見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

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四八一

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「怪人サフィリナックス……」

 バーデンが小声で繰り返す。

「ならば私も名乗ろう。我が名はバーデン。バーデン将軍だ」

 そう言ってバーデンはマントをはだけた。

「さて、では始めよう。国家に対する反逆は、例外無く全て死刑だ!」

 バーデンが再び剣を構える。
ここからが本番だ。
俺はバーデンが話し終わると同時に踏み込んだ。

「!」

  とっさに反応したバーデンが俺の手刀を剣で受け止める。

 ガギインッ!

 構わず逆の手で追撃するが、これはかわされた。

「二刀流か、その腕は」

 バーデンが距離を取って言う。
しかし、その顔は余裕に満ちている。

「足にも気を付けた方がいい。四刀流だ」

 俺の足にも光の線は入っている。
手にある物と同じ物だ。
触れれば即座に真っ二つだ。

 バーデンはゆっくりと足下に倒れている馬の腰から、ぶら下げていた盾を拾い上げた。

 藍眼鉱。
その目の覚めるような青い光沢。
その盾も間違いなく藍眼鉱による物だ。
全身藍眼鉱の装備品。
いったいいくら掛かっているのか想像もつかない。
小国なら一式作るのも難しい。
だいたい剣だけでも一振あれば良い方だ。
帝国が全ての将軍に藍眼鉱の鎧を与えているのは、他国に国力を見せ付けているのだ。

 それにしても、剣も盾もとは少しやりすぎではないか。
他の将軍では見られなかったぞ。

「ふふ、良いじゃないか。強い者が強い装備に身を包む。まさに無敵だ」

 そう言ってバーデンは盾を前に構え、剣を振り上げる。
このバーデンと言う将軍は、今までの将軍とはどこか違う異質な物を感じる。
言動も、行動も、考え方も。
上手く言えないが、将軍と言う感じがあまりしない。
武人らしくないと言えば良いのか。

 しかし、そうは言ってもその戦闘力は紛れもなく将軍クラスだし、なによりもこの威圧感が尋常では無かった。

 この威圧感。
例えばあのライエル将軍と比べても、この四六時中出っぱなしの威圧感はちょっと異常だ。
しかも並みの物ではない。
常人なら側にさえ寄れまい。
離れていてさえ、いたたまれずに気圧される。
相手に戦いの心得があればあるほど、余計にこれを察知してしまう。
敵は戦う前から戦意をくじかれてしまう筈だ。

 改造人間のこの俺でさえ、継続的なプレッシャーを受け続けている。
これを前に逃げ出さなかった銀猫は、やはりその辺が違っていた。

「サフィリナックス!」

 背後からカルタスの声がした。
追い付いてきたか。

「仲間か。二人が四人になっても、この兵力の前には居ないも同然だがな」

 バーデンが言う。
確かにその通りだ。
だが、この地形なら必ずしも不利とは言えない。
ましてやカルタスとオレコも加われば、それだけでもかなりの戦力アップだ。
やりようはある。
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