505 / 826
五〇五
しおりを挟む
『二』
「く……っ!プ、プロテクションッ!」
苦し紛れか、計算ずくか。
バーデンはプロテクションを唱えた。
目に見えない壁が、バーデンと俺の間に発生する。
「うおっ!?」
俺はその見えない壁によって、引き剥がされるようにバーデンから遠ざけられる。
「くそっ……!」
俺は狼狽した。
プロテクションにこんな使い方があるとは。
いや、それよりも魔法職の呪文も、聖職者系の神聖魔法も、どちらも使えると言う事に驚く。
不得意な分野は無いのか。
「ふ……ふははは!危なかったな。まさかこのレベルの戦いで、首を絞めるなどと言う原始的な方法に出るとは」
バーデンは転がりながら距離を取ると、自らの首をさすりながら言った。
完全に警戒している。
もう、首を取る事は無理だろう。
『一』
もう時間が無かった。
出来る事は無い。
いや……まだだ!
出し惜しみをするなとオオムカデンダルは言った。
俺は『やるだけやろう』とオオムカデンダルに言ったのだ。
やらなければ、また嫌味を言われる。
「スクリューシェイブクロウッ!」
振り上げた右手の手首が高速回転する。
ギュルルルルルルルルルッ!
俺はなりふり構わず回転する指を、プロテクションに叩き付けた。
ドガアッ!
ギャリギャリギャリギャリギャリギャリギャリッ!
バーデンの顔が緊張でこわばる。
恐れているのだ。
あんな表情は初めて見る。
『零』
突然、全身の力が抜ける。
徐々にでは無い。
糸が切れた操り人形のように、本当に突然力が尽きた。
バキイインッ!
聞きなれない音を発てて、プロテクションが割れる音がした。
割れたか。
だが、俺にはもうまばたきする力も残っていなかった。
「く……くそっ……!」
俺はその場で膝をついた。
その体勢でさえ体を支えられないほどだった。
がくっ
ばたんっ!
俺はその場にうつ伏せに突っ伏した。
駄目だ。
もう何も出来ん。
この状況で、俺はさすがに諦めた。
オオムカデンダルに何と言われようと、指一本動かせないのでは出来る事は何もない。
「出し惜しみは……しなかったぜ。ザマミロ……」
それを呟くのが精一杯だった。
「レオ!レオ!返事をしろ!おい!」
カルタスの声が聞こえる。
駄目だ。
来るな。
作戦は失敗だ。
それを声に出す事さえ出来ない。
「ふ……ふふふ!はははは!脅かしやがって。だが確かに強敵には違いなかったな。それは認めよう」
バーデンが立ち上がって近付いて来た。
「だが、俺の方が強かった!これだから戦いは辞められない。その為に将軍職に就いたのだ!」
バーデンが俺を見下ろしながら言った。
「まったく、もう少しスマートにやれないモンかね」
別の誰かの声が聞こえる。
この声は。
「だがまあ、『出し惜しみをしなかった』事だけは褒めてやる。良くやった」
これは、オオムカデンダルの声だ。
「く……っ!プ、プロテクションッ!」
苦し紛れか、計算ずくか。
バーデンはプロテクションを唱えた。
目に見えない壁が、バーデンと俺の間に発生する。
「うおっ!?」
俺はその見えない壁によって、引き剥がされるようにバーデンから遠ざけられる。
「くそっ……!」
俺は狼狽した。
プロテクションにこんな使い方があるとは。
いや、それよりも魔法職の呪文も、聖職者系の神聖魔法も、どちらも使えると言う事に驚く。
不得意な分野は無いのか。
「ふ……ふははは!危なかったな。まさかこのレベルの戦いで、首を絞めるなどと言う原始的な方法に出るとは」
バーデンは転がりながら距離を取ると、自らの首をさすりながら言った。
完全に警戒している。
もう、首を取る事は無理だろう。
『一』
もう時間が無かった。
出来る事は無い。
いや……まだだ!
出し惜しみをするなとオオムカデンダルは言った。
俺は『やるだけやろう』とオオムカデンダルに言ったのだ。
やらなければ、また嫌味を言われる。
「スクリューシェイブクロウッ!」
振り上げた右手の手首が高速回転する。
ギュルルルルルルルルルッ!
俺はなりふり構わず回転する指を、プロテクションに叩き付けた。
ドガアッ!
ギャリギャリギャリギャリギャリギャリギャリッ!
バーデンの顔が緊張でこわばる。
恐れているのだ。
あんな表情は初めて見る。
『零』
突然、全身の力が抜ける。
徐々にでは無い。
糸が切れた操り人形のように、本当に突然力が尽きた。
バキイインッ!
聞きなれない音を発てて、プロテクションが割れる音がした。
割れたか。
だが、俺にはもうまばたきする力も残っていなかった。
「く……くそっ……!」
俺はその場で膝をついた。
その体勢でさえ体を支えられないほどだった。
がくっ
ばたんっ!
俺はその場にうつ伏せに突っ伏した。
駄目だ。
もう何も出来ん。
この状況で、俺はさすがに諦めた。
オオムカデンダルに何と言われようと、指一本動かせないのでは出来る事は何もない。
「出し惜しみは……しなかったぜ。ザマミロ……」
それを呟くのが精一杯だった。
「レオ!レオ!返事をしろ!おい!」
カルタスの声が聞こえる。
駄目だ。
来るな。
作戦は失敗だ。
それを声に出す事さえ出来ない。
「ふ……ふふふ!はははは!脅かしやがって。だが確かに強敵には違いなかったな。それは認めよう」
バーデンが立ち上がって近付いて来た。
「だが、俺の方が強かった!これだから戦いは辞められない。その為に将軍職に就いたのだ!」
バーデンが俺を見下ろしながら言った。
「まったく、もう少しスマートにやれないモンかね」
別の誰かの声が聞こえる。
この声は。
「だがまあ、『出し惜しみをしなかった』事だけは褒めてやる。良くやった」
これは、オオムカデンダルの声だ。
0
お気に入りに追加
33
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
【完結】お父様に愛されなかった私を叔父様が連れ出してくれました。~お母様からお父様への最後のラブレター~
山葵
恋愛
「エリミヤ。私の所に来るかい?」
母の弟であるバンス子爵の言葉に私は泣きながら頷いた。
愛人宅に住み屋敷に帰らない父。
生前母は、そんな父と結婚出来て幸せだったと言った。
私には母の言葉が理解出来なかった。
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
冤罪だと誰も信じてくれず追い詰められた僕、濡れ衣が明るみになったけど今更仲直りなんてできない
一本橋
恋愛
女子の体操着を盗んだという身に覚えのない罪を着せられ、僕は皆の信頼を失った。
クラスメイトからは日常的に罵倒を浴びせられ、向けられるのは蔑みの目。
さらに、信じていた初恋だった女友達でさえ僕を見限った。
両親からは拒絶され、姉からもいないものと扱われる日々。
……だが、転機は訪れる。冤罪だった事が明かになったのだ。
それを機に、今まで僕を蔑ろに扱った人達から次々と謝罪の声が。
皆は僕と関係を戻したいみたいだけど、今更仲直りなんてできない。
※小説家になろう、カクヨムと同時に投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる