見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

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三七五

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「なるほど、だから今日早速スラッグとか言う奴の所のファズってのが喧嘩を売ってきた訳か」

「まあそれもあるだろうが、アレはまた違った理由もあるんだろ。その一件さえも、もう知れ渡っている筈だ」

 リアルタイムで監視されっぱなしと言う訳だ。
どうでも良いが気分は良くない。

「これがただの喧嘩なら、ここではよくある事だ。だが、相手がどっかの組織の名のある者が相手となれば話は違ってくる。この辺りの人間はそこら辺はよく理解してるからな。しかも一方的にぶちのめしたとなれば尚更だ」

 そんな事は判っている。
判っているから暴れていたのだ。
小物をいじめるよりも、大物を釣った方が効率が良かろう。
サルバスはあわよくば裏社会の大掃除をさせたいようだが、あいにく俺はそんな事には興味がない。
特にそう言う命令を受けている訳でもない。

 言われているのは、裏社会に顔を売る。
つまりネオジョルトの存在を知らしめる。
そう言う趣旨だと理解している。
……たぶんそう言う意味な筈だ。

 それと、俺に裏社会と言う物を見せる意味もあったのだろう。
それはここへ来て気付いた事だが。
確かに俺はあまり世の中を知らなかったようだ。
冒険者として、モンスターばかり相手にして来たからな。
嫌味な言い方だが、俺は陽の当たる場所しか歩いてこなかったのだ。

「お前が何をしようとしているのかは判らんが、敵対しない方が得策だろうと言うのが我々の見解だ。一人で複数相手にするだけでも正気の沙汰ではないが、あのファズをやったと言うのはな。少し信じがたいが」

 そう言って銀猫は笑った。

「……他にもあるんだろ?」

「え?」

 俺は銀猫の、金色の目を覗き込む。

「それがお前らにとってどれぐらいの衝撃だったのかは知らんが、組織の総意として個人と約束を取り付けようとはならんだろ。本心はなんだ?」

 銀猫の瞳がわずかに、きゅっと小さくなった。

「俺が思うに、あのマイヤードって男の方が組織としての格は上なんだろ。あんなヘナチョコが頭だなんて笑えるがな。たぶん資金が豊富なんだろう。金があれば人はある程度付いてくる」

「……なぜそう思う」

「あんなのでも組織を仕切れるなら、他に考えられる事は多くない。お前の所もそう言う所とは事を構えたくないんだろう?」

「……はっ、たいしたもんだ。その通り」

 銀猫は意外とあっさり白状した。

「アンタとかかわり合いになると、友好的にしろ敵対的にしろ、どのみちマイヤードの所と接触する可能性があるからな。だからお互いに不干渉で居てもらいたいのさ」

 そう言って銀猫は肩をすくめた。
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