見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

文字の大きさ
上 下
561 / 826

五六一

しおりを挟む
「なんだ、まだ気付かないのか。意外と鈍いなお前」

 オオムカデンダルが椅子の背もたれをギイギイ言わせながら、呆れたように言った。
気付かないも何も、俺は意識を失った。
いや、死んだと思ったんだが。

「君が改造人間になった時、色々説明をしたと思うんだが覚えていないようだな」

 蜻蛉洲が俺の顔を覗きこむ。

「君には複数の生物の能力を持たせている。サフィリナとキロネックスの力は意識的に使うだろうが、ベニクラゲの能力は自発的に使うような力では無いからな。無理も無いが」

 なんか聞いた事があるような気がする。

「透明化はサフィリナの能力だ。猛毒はキロネックス。そしてもう一つがベニクラゲの能力だ。覚えているか?百足にレオは倒せないと言った事を」

 思い出した。
勝つ負けるでは無く、『倒せない』と言っていた。
理由は不死身だからだと。

「思い出したか。ベニクラゲは寿命が来ると子供に戻って一から人生をやり直す。発見された最長寿の個体が五億歳と言うだけで、理論上は永遠に生き続ける。その能力をお前には持たせてある。もちろんそのままではない。より強化発展させた型でだ」

 より強化発展させた型。
その答えがこれなのか。

「そうだ。君は死んだ。生命活動停止を感知すると、ベニクラゲの遺伝子にスイッチが入る。君の体はポリプを形成し、その中で新たに生まれ変わると言う訳だ。死なない事には発動しないから臨床実験はしてないが、まあ上手くいって良かった」

 蜻蛉洲はそう言って笑った。
笑い事では無い。
つまり、ぶっつけ本番だったと言っているのだ。
だが、生き返った事は事実だから喜ばしいのか。
よく判らん。

「さすがは天才蜻蛉洲秀一と言う訳だ。ふふ、今回ばかりは脱帽だな」

 オオムカデンダルが蜻蛉洲を見る。

「やめたまえ。君に褒められても、皮肉にしか聞こえない」

「まあ、そう言うなって。本当に驚いているんだぜ」

 オオムカデンダルがそこまで言うからには相当凄い事なのだろう。
いや、生き返ったのだ。
凄いに決まっている。
死者の甦生は滅多に行われないし、滅多に成功もしない。
高額な寄付金が必要になるし、その術者も多くは無いからだ。
それに、甦生対象者には信仰心が求められる。
神の力にすがるからだ。
もちろん、無神論者は論外だ。
従って、冒険者のほとんどは何らかの神を信仰しているのが普通であった。

 それを信仰云々を無視して生き返らせるとは。
俺もさすがに今回ばかりは駄目かと思った。
彼らは本当に神のような力を持っているのだな。

「さて、めでたいのは結構だが……」

 オオムカデンダルがあらたまった。
なんだ。
俺は何か大事な事を忘れているような気がした。
しおりを挟む
感想 238

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

王が気づいたのはあれから十年後

基本二度寝
恋愛
王太子は妃の肩を抱き、反対の手には息子の手を握る。 妃はまだ小さい娘を抱えて、夫に寄り添っていた。 仲睦まじいその王族家族の姿は、国民にも評判がよかった。 側室を取ることもなく、子に恵まれた王家。 王太子は妃を優しく見つめ、妃も王太子を愛しく見つめ返す。 王太子は今日、父から王の座を譲り受けた。 新たな国王の誕生だった。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

娼館で元夫と再会しました

無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。 しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。 連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。 「シーク様…」 どうして貴方がここに? 元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!

秘密結社ニヨル世界征服活動

uji-na
ファンタジー
【カムロキ】は偉大なる神州日本の復古を謳い、やがて全世界を手中に収めんと企む秘密組織である。 世界征服計画の第一段階として手始めに議事堂の占領と議員の洗脳を行うべく、潜伏中の地下から地表の市街地へと向かった秘密結社カムロキ。ところが、その先に待っていたものは奇妙な生物達が溢れる不思議な森だった。見知らぬ森に奇怪な生物の群れ、本来の目的地とは似ても似つかぬ場所。世界征服計画に早くも暗雲が立ち込める中、まずは情報を集めるためカムロキは調査に乗り出すのであった。

もう死んでしまった私へ

ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。 幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか? 今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!! ゆるゆる設定です。

処理中です...