見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

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四三八

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「……なんだそのムチは……ッ!」

 ヴァンパイアが右手を押さえながらオレコを見た。

「獣をしつけるムチよ。魔王にはこのくらいの物じゃないとね」

 オレコが挑発するようにムチをもてあそぶ。
令子がくれた武器は、どれも凄まじい威力を持っている。
電磁ムチには雷の力が宿っており、ムチそのものも金属を編んだような不思議な形をしていた。
ムチが当たっただけでも、皮を剥ぎ肉を削ぐ。
そんな凶悪な武器である。

「……やはり肉体が復活しなければ、本来の力は出せんか」

 ヴァンパイアが苦々しく呟く。

「観念しなさい」

 オレコがヴァンパイアに迫る。

「……仕方がない。この身体はお気に入りだったが、使い捨てにするか」

 ヴァンパイアは何かを決意した。

「あああっ!」

 銀猫が悶絶する。
まだ何かやるつもりなのか。
もうこれ以上は銀猫がもたない。

「あああああああっ!」

 いっそう銀猫の絶叫が大きくなった。

「この野郎、いい加減にしやがれ!」

 カルタスが見かねて襲い掛かる。

「まて、カルタス!」

 俺はカルタスを止めたが、構わずカルタスはカルタスソードを繰り出した。

 ガインッ!

「!?」

 巨大なカルタスソードの一撃を、ヴァンパイアは片手で弾き返した。
勢い余ってカルタスは真横に吹っ飛ぶ。

 どがらしゃーん!

 壁際の調度品をなぎ倒し、カルタスは床に転がった。

 ひゅん!

 間髪入れずにオレコのムチが飛ぶ。
狙い過たずヴァンパイアの背中を打った。
だが。

 たんっ!

 ヴァンパイアが軽やかに床を蹴る。
打たれた背中のダメージなど微塵も意に介する事なく、そのまま宙を移動してオレコの背後に降り立つ。

「なんですって!」

 オレコは身を翻して振り返ったが、それより速くヴァンパイアがオレコを蹴飛ばした。

 ずだだーん!

 堪らずオレコも床に突っ伏した。

 速いな。
そして力強い。
さっきまでとはまるで別物だ。

「肉体を限界まで使い倒してやる。その間に君たちを血祭りにあげるなど、容易い事だ」

 ヴァンパイアがそう言った時、俺は驚愕した。

「顔が……!」

ヴァンパイアの顔が銀猫の顔と入れ替わっている。
本来の肉体の持ち主である銀猫の顔は、さっきまでヴァンパイアの顔があった場所にあった。
そして。

「ふふん。やはり頭はこの位置だと神が決めただけの事はあるな。体が扱いやすい」

 ヴァンパイアはそう言って首を左右に倒した。
そうなのだ。
本来銀猫の頭が有る筈の場所に、首の上に、ヴァンパイアの頭が乗っている。
入れ替わっている。

「くくく……!こうなったからにはこの身体はもう使い物にはならん。使い捨てだ。その代わりパワーは今までの比ではないぞ」

 ヴァンパイアが最悪の笑みを溢した。
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