見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

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五六七

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 ここに居てじっとしていても、落ち着かない。
俺は提案を受け入れて街へ行く事にした。

 俺はアジトから出て、徒歩で山を降りた。
相変わらず不気味な山だ。
爽やかな風と暖かい陽射しだけが優しく、そこかしこからは不気味なモンスターの雄叫びと気配が漏れ伝わってくる。

 途中で出くわしたオウルベアを軽くあしらうと、俺は散歩気分で麓まで辿り着いた。
そのまま西の繁華街まで早歩きで向かう。
早歩きと言っても、常人とは比べ物にならない速さだ。
たいした時間も掛けずに、俺は西の繁華街に着いた。

「……結構変わっているな」

 まず道が違っている。
以前の石畳よりも綺麗に揃っている。
まるで角切りにした石を綺麗に並べたような、そんな作りだ。
でこぼこが無くなり、これなら歩きやすく荷車や馬車も揺れない。
良く見れば、並んでいる建物も新しくなっている。

 建て替える必要の無さそうな物まで新しくなっている部分は、きっと何か蜻蛉洲の企みがあるのだろう。
俺は勝手にそう想像した。

 バーデンが破壊し尽くした辺りも、全て綺麗に復興している。
そうだろうなと思ってはいたが、あまりの完璧具合に思わずため息が漏れた。

 この辺りは住所的には西の繁華街からは外れているが、ここまで面倒を見たのか。
心なしか道行く住人たちも以前より活気があるように見える。

「この辺りも西の繁華街に加わったのさ。正確にはネオジョルトの傘下に、だがな」

 俺は振り返った。
そこには銀猫が立っていた。
気配に気付かなかった。
前よりも身のこなしが格段に向上しているのか。
俺はヴァンパイア細胞の事を思い出した。
アレのお陰なのかもしれないな。

「ふーん。死んだって聞いてたけど、むしろ以前よりも元気そうだな」

 銀猫が俺を、頭のてっぺんから爪先まで値踏みするように見た。

「自分でも驚いている」

 これは本心だ。

「ところで、ずいぶんと変わったな」

「本当だな。たった一月で街を丸ごと作り替えるなんて、帝国でも出来ないぞ」

 銀猫が言う。
その通りだ。
こんな真似が出来るのは、神でも無ければネオジョルトだけだ。

 そうだ。
彼らなら神に挑むだろう。
しかも、勝つつもりで。

「ところで……」

 銀猫が何かを言いかけた時。

「てめえ!ふざけんじゃねえ!俺は客だぞ!」

 何やら怒声があがった。
俺たちは声の方を振り返る。

「お客さん困ります。ちゃんとお代は払っていただかないと……」

「るせえっ!こんな半端なモン寄越しやがって!これで金なんか払えるか!」

 見たところ三人組の酔客が、店先で店主と揉めている。
こんな昼真っから酩酊状態とは、羨ましい限りだ。
俺はこの体になってから、大樽で何個飲んでも酔わないと言うのに。

 俺は店主を助けようと足を踏み出した。

「まあ、待て」

 それを銀猫が止めた。
何故だ。
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