見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

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四九七

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「少し武器屋に寄りたいわ」

 オレコがそう言うので、帝国内にある武器屋まで足を伸ばした。
あまり時間は無いが、武器が必要と言うなら寄らない訳にはいかない。
中距離線では電磁ムチは届かない。
オレコにはトラップでの支援を期待したんだが。

「すぐ済むわ」

 オレコはそう言うと武器屋の扉を開いた。

「いらっしゃい」

 強面のオヤジが声を掛けてきた。
武器屋のオヤジと言うのは何故か人相が悪いと言うのが相場だ。
そう言う決まりでもあるのか。

「弓と矢を下さるかしら」

「あいよ」

 オヤジはそう言うと、弓の売り場を指差した。

「弓はそこに置いてある五つだ」

 壁際に立て掛けられた弓を、オレコは一本づつ見た。

「うん、これが良いわ」

 一番右端の大きな弓をオレコが手に取った。
大きいと言うにはあまりにも大きい。
こんな扱いづらそうな弓は見た事が無い。
オバケ弓と言った感じだ。

「なんだ、そのキワモノの弓は」

 でか過ぎて邪魔だろう。
俺は思わず思った事を口にした。
実用的には見えないが。

「これは東の最果てにある国の弓よ。巨大だけど威力と射程に優れているわ。扱いは超難しいけどね」

 オレコはそれをカウンターに置いた。
超難しい弓と言いながら、それを迷いもせずに選んだオレコに感心する。
さすがは元ソルジャーだ。

「オヤジさん、矢を全部頂戴」

「え、全部かい?」

「ええ、一本残らず全部よ」

 オヤジは一瞬驚いたが、そこは商売人だ。
すぐに破顔すると、ちょっと待ってなと言い残して店の奥に消えていった。

「あいよ。まだあるぜ」

 戻ってきたオヤジは、両腕に矢の入った筒をたくさんぶら下げている。
それを三往復繰り返した。

「在庫はこれで全部だ。後はそこに並べてあるヤツで店の矢は全てだ」

 結構あるな。
全部で千本くらいあるんじゃないか。

「後は毒瓶とか麻痺瓶とかもあるが?」

「じゃあそれも下さいな」

「よしきた!」

 こんな大口の買い物はそうそうある事ではあるまい。
オヤジの機嫌は見ただけで判るほどに上機嫌だ。

「これで銀貨三枚に負けとこう。銅貨は要らねえ、サービスだ!」

 オヤジが破顔して言う。

「あら、ありがとう。素敵なお店ね」

 オレコはそう言うと銀貨を三枚カウンターに置いた。

「あとこれは私からのお礼よ」

 そう言ってオレコはカウンターにジョルターを一枚置いた。

「なんだいこれは?」

 オヤジが不思議そうにジョルターをつまみ上げて眺めた。

「西の繁華街で両替屋がオープンしたのよ。それを持って行けば良い事あるわよ」

 オレコはそう言うと持てるだけ矢筒を担いで、後はカルタスに持たせた。

「ちぇっ、荷物持ちかよ」

「矢もこれだけあると重たいのよ。力仕事はアナタの仕事!」

 カルタスは手渡された矢筒を、文句を言いつつもひょいひょいと担ぎ上げた。
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