見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

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五六二

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「現在ネオジョルトの計画は順調に進んでいる。ジョルターも順調に普及している。蜻蛉洲、数字は?」

 オオムカデンダルが蜻蛉洲に結果を求めた。

「西の繁華街だけで言えば、普及率は四割三分と言った所だ。一ヶ月でこの成果は僕の予測よりも早い」

 蜻蛉洲が淡々と述べる。
いや、ちょっと待ってくれ。
一ヶ月で?
始めたのは昨日の今日では無いか。
どう言う事だ。

「おめでたいな君は。甦生に一ヶ月掛かっているんだよ」

 一ヶ月も?
じゃあ俺は一ヶ月寝ていたのか。
いや、死んでいたのか。
どっちでも良いが、そんなに長期間放置されていたとは。
我ながら、よく無事だったな。

「普通は三日もあれば再生する計算だが、あまりにも損傷が酷かった。加えてフィエステリアームの毒を全身くまなく浴び続けたから、なかなか毒の影響が消えなかったのだ。それでも復活したんだからたいしたものだよ」

 蜻蛉洲が言った。
それにしてもあんな皇城の目と鼻の前で、一ヶ月も放置されていたとは。
無防備な間に殺されてもおかしく無いだろうに。

「それは無理だ。僕がそんな弱点を作る訳無かろう。ポリプは破壊できない。絶対にだ。それが例え僕でもね」

 蜻蛉洲は得意気に笑みを浮かべた。
蜻蛉洲にも破壊できない?
と言う事は、オオムカデンダルにも破壊できないのか。

「無理だね。だから倒せないと言ったのだ」

 蜻蛉洲がオオムカデンダルを見て鼻で笑った。
オオムカデンダルが目を背ける。
なんだ。
おい、まさか。

「どうだ?自ら確認して気が済んだろう?」

 蜻蛉洲が半笑いで言った。

「……ち。頑丈すぎるだろう。どうやって破壊するんだあれを」

「さあね。計算上は核の直撃にも耐えるからな。中身まで保つかは検証できんが」

 ……コイツ、さては試したな。
危ない事するんじゃねえよ。
もし壊せていたら俺は復活に失敗していた訳か。
今更ながらに背筋が冷たくなる。

「他にも各種技能訓練は順調。失業率は一パーセント以下。今や西の繁華街の経済力は帝国の中で三位だ」

 蜻蛉洲がそこまで発表して全員を見渡した。
スラムを含む、貧困層の巣窟と言われた西の繁華街が経済力三位だと。

「当然だ。何も珍しくない。この世界の人間は経済のド素人だ。後は時間が経てば自動的に一位になる。そして、そのまま二位以下をどんどんと引き離していくだけだ」

 ド素人だと。
帝国にはたくさんの商人たちが居る。
商人ギルドもあるし、貿易だって盛んだ。
それでも尚、ド素人と呼ぶのか。

「金など単なる手段の確保だぞ。金稼ぎそのものが目的じゃ無い。チンタラ稼いでたら、世界征服などいつまで経っても手が付けられん」

 オオムカデンダルが相変わらず椅子をクルクルと回転させながら言った。
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