見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

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四三六

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 ウェイトレスたちは完全に目が据わっていた。
ヴァンパイアのチャームが掛かってしまっている。

 ウェイトレスたちは自らのスカートの裾をたくし上げると、隠し持っていた刃物をそれぞれに取り出した。

「な、なななな、なんだ!?」

 カルタスが慌てた。

「ただのウェイトレスじゃないぞ。銀猫の部下だ、彼女たちも組織の一員だ」

 そうは言ったものの、どうする。
彼女たちもまとめて倒すのか。
人が集まる度にチャームを撒き散らされたら、来る人間、来る人間、全てを殺さなければならない。

 これがヴァンパイアのチャームが厄介な理由である。
簡単に相手を操り、下僕にしてしまう。
人間はそう簡単に仲間を殺したり出来ない。
ヴァンパイアらしい極めて下衆な能力である。

「扉を閉めろ!」

 俺は叫んだ。
だが銀猫の異変を察知して、次から次にウェイトレスたちが集まってくる。
まったく、良くしつけられているな。
カルタスが扉を閉めようと試みるが、ハッキリ言ってそれどころでは無い。

「くそっ!駄目だ!閉められねえ!」

 その時。

 床が一瞬光を放つ。
魔法の紋様が浮かび上がると、その瞬間にウェイトレスたちは一斉に一ヶ所へ集まった。
良く見れば、光の輪が彼女たちを束ねて、一ヶ所へ強制的に集めた事が判る。

「トラップか……!」

 俺はオレコを振り返った。

「とっさにトラップの対象を彼女たちに変えてしまったわ……!」

 いや、今はそれがベストの判断だ。
しかしヴァンパイアに対するトラップはタネがバレてしまった。
同じ罠はもう通用しない。

「……ふん。判るぞ。そのトラップ、対アンデッドの力が封入されているね」

 ヴァンパイアが目を細めて言った。
やはり見破られている。

「勘違いするな。楽に倒せるならその方が良いと思っただけだ」

 俺はそう言って再び構えをとった。
カルタスもオレコも同じく武器を構える。

「じゃあ、こんなのも知っているかい?」

 そう言うとヴァンパイアがニヤリと笑った。
今度は何だと言うのか。

「うあっ!」

 銀猫が突然声をあげた。
何をしている。

「ああああっ!」

 苦しげに叫ぶ銀猫の声が、少しずつ変化していく。

「ギヤアアアアアーオッ!」

 見る間に銀猫の見た目が変化していく。
これは。

「……ライカンスロープ」

 オレコが呟く。
ライカンスロープとは、いわゆる獣人の事だ。
主には狼などが有名だが、様々な獣に人間が変化してモンスター化する。
最も有名なライカンスロープは、ワーウルフだ。

「ギニャアアアアアアアッ!」

 毛深く、爪が伸び、体が肥大化する。
銀猫の姿は見る間にモンスター化した。

「ワーキャット……!」

 オレコが銀猫の姿に息を呑んだ。
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