見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

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四四六

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「コイツにやれるものかあっ!」

 ヴァンパイアが叫びながら俺の首を絞める。

 メキメキメキ

 首にヴァンパイアの指がめり込む。

 俺は瞬間的にヴァンパイアの手から自分の右手を離した。
一気に首に力が加わる。

「ぐっ…!」

 右手を引くと、ヴァンパイアを鷲掴みにでもするように、獣の如く五指を立てた。

「!?……させるかあっ!」

 何かを察したヴァンパイアが俺の右手を掴まえた。

 「スクリューシェイブクロウ……!」

 構えた手首が回転する。
ヴァンパイアの手が全力で右手を止めようとする。

「うおおおおっ!やめろお!」

 高速回転する俺の手首を睨み付けながら、ヴァンパイアが叫んだ。

 ギュイイイイイイイイイィィン……ッ!

 高い音を発てて、右手は更に回転を増す。
少しずつ俺の右手はヴァンパイアに迫っていった。

「やめろおおっ!判っているのか?銀猫を殺す気かあっ!」

「……ああ、そのつもりだ!」

 銀猫の表情が心なしか微笑んだように見える。

「ひ、人殺しいっ!何の罪も無い銀猫を殺すのかっ!人殺しめえっ!」

 何を言うか。
貴様が言えた義理ではあるまい。

「僕は人間じゃないから良いんだ!僕が人間を殺すのは、君たちが山羊や豚を殺すのと同じだから!でもお前は人間だろうがよおっ!」

「……残念だったな。俺はもう……とっくに人間を辞めている!」

 ギュイイイイイイイイイィィンッ!

 回転音が更に大きくなった。
これ以上、コイツの言葉は聞きたくない。

「いやだああああああっ!」

 絶叫するヴァンパイアの抵抗を突破して、俺の五指は銀猫の顔面を粉砕した。

「ぎゃあああああああっ!」

 ヴァンパイアの断末魔が響き渡る。
叫ぶんじゃねえよ。
哭きたいのは銀猫の方だ。
スクリューシェイブクロウは完全にヴァンパイアの体を貫通し、床へと到達した。

「ぐぼあっ!」

 ヴァンパイアが口から吐血を噴き出す。
血の信奉者であるヴァンパイアは、心臓を破壊する事が退治する方法の一つだとされている。
そして今、確実にその心臓は破壊された。

 ヴァンパイアの手から力が失われる。
パタリと手が床へと落ちた。

 やった。
完全にヴァンパイアを殺した。
だが何故か勝ったと言う喜びは沸き上がって来なかった。

 辺りを見渡す。
もう既に紅蓮の炎が辺りを呑み込んでいる。
逃げ遅れた人や、チャームに掛けられて操られていた人たちも、みんな炎の中に居た。

 そして、銀猫も。

 俺はゆらりと立ち上がると、くるりと背中を向けて歩き出した。

「おい、何処へ行く気だ」

 背後から声がした。
俺は驚いて振り返った。

「蜻蛉洲……!」

 そこには変身してオニヤンマイザーとなった、蜻蛉洲秀一の姿があった。
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