見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

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五三六

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「ふむ……」

 オオムカデンダルが独りごちた。
かわされたのに何を納得しているのか。
オオムカデンダルがまた構える。

 ざっ!

 再び踏み込む。
女は動かない。
どうした。

 ボッ

 オオムカデンダルがパンチを放つ。
だが女はそれを無視して前足を上げた。

「!?」

 そこへオオムカデンダルの下段蹴りが空を斬って通り過ぎた。

 パンチはフェイントだったのか。
だが、女はそのパンチには全く反応していなかった。

「……ふっふっふっふっ。はっはっはっはっ」

 オオムカデンダルが笑い出した。
今度は何だ。

「まさかとは思うが、俺の攻撃を読んでいるのか」

 攻撃を読む?
こんな素人丸出しの動きなのに、そんな事が出来る筈がない。

「どう言う理屈かは判らんが……実に興味深いな」

 オオムカデンダルが少し本気になった。

「レオ!聞こえるか!レオ!」

 耳元でセクトビートルが騒ぐ。
カルタスの声だ。
駄目だ、声が出ない。
カルタスたちはこちらの様子が判らなくて、困惑しているのだろう。

「早くしないと、死体が腐敗するからな。あんまり長くは付き合えんが」

 オオムカデンダルが四度突っ込む。
速い。
今までの比では無い。

「!?」

 女はまたかわした。

 そして俺はカラクリに気が付いた。
女は決して速いとは言えない身のこなしで、またしてもオオムカデンダルの攻撃をかわしている。

「……ふふ。なるほどね」

 そしてオオムカデンダルも同じ事を考えたようだ。

「信じられんがそれしか考えられないな。お前のそれ、予知なのか?」

 オオムカデンダルが女に尋ねた。

「……」

 女は答えない。
それはそうだろう。
わざわざ自分の手口を話すヤツはいない。

 俺も予知だと思っていた。
これは予めどう攻撃が来るのか知っている。
だからあんな素人丸出しの動きでも避けられるのだ。
ここへこの程度のスピードでパンチが来ると判っていれば、避けるのはそう難しくは無い。
後は度胸の問題だ。
判っていても、ビビっていたら避けられる物も避けられない。

 それから初動の早さ。
パンチが出る前から動きだしている。
それでいてフェイントには引っ掛からない。
オオムカデンダルはそれを怪しんだのだ。

「騙される所だったぜ。最初は超反応かと思ったんだがなぁ。ふふっ、危ない危ない」

 オオムカデンダルがそう言って笑った。
だがタネ明かしが済んでしまえば、もうオオムカデンダルには通用しまい。
これは勝負あったな。

 俺は緊張が解けた。
シートにグッタリと体を沈ませる。
後はどうやってこのニーズヘッグを持ち帰るのか。
さすがにアイアンシェルでも運ぶのは無理だ。

 輪切りにして運ぶのかな。
俺はそんな事を考えながら、モニターを眺めていた。
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