう呟いた。
その目にうっすらと涙がこぼれる。
駄目だ。
俺はこう言うのに弱い。
どうしても、ミーアを思い出してしまう。
「この悪魔の証、まだ謎が多いが俺たちが解明してみせる」
ソル皇子は驚いたように、オオムカデンダルの顔を見た。
「誠か!?何とかなるのかえ!」
「ふふ、何とかして見せよう。と言っても、このアザその物を消す気は無いが」
「どう言う事じゃ?」
「邪神がうるさいから赤子を殺さなければならないと言うのならばやる事は単純だ。邪神の方を殺すのさ」
オオムカデンダルがそううそぶいた。
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