見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

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五〇九

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「怪人……オオムカデンダル……」

 バーデンが口の中でオオムカデンダルの名前を繰り返す。
恐らく、バーデンの人生の中でも会った事の無いタイプの男だ。

 オオムカデンダルがまた一歩、前に出ようと足を運ぶ。

 ざっ!

 それと同時にバーデンが動いた。
オオムカデンダルの行動の鼻先を、出鼻をくじく行動だ。

 がきいんっ!

 バーデンの剣がオオムカデンダルを捉えた。
今度こそ本当に捉えた。
オオムカデンダルの胸を、下から斜め上へと剣が通り過ぎる。

 バーデンはニヤリと笑う。
だが。

「折れないとはなかなか良い剣だな。その材質もなかなか興味深い」

 オオムカデンダルはまったく怯んでなどいなかった。

「な……馬鹿な!?」

 バーデンが動揺する。
斬れていない。
オオムカデンダルの体には、傷一つついていないのだ。
さすがにそれには俺も驚いた。
傷さえ付かないとは。

 藍眼鉱とは、俺たちの常識では普通の物質とは違う。
神から与えられたギフトのような存在だ。
聖剣は必ず藍眼鉱をベースに作られるし、それ以外の物においても特別な物には必ず藍眼鉱が用いられる。

 斬れないとは思っていたが、まさか傷も付けられないとは。

「以前戦ったが、ワイバーンの鱗より硬いぞ。この体はな」

 確かにワイバーンと戦っていたが、それより硬いなんて俺も知らなかったぞ。
それともただのブラフか。

「ワイバーンだと……!?まさか、皇族の守護神『聖なる小竜』の事か……!」

 さすがにバーデンも気付いたか。
龍族はモンスターの中でも特別な存在だ。
龍の眷族と言うだけで、その存在は別格扱いされる。

 龍にも色々居るが、中でも頂点とされるのが真龍だ。
一般的にはドラゴンと呼ばれている、誰もが知っている例のアレである。

 真龍は神と並ぶ存在だ。
真龍に勝てるのは同じ真龍か、神だけだと言われている。
それほどの存在なのだ。
ほとんどの人間は、生まれてから死ぬまで一度もお目に掛かれないレアなモンスターである。

 その龍の眷族たるワイバーンにはそこまでの力は無い。
それでも人間がどうにか出来る相手でも無い。

「ハッタリを……!」

「嘘じゃ無いぜ?でもまあ、確かに手を焼いた。それは事実だ……最後に勝ったのは俺だがな」

 オオムカデンダルの声が笑いを孕んだ。
やっぱり自慢してるな。
仮面の下でどんな顔をしているのか、見なくても判る。

「ならば、お前を倒せば俺はワイバーンよりも強いと証明できるな!」

 オオムカデンダルの言葉を信じたかどうかは判らない。
だが、この戦闘狂の勇者は、笑いを浮かべて三度オオムカデンダルへと向かって行った。

「剣は効かんぞ。どうする?」

 オオムカデンダルが嘲笑う。
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