見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

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五六一

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「なんだ、まだ気付かないのか。意外と鈍いなお前」

 オオムカデンダルが椅子の背もたれをギイギイ言わせながら、呆れたように言った。
気付かないも何も、俺は意識を失った。
いや、死んだと思ったんだが。

「君が改造人間になった時、色々説明をしたと思うんだが覚えていないようだな」

 蜻蛉洲が俺の顔を覗きこむ。

「君には複数の生物の能力を持たせている。サフィリナとキロネックスの力は意識的に使うだろうが、ベニクラゲの能力は自発的に使うような力では無いからな。無理も無いが」

 なんか聞いた事があるような気がする。

「透明化はサフィリナの能力だ。猛毒はキロネックス。そしてもう一つがベニクラゲの能力だ。覚えているか?百足にレオは倒せないと言った事を」

 思い出した。
勝つ負けるでは無く、『倒せない』と言っていた。
理由は不死身だからだと。

「思い出したか。ベニクラゲは寿命が来ると子供に戻って一から人生をやり直す。発見された最長寿の個体が五億歳と言うだけで、理論上は永遠に生き続ける。その能力をお前には持たせてある。もちろんそのままではない。より強化発展させた型でだ」

 より強化発展させた型。
その答えがこれなのか。

「そうだ。君は死んだ。生命活動停止を感知すると、ベニクラゲの遺伝子にスイッチが入る。君の体はポリプを形成し、その中で新たに生まれ変わると言う訳だ。死なない事には発動しないから臨床実験はしてないが、まあ上手くいって良かった」

 蜻蛉洲はそう言って笑った。
笑い事では無い。
つまり、ぶっつけ本番だったと言っているのだ。
だが、生き返った事は事実だから喜ばしいのか。
よく判らん。

「さすがは天才蜻蛉洲秀一と言う訳だ。ふふ、今回ばかりは脱帽だな」

 オオムカデンダルが蜻蛉洲を見る。

「やめたまえ。君に褒められても、皮肉にしか聞こえない」

「まあ、そう言うなって。本当に驚いているんだぜ」

 オオムカデンダルがそこまで言うからには相当凄い事なのだろう。
いや、生き返ったのだ。
凄いに決まっている。
死者の甦生は滅多に行われないし、滅多に成功もしない。
高額な寄付金が必要になるし、その術者も多くは無いからだ。
それに、甦生対象者には信仰心が求められる。
神の力にすがるからだ。
もちろん、無神論者は論外だ。
従って、冒険者のほとんどは何らかの神を信仰しているのが普通であった。

 それを信仰云々を無視して生き返らせるとは。
俺もさすがに今回ばかりは駄目かと思った。
彼らは本当に神のような力を持っているのだな。

「さて、めでたいのは結構だが……」

 オオムカデンダルがあらたまった。
なんだ。
俺は何か大事な事を忘れているような気がした。
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