見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

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四四一

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 ヴァンパイアは処女の活き血を好む。
確かにそう言われている。
俺は今まで、単にヴァンパイアの味覚がそうさせるのだと思っていた。
つまり、好みの問題なのだと。

 だが、どうやらそれは違っていたようだ。
処女の活き血には、ヴァンパイアに圧倒的なパワーを与える力があるらしい。
ここまでパワーが上がるとは、並大抵の力では無い。

 そんな事も知らなかったとは、冒険者として恥ずかしい限りだ。
しかし、今はそんな反省をしている場合でもない。

 今ならまだ倒せる。
俺は冷静にそう考えていた。
俺だってあの時よりは強くなっている。
使える能力も解放された。
そしてなにより、ヴァンパイアは本来の身体ではないのだ。

 完全復活を目論むヴァンパイアが、真の肉体を取り戻したらどうなるか。
答えは言わずもがなだ。
ここで完全決着にしなければ。

「はっはっはっはっ!どうした?絶望したか!」

 ヴァンパイアの高笑いが響き渡る。
辺りには腰が抜けてひっくり返った人々が、まだ何人も残っていた。

「まずいわね……」

 オレコが呟く。
この中に、まだ処女が残っていれば標的になる可能性は高い。
これ以上パワーアップ出来るのかは判らないが、もしそんな事になったらもう手がつけられない。

「うおお!」

 カルタスが再三突っ込んだ。
実際、カルタスの戦いぶりは驚異的だ。
獅子奮迅の戦いぶりである。

 コイツには恐怖心は無いのか。
何度跳ね返されても全く怯まず向かっていくその姿に、俺はそう思った。

 正直に言って、俺よりも改造人間向きだろ。
同じ能力だったら、俺はカルタスには勝てない。

「……言ってる場合か」

 俺はカルタスに触発された。
この場では、俺が一番強いのだ。
俺がやらねば面目が立たん。
一応だが、俺は行動隊長なのだ

「どけ!カルタス!」

 俺は言うと同時にヴァンパイアへ躍り掛かった。

「ふん、来たか!」

 気づいたヴァンパイアが、瞬時に俺へと向き直る。

 どかっ!どかっ!

 左右のパンチが交互にヴァンパイアを捉えた。

「むうっ!」

 たまらずヴァンパイアが後ろへ下がる。

「小癪な……!」

 しかし、そんな事ではヴァンパイアも引き下がらない。
すぐに体勢を建て直すと、瞬時に反転攻勢に転じる。
素早いパンチが連続で俺を打つ。

 どかっ!どかっ!どかっ!

 くそ!
一発余計なんだよ。

「ふふん。僕が君より殴られっぱなしな訳にはいかないからね」

 ヴァンパイアが笑いながら拳を俺に見せつける。

「……ろせ!」

 突然、銀猫の声が聞こえた。

「殺せ!遠慮するな!もう……これ以上は……!」

 銀猫が苦しそうに言った。
しゃべると言うより、呻き声に近い。
相当に苦しいであろう事は想像に難くなかった。
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