見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

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四〇六

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「豪気だな」

 カルタスが言った。

「言ったろ、俺の金じゃない」

 そう、これは組織から出てる軍資金のような物だ。

「例えそうでも、自分のように使わない所がレオのカッコいい所なのよねえ」

 オレコが流し目で俺を見た。

「レオさま、カッコいい!」

「カッコいい!」

 ナノとピコが面白がって真似をする。
キロも笑って見ているだけだ。
勘弁してくれ。

「お前、自分の為に使った事ないだろ」

 カルタスがパンを千切りながら言った。

「こうして宿に泊まったり食事したりしてるだろ」

「かぁー、聞いたかおい。コイツ欲望が枯れてるんじゃねえの?ジジイみてえだよな」

 カルタスが嫌味たらしく顔をしかめた。
放っておいてくれ。

「欲しい物があれば使うさ」

 俺はそう言って食堂を後にした。
欲しい物があれば。
自問自答してみたが、特に欲しい物は思い浮かばなかった。
やっぱりジジイなのか?

 そんな事を思いながら、俺は再び例のスラム地域にやって来た。
以前と同じく至る所から視線を感じる。
しかし、微妙に前とは異なった。
前回ほど、あからさまな敵意では無くなっているように感じる。

 ふと近くの窓から室内を見た。
部屋の中からこちらを見ていた連中が、さっと視線を外す。
なんだ?

「おい」

 聞き覚えのある声がした。
俺はその方向を振り返った。

「お前、俺のメモ書き持っているんだろ?返せ」

 俺は思わず笑みがこぼれそうになった。
探し出すのに難儀をすると思っていたのに、向こうから現れてくれるとは。
男の表情からどこか怯えてるのが伝わってくる。
まあ、無理もない。
前回、少し脅かし過ぎたかもしれない。

「これか?」

 俺は懐からメモ書きを取り出して見せた。

「それだ!」

 男が駆け寄る。
俺はそれをひょいとかわして、上へと掲げる。

「な……!?返せ!」

「返さんとは言ってない。これは返そう。その為にわざわざ来たんだからな」

「……なに?」

「だが、少し話を聞きたい。お前がそれに答えたらこれは返してやる」

 男が警戒心を露にする。
そこかしこの路地や建物の陰から、何人かの気配がする。
当然、そのくらいの準備はしてるだろう。

「……なんだ、話って」

「これは、お前が書いたのか?」

「そうだ」

「じゃあこの字は、お前の字な訳だ」

「それがどうした」

「……お前、女なのか?」

「!?」

 明らかに男は動揺した。
いや、女か。

「何言ってやがる!俺のどこが男に見えるんだ!」

 男は……もとい女は、いや否定してるから男なのか?
ええい、ややこしい。
とにかくコイツは女だと言う事を否定した。

「お前、名前は?」

「うるせえ!なんでお前に名乗らなきゃならねえんだ!」
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