見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

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四八九

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 当然の反応だろう。
変身してなければ俺も同じ顔をしていた筈だ。

 第二とは言え皇子だぞ。
皇位継承第二位だ。
それがどれ程の地位か知らない訳ではあるまい。
それをお前が来いとは。
普通なら、不敬罪で処罰されてもおかしくない発言だ。

 だが、相手がオオムカデンダルでは誰も咎められないのもまた事実である。
この男を処罰出来る人間など存在しない。

「いや……さすがに、それは……」

 使いの男も言葉に詰まっている。
恐らく相手が誰であっても、今までならその場で罰を下していた筈だ。
ただの使いではない。
ソル皇子の使いなのだ。
その辺の力自慢など、話にならない程の腕前の持ち主だ。
その者を以てしても、返事に窮するしかない。
オオムカデンダルの強さを知っているからだ。

「はぁ、仕方がない。じゃあ、俺が代わりに乗り込んでやる」

 オオムカデンダルの言葉に、使いの者は大いに慌てた。

「あ、いえ!それには及びません!」

「……なんだよ。俺じゃ駄目だってのか?じゃあ、皇子が来るんだな?」

 こんな意地悪な話があるだろうか。
いったい、なんの嫌がらせなのか。
第一、ミスリル銀山のアジトまで呼ぶつもりなのか。

 帝国は現状敵である。
そこに第二皇子を招くなんて、アジトの場所どころか内部まで見せる事になるのだ。

「……仕方がありません。ではオオムカデンダル殿もご一緒に」

 使いの男は仕方無く、オオムカデンダルの帯同を許可した。

「本当に来る気なのか?」

 俺はオオムカデンダルに尋ねた。

「当たり前だろ?人の部下を簡単にホイホイ呼びつけやがって。てめえの配下じゃないって事をキッチリ言っておかないとな。お前を便利に使われちゃ迷惑なんだよ」

 オオムカデンダルはそう言って鼻を鳴らした。

「では、参りましょう」

 使いの者が言う。

「おう。そんな訳だから蜻蛉洲、あとは頼んだ」

 オオムカデンダルはそう言うと、意気揚々と歩き出した。
蜻蛉洲は特に何も言わずにオオムカデンダルを見送った。
呆れてると言う訳でも無さそうだ。
つまり、いつものオオムカデンダルと言う事なんだろう。

 俺はため息を吐いて、その後ろに続いた。
歩く方向から察するに、城に向かっている訳では無いらしい。
だとすれば、前回使ったあの隠れ家的な建物か。
だったらそう遠くない。
城へ続く大通りにある、あの建物だ。

 俺は変身を解いて元の姿に戻った。
あのままでは大通りを歩けない。

 前回はたくさんの兵士に囲まれて歩いた。
今回は三人だけで歩いている。
どういう心境の変化か。

「数人兵士が付いたところで、意味などありませんから」

 使いの者はそう言って笑った。
そうしているうちに、例の建物へと辿り着く。
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