見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

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五七七

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「父上はともかく、兄上はモンスター共と手を組む事に何の躊躇も無い。余もこればかりは不思議でならぬ」

 ソル皇子はケーキの上に乗った大きな苺を、なるべく落とさないように周囲から食べ進めていく。
その姿に何となく親近感を感じる。

「殿下にもその理由は判らないのか。聞いてみたりしないのか?」

 オオムカデンダルが尋ねた。

「勿論、余も尋ねてはみた。だが、お主たちに勝つにはこれしかないと言うばかりでの。その事自体はそうだろうとも思うが、臣民を預かる皇族がその認識で良いとは思わん。ま、そうは言うても、お主らと仲良く茶に興じておる余が言えた義理では無いのかもしれぬがの」

 ソル皇子はそう言って自嘲気味に笑った。

「ただ、モンスター共からは明らかな悪意を余は感じる。手を組んで良い相手とは到底思えぬ。だがの、お主らにはそれほど悪意は感じないのじゃ。何故かの」

 ソル皇子はそう言って、いよいよ残しておいた苺へと手を掛けた。

「ふふ。それは買い被りすぎだ。ただ何故悪意を感じないかと言えば、俺たちは世界を征服するつもりはあっても、帝国が欲しい訳でも、憎い訳でも無いからな。その辺なんじゃないか?」

「なるほどの」

 ソル皇子は返事もそこそこに、苺にフォークを突き立てる。
そしてそれを半分だけ噛った。

「む!これは……また見事な苺よ。こんなに大きくて甘い苺は、皇子の身であっても食べた事が無い」

 ソル皇子はそう言うと、あらためてオオムカデンダルを真っ直ぐに見据えた。

「これよ。皇族の贅沢など及びもつかないこのクオリティーの高さ。茶請けに出てくるデザートの、そのまた上にあしらわれたたった一粒の苺を取ってみても、到底帝国など足下にも及んでおらぬ」

 オオムカデンダルはソル皇子の言葉を微笑みながら、それでいて真面目な眼差しで見ていた。

「真の実力は派手さだけでは判らぬ物。どんなに力自慢であろうとも知識が無ければ片手落ち。知識をひけらかしても同時に知恵も備わっておらねばこれも同様。両方あっても下品であっては話にもならぬ……判るかの、オオムカデンダルよ」

「ああ、判るとも。俺も同じ考えだ」

 オオムカデンダルが笑ってソル皇子に同意した。

「余はの。兄上には帝国は任せておけぬと思うておる」

「!?」

 俺は、いや、俺だけで無く、カルタスやオレコも、ソル皇子の言葉に驚いた。
如何にソル皇子と言えども、絶対に言ってはならない言葉だ。
ましてや、それを他人に聞かせるなど考えられない。

 これは罠なのか。
俺は急にソル皇子を信用できなくなってきた。
迂闊に同意などするべきでは無い。

「余は幼き頃より兄上を慕っておった。尊敬もしておる。だがの、ここ最近の兄上は余の知っている兄上とは違う。魔物共と手を組むなど、どんな理由があっても許されるべきでは無い」

 ソル皇子は力強く言いきった。
その目には、強い決意が表れていた。
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