見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

文字の大きさ
上 下
498 / 826

四九八

しおりを挟む
 店を出て、やっと現場に向かう。
俺たちは下見を兼ねて辺りを散策した。
城門前の大通りは人目につく。
俺たちはそれを避けて、一本入った裏通りを歩いた。

「この辺りが城門の正面辺りね」

 オレコが言った。

「なら、もう少し行った辺りがベストだな。少し斜めから城門を狙える」

 カルタスが答える。

「じゃあアタシはこっち。アンタは反対側の同じ位置に段取りして」

「判った」

 オレコとカルタスは互いに位置を確認しあった。
カルタスはカルタスソードで砲撃を加えるつもりだ。
オレコはさっき買ったばかりの矢を、弓で射かける。

「アナタはどうするの?」

 オレコが俺に尋ねた。

「俺はこの辺りで待機する。奴らが出てきたら仕掛けるから、そうしたら攻撃を始めてくれ。合図はテクノセクトでする」

 俺は自分の肩にセクトビートルを乗せた。
オレコもセクトパピヨンを胸に止まらせる。
カルタスはセクトホッパーを肩に置いたが、ホッパーはピョンと跳ねるとカルタスの頭に乗った。

「……なんだコイツ」

 カルタスが頭の上のホッパーを見上げる。
当然自分では見えないが。

「まあ、どこでも問題ない。ホッパーはお前の頭の上が良いと判断したんだろ」

 俺は笑いを殺して、そう言った。

「じゃあ、アタシはそろそろ準備に入るわね」

 オレコはそう言うと、目星をつけた家の屋根によじ登る。
二階建ての民家の屋根に陣取ると、オレコは煙突の陰に身を潜めた。
下からカルタスが矢筒を次々に上へと投げる。
オレコはそれをキャッチして、自分の周りに並べていった。
それから巨大弓を取り出すと、玄の張りを確認する。

「じゃあ俺たちは、あっちの屋根に陣取るか」

 カルタスは矢筒を全部投げ終わると、今度は自分の場所へ、トラゴスと歩いて行った。

 俺は路地から正面の城門を覗き見る。
まだ何の動きも無い。
今夜は徹夜だ。
奴らが奇襲を掛けるとすれば、深夜か早朝だ。
それまでは結構時間がある。

 とは言え、それはあくまでも予想である。
予想に反して突然奴らが動き出さない確証は無い。
だから、いつでも仕掛けられるように、今からスタンバイするのだ。

 俺は路地裏の壁に寄りかかって、じっと城門を見つめた。
オレコもカルタスも一切通信は無く、彼らもまた、じっと静かにその時を待った。

 いつの間にか陽は消えかかっていた。
地平線に沈み行く太陽が、あとわずかで完全に姿を消す。

 家々の窓から明かりが漏れはじめている。
どこからとも無く、良い匂いが辺りにたちこめた。
どの家からも旨そうな匂いが漂ってくる。

「夕飯時か……」

 俺は誰にともなく呟いた。

「おい!出てくるぞ!」

 突然、カルタスの声がセクトビートルから聞こえた。

 なんだと!
予想よりもずいぶん早いじゃないか。

 俺は慌てて城門を見る。
確かに、ゆっくりと跳ね橋が降りるのが見えた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

穢れた救世主は復讐する

大沢 雅紀
ファンタジー
吾平正志はクラスメイトたちから虐められ、家族からも無視されていた。追い詰められた彼は自殺を計るが、死の寸前に現れた大魔王サタンと契約を結び、新人類となる。復活した正志は仲間を増やし、家族、学校、そして社会全体を破壊していく。すべては人類の救済のために

余命宣告を受けた僕が、異世界の記憶を持つ人達に救われるまで。

桐山じゃろ
ファンタジー
剣と魔法の世界にて。余命宣告を受けたリインは、幼馴染に突き放され、仲間には裏切られて自暴自棄になりかけていたが、心優しい老婆と不思議な男に出会い、自らの余命と向き合う。リインの幼馴染はリインの病を治すために、己の全てを駆使して異世界の記憶を持つものたちを集めていた。

前世で処刑された聖女、今は黒薬師と呼ばれています

矢野りと
恋愛
旧題:前世で処刑された聖女はひっそりと生きていくと決めました〜今世では黒き薬師と呼ばれています〜 ――『偽聖女を処刑しろっ!』 民衆がそう叫ぶなか、私の目の前で大切な人達の命が奪われていく。必死で神に祈ったけれど奇跡は起きなかった。……聖女ではない私は無力だった。 何がいけなかったのだろうか。ただ困っている人達を救いたい一心だっただけなのに……。 人々の歓声に包まれながら私は処刑された。 そして、私は前世の記憶を持ったまま、親の顔も知らない孤児として生まれ変わった。周囲から見れば恵まれているとは言い難いその境遇に私はほっとした。大切なものを持つことがなによりも怖かったから。 ――持たなければ、失うこともない。 だから森の奥深くでひっそりと暮らしていたのに、ある日二人の騎士が訪ねてきて……。 『黒き薬師と呼ばれている薬師はあなたでしょうか?』 基本はほのぼのですが、シリアスと切なさありのお話です。 ※この作品の設定は架空のものです。 ※一話目だけ残酷な描写がありますので苦手な方はご自衛くださいませ。 ※感想欄のネタバレ配慮はありません(._.)

組長様のお嫁さん

ヨモギ丸
BL
いい所出身の外に憧れを抱くオメガのお坊ちゃん 雨宮 優 は家出をする。 持ち物に強めの薬を持っていたのだが、うっかりバックごと全ロスしてしまった。 公園のベンチで死にかけていた優を助けたのはたまたまお散歩していた世界規模の組を締め上げる組長 一ノ瀬 拓真 猫を飼う感覚で優を飼うことにした拓真だったが、だんだんその感情が恋愛感情に変化していく。 『へ?拓真さん俺でいいの?』

ある王妃の末路

どら焼き
ホラー
要望が多かったホラーの試作品です。怖くないかもしれません。

いらないと言ったのはあなたの方なのに

水谷繭
恋愛
精霊師の名門に生まれたにも関わらず、精霊を操ることが出来ずに冷遇されていたセラフィーナ。 セラフィーナは、生家から救い出して王宮に連れてきてくれた婚約者のエリオット王子に深く感謝していた。 エリオットに尽くすセラフィーナだが、関係は歪つなままで、セラよりも能力の高いアメリアが現れると完全に捨て置かれるようになる。 ある日、エリオットにお前がいるせいでアメリアと婚約できないと言われたセラは、二人のために自分は死んだことにして隣国へ逃げようと思いつく。 しかし、セラがいなくなればいいと言っていたはずのエリオットは、実際にセラが消えると血相を変えて探しに来て……。 ◆表紙画像はGirly drop様からお借りしました🍬 ◇いいね、エールありがとうございます!

【完結】契約結婚は閃きの宝庫

つくも茄子
恋愛
アリックス・リードは二十三歳になる子爵令嬢。若い頃、婚約に失敗して行き遅れになった彼女は、王妃付きの女官をしていた。結婚願望ゼロの彼女にとある人物との結婚話が舞い込む。そのお相手とは、社交界きっての貴公子であるオエル・ブリトニー伯爵。両親を早くに亡くし、爵位を若くして継いだ彼は、超有望物件。ただし遊び人として有名だった。だからと言う訳ではないが伯爵は未だに独身。結婚する気配すらなかった。それもそのはず、伯爵本人が結婚する気が全くないのだから。 そんな伯爵との結婚に疑問を感じるアリックス。実はこの結婚は彼女の兄が持ってきたもの。実は、兄と伯爵は学友。色々な思惑アリの結婚話。一見、アリックスには全くメリットのない結婚と思われた。だが、彼女はこの結婚を承諾する。契約結婚として・・・。 何故、彼女は契約結婚を承諾したのか?

茶番には付き合っていられません

わらびもち
恋愛
私の婚約者の隣には何故かいつも同じ女性がいる。 婚約者の交流茶会にも彼女を同席させ仲睦まじく過ごす。 これではまるで私の方が邪魔者だ。 苦言を呈しようものなら彼は目を吊り上げて罵倒する。 どうして婚約者同士の交流にわざわざ部外者を連れてくるのか。 彼が何をしたいのかさっぱり分からない。 もうこんな茶番に付き合っていられない。 そんなにその女性を傍に置きたいのなら好きにすればいいわ。

処理中です...