見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

文字の大きさ
上 下
488 / 826

四八八

しおりを挟む
 人々の不安を解消してやる。
それから的確に指示を与える。
不安から解放された人の心は、矢継ぎ早に出される的確な指示に、安心と満足感を感じる。
目的と希望を提示し、誇りを持たせる。
その為のサポートを約束する。

 こうして人心を掌握するのか。
俺はオオムカデンダルのやり方を、一歩退いて見ていた。
このやり方は、まるで反乱軍を育てるやり方に見える。
帝国内に内部紛争の火種を起こしているのだ。

 ただ一つ違うのは、煽るだけでは無く自らの勢力に取り込もうとしている所だろう。
つまり、ネオジョルトの外郭組織として、ネオジョルトを拡大しようとしているのだ。

 しかしそうは言っても、ただの民衆を戦闘員にしても、それほど戦力になるとは思えなかった。

「そうでもない」

 蜻蛉洲が言った。

「例えばだ、町一つが特定の組織だったらどう思うか?普段は普通の人々だ。だが、全員が裏で一つの目的の下に繋がっている。ある者は大工、ある者は普通の主婦、またある者は床屋や、料理人だ」

 今一つピンと来ないな。

「お前、軍の兵士に戦闘以外何が出来ると思う?」

 それは。
思い付かない。
人並みにあれこれやるだろうが、専門が兵士なら戦闘が一番得意なんだろう。

「兵士に民衆が戦闘で勝てると思うか?」

 それは無理だ。

「じゃあ戦闘以外の戦いを考えた方が良い。住民が丸ごと戦闘員なら、様々なプロが手に入る」

 戦闘以外の戦闘と言うのが俺にはどうにも理解できなかった。

「まあ、判らんでも問題ない。それに我らの科学力を以てすれば、彼らに一定の戦闘力をもたらす事は容易だからな」

 そう言って蜻蛉洲はニヤリと笑った。
こう言う蜻蛉洲は怖いな。

「戦闘員希望者は、明後日またここに来い。早速指導する。ああ、それと明日はあのヘタレ将軍がまた来るだろうからな。一応、心の準備はしておけよ」

 オオムカデンダルがそう言ってこちらへ歩いて来た。

「何の話だ?」

 オオムカデンダルが言いながら俺の顔と蜻蛉洲の顔を見比べた。

「レオ殿」

 突然背後から声がした。
振り向くと男が一人立っている。
誰だ?

「ソル殿下がお会いになりたいと申しておられます。是非ご一緒に来て頂きたい」

 ソル皇子が?
この出来事と関係のある話か。

「あー、悪いがレオは今忙しい。またにしてくれよな」

 オオムカデンダルが会話に入ってきた。

「貴方様はオオムカデンダル殿ですな」

「よく知ってるな。辞典に載ってたか?」

「ご冗談を……」

 使いの男はそう言ってオオムカデンダルから目を反らした。
オオムカデンダルを怖いと感じているようだ。

「しかし、是非来てもらわなければなりません。どうかお願い致します」

「駄目だ。お前が来いと伝えろ」

 使いの者は驚いてオオムカデンダルを見た。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

生贄にされた先は、エロエロ神世界

雑煮
恋愛
村の習慣で50年に一度の生贄にされた少女。だが、少女を待っていたのはしではなくどエロい使命だった。

♡蜜壺に指を滑り込ませて蜜をクチュクチュ♡

x頭金x
大衆娯楽
♡ちょっとHなショートショート♡年末まで毎日5本投稿中!!

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

【完結】お父様に愛されなかった私を叔父様が連れ出してくれました。~お母様からお父様への最後のラブレター~

山葵
恋愛
「エリミヤ。私の所に来るかい?」 母の弟であるバンス子爵の言葉に私は泣きながら頷いた。 愛人宅に住み屋敷に帰らない父。 生前母は、そんな父と結婚出来て幸せだったと言った。 私には母の言葉が理解出来なかった。

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

冤罪だと誰も信じてくれず追い詰められた僕、濡れ衣が明るみになったけど今更仲直りなんてできない

一本橋
恋愛
女子の体操着を盗んだという身に覚えのない罪を着せられ、僕は皆の信頼を失った。 クラスメイトからは日常的に罵倒を浴びせられ、向けられるのは蔑みの目。 さらに、信じていた初恋だった女友達でさえ僕を見限った。 両親からは拒絶され、姉からもいないものと扱われる日々。 ……だが、転機は訪れる。冤罪だった事が明かになったのだ。 それを機に、今まで僕を蔑ろに扱った人達から次々と謝罪の声が。 皆は僕と関係を戻したいみたいだけど、今更仲直りなんてできない。 ※小説家になろう、カクヨムと同時に投稿しています。

処理中です...