見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

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五五七

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 オオムカデンダルが半日と言ったのはそこだろう。
二日も抑え込むなど現実的では無い。
俺の脳裏に絶望感がよぎる。

「フィエステリアーム。そこまでだ。もう止めろ」

 オオムカデンダルがフィエステリアームを制する。

「……まだ死なないけど良いのかい?今止めたら元通りに復活するよ?……もっと強くなってるかも」

 そうなのだ。
元通りに復活する。
そして、もしかしたらフィエステリアームの毒さえも自分の物にしている可能性もある。
そうなれば、いよいよ手が付けられない。

「……その前にお前の毒で国が滅びる」

 オオムカデンダルが言いたくなさそうに言った。
確かに他に手が無かった。
フィエステリアームの毒に頼ったのは理解できる。
それで殺れるだろうと言う計算もあったのだろう。

 だが、プニーフタールはその上を行っていた。
殺しきれない。

 俺はプニーフタールを見た。
体の表面がブクブクと小さな泡が発泡している。
毒で体が腐っているのだ。
そして、その下から新しい細胞が生まれている。
新陳代謝と言うらしい。
目で見て判るほどの早さだ。
そのペースが両者間で拮抗していた。

 邪神さえ壊死させる、フィエステリアームの毒を評価するべきか。
それとも『天才 蜻蛉洲秀一』が作った最強の毒にさえ抵抗する、神の力に畏怖するべきか。

 だが、どちらにせよもう時間は無い。

「……止めるよ。良いんだね?」

「……ああ。ここまで邪神に抵抗力があるのは、単純に誤算だ」

 オオムカデンダルは悔しさを滲ませた。

「……蜻蛉洲の頭脳に抗える存在とは。神様か……初めて会ったが強敵だな」

 オオムカデンダルの言葉を受けて、フィエステリアームは毒を停止させようとした。

「ま……待て……!」

 俺はとっさにフィエステリアームを呼び止めた。

「……なに?」

 せっかくここまで追い詰めたのに、みすみす手を緩めるなんて。

「……お、俺の……毒を」

 俺はおぼつかない足取りでフィエステリアームに近付いた。

「君の毒を?」

 もうすぐ毒の範囲に入る。
だが、そんな場合では無い。

「……俺の毒を……足す……」

「君、ここへ入ってくる気?」

「……そう……だ」

 オオムカデンダルが黙って俺とフィエステリアームのやり取りを見ている。

 蜻蛉洲は俺とフィエステリアームの毒は別物だと言った。
だったら同時に喰らわせれば、プニーフタールは二種類の毒に抵抗しなくてはならない筈だ。
今でも毒と再生能力は拮抗している。
俺の毒を喰らわせれば、きっと押しきれる筈だ。

 もちろん、確証など無い。

「……良い案だけど、死んじゃうよ?君」

 それは……仕方が無いとは言えない。
俺は彼らほど賢くない。
だから他に良い案も思い付かない。
死にたいとは一ミリも思っていないが、このままたくさんの人が死ぬのを黙って見てはいられない。

 俺は冒険者だ。
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