見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

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四五五

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「あながち間違いではない」

 蜻蛉洲が言い切った。

「行動隊長があの地域に付きっきりと言う訳にもいくまい。銀猫は三大組織の一角だ。言わば顔なのだ。しかも地域の住民との関係も良好と来ている。適任だろう」

 それはそうだが。
それだけの為に甦らせたのか。

「だから実験も兼ねていたと言っただろう。今後銀猫とその組織は、我がネオジョルトの下部組織として傘下に入る。と言ってもこれまでと何ら変わらない。自分たちの裁量で好きにやってくれ。何か困った事があればすぐに言ってくれればこちらで何とかしよう」

 蜻蛉洲が銀猫に言った。
銀猫はありがとうございますと頭を下げる。
どうやら話は既にまとまっているようだ。

「まあ、任侠だよな。清水の次郎長みたいなもんだ」

 オオムカデンダルが言う。
シミズノジロ……なんだって?

「こっちの話だ、気にするな」

 オオムカデンダルはそう言って説明を避けた。
面倒くさいらしい。

 何にせよ、これで帝国領の裏社会はほぼ手中に収めた事になる。
いくつかの組織は反抗するだろうが、もはや関係無かった。
ネオジョルト傘下の組織なのだ。
抵抗は無駄である。

「さて、じゃあ新しいリーダーのお披露目といくか。蜻蛉洲、頼んだ」

 オオムカデンダルはそう言うと、椅子をクルクルと回転させた。
話は終わりらしい。

「乗り掛かった船だからな。最後までやろう」

 蜻蛉洲もそう言うと、珍しく先頭に立つ。
蜻蛉洲と銀猫と俺は、メタルシェルに乗り込んだ。
これから街に向かう。
他の組織がどう反応するか。

「!?」

 俺は驚いた。
メタルシェルの中には、既に何人かの人間が乗っていたからだ。

「アンタたちは……」

 俺が驚きに声を漏らすと、蜻蛉洲が説明した。

「彼らも再生したよ。ヴァンパイア細胞を移植してある」

 彼ら彼女らは、俺が殺した街の住人たちだ。黒焦げになっていたのに、ここまで再生できるのか。

「ふふふ、変な気分だな」

 銀猫がそう言って笑った。

「死んだり生き返ったり、突然エリアを任されたり。人生とは何が起こるか判らない」

 確かにそうだと思う。
俺だって自分の人生がこんな物になるとは、予想もしていなかった。
まさか人間さえも辞める事になるなんて。

 そんな事を考えているうちに、メタルシェルは離陸した。
人々は慌てふためく。
驚き、口々に神に祈りを捧げた。
気持ちは判る。
俺も最初は同じ心境だった。

 しばらくすると、メタルシェルは帝国領に入った。
相変わらず早いな。
慣れたとは言え、未だに感心する。
メタルシェルを少し大きなスペースに着陸させる。
我々は外に出ると、建て替えた例の家へと向かった。
甦った彼らの家だ。
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