見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

文字の大きさ
上 下
550 / 826

五五〇

しおりを挟む
「食事用?食らうのか?」

 サルバスは驚いた様子でウロコフネタマイトを見た。

「ああ見えて令子さんは大食漢ですからね。あ、いや、漢は違うな」

 蜻蛉洲はそんな事を良いながらモニター越しにウロコフネタマイトを凝視する。

 じゅうっ

 焼けるような音がした。
プニーフタールから白煙が立ち上る。

 ぎゅばっ

 ウロコフネタマイトの胸から腹にかけて装甲が開くと、中から何やら露出した。
一見、花のように見える。
その花弁が突き出ると、まさしく花のように開いた。
中央から雄しべと雌しべのような突起物が伸びている。

 だが、それは見た目だけだ。
それはウネウネとうごめきながら、伸びてプニーフタールを絡めとる。
正直グロテスクだ。

 その間も、その花のような器官と前面の装甲の隙間から、ジワジワと消化液が滲み出てくる。それがプニーフタールに落ちると白煙が立ち上るのだ。

「……溶けておるのか」

 サルバスが言う。

「……」

 蜻蛉洲はそれには答えず、険しい顔をしたままモニターを凝視している。

「おい、よそ見をするな!」

 ライエルが叫んだ。
オオムカデンダルの背後から、プニーフタールの舌が飛び掛かった。

 ぱしっ

 オオムカデンダルは振り向きもせず、腕だけ伸ばして舌を捕まえる。

「心配してくれてありがとよ」

 オオムカデンダルはそう言うと、それを今度は蜻蛉洲に投げた。
蜻蛉洲もそれを右手でキャッチする。

「欲しいんだろ。サンプル」

「勿論だ」

 蜻蛉洲は無表情のまま、それをさっさと金属製の筒に押し込んだ。
そして、何事も無かったかのように再びモニターを凝視する。

 珍しいな。
普段の蜻蛉洲なら大喜びする筈なんだが。

「……これは、効いていないな」

 蜻蛉洲が呟いた。

「効いていない?」

 サルバスが眉をひそめる。

「消化液が消化するそばから、細胞が再生している。再生スピードの方が早い」

 つまり、溶けてはいるが超回復していると言う事か。
結果として効いていないと。

 超回復とか超再生とか、もう慣れてきたな。
俺は特に驚かなかった。
斬った部分は再生していたし、斬られた部分はそのまま活動している。
溶解は増えないだけマシと言うだけだ。

 ヴァンパイアもニーズヘッグも、超再生していた。
このレベルのモンスターで持っている能力なら、邪神の一部なら当然持っている能力だろう。

 問題は、これでどうやっても倒せないと言う事が判明した事だ。
蜻蛉洲は腕組みをしてモニターを見つめている。
何か対策を考えているのか。

「……無駄だと思うが一応武器を試しておこう。ひょっとして、と言う事もあるかもしれないからな」

 蜻蛉洲は立ち上がると用意した武器を手に取った。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

生贄にされた先は、エロエロ神世界

雑煮
恋愛
村の習慣で50年に一度の生贄にされた少女。だが、少女を待っていたのはしではなくどエロい使命だった。

♡蜜壺に指を滑り込ませて蜜をクチュクチュ♡

x頭金x
大衆娯楽
♡ちょっとHなショートショート♡年末まで毎日5本投稿中!!

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

【完結】お父様に愛されなかった私を叔父様が連れ出してくれました。~お母様からお父様への最後のラブレター~

山葵
恋愛
「エリミヤ。私の所に来るかい?」 母の弟であるバンス子爵の言葉に私は泣きながら頷いた。 愛人宅に住み屋敷に帰らない父。 生前母は、そんな父と結婚出来て幸せだったと言った。 私には母の言葉が理解出来なかった。

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

冤罪だと誰も信じてくれず追い詰められた僕、濡れ衣が明るみになったけど今更仲直りなんてできない

一本橋
恋愛
女子の体操着を盗んだという身に覚えのない罪を着せられ、僕は皆の信頼を失った。 クラスメイトからは日常的に罵倒を浴びせられ、向けられるのは蔑みの目。 さらに、信じていた初恋だった女友達でさえ僕を見限った。 両親からは拒絶され、姉からもいないものと扱われる日々。 ……だが、転機は訪れる。冤罪だった事が明かになったのだ。 それを機に、今まで僕を蔑ろに扱った人達から次々と謝罪の声が。 皆は僕と関係を戻したいみたいだけど、今更仲直りなんてできない。 ※小説家になろう、カクヨムと同時に投稿しています。

処理中です...