見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

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三六一

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「酒を注がせるだけだ。隣に座らせるくらい問題なかろう。金は払うと言うんだ」

 バッケスがじっと俺の目を見たが、すぐにニコリと微笑んだ。

「まあ、お客様のご趣味には口を出したりしませんよ。どんな女性でもお望みとあらばお付けしましょう」

 この野郎。
おれを少女趣味だと言いたいのか。

「それに、これも脅しなんでしょう?」

 すっかり根にもってるな。
まあ、それでこそ争いの種には事欠かないと言うものだ。
ここは良しとしよう。

「おい、キロ。弟たちを呼んでこい」

「え?」

 俺の言葉にキロが驚いた。

「どうしてですか?」

「飯を食わせてやると言ったろう?お前に休みがないなら仕方がない。ここで食わせてやる 」

「え?ここで!?」

 キロは目を丸くした。
こんないかがわしい店で子供に食事を振る舞おうと言う事が、そもそも間違っている事は承知している。
だが、今はそんな事は気にしない事にした。
なるべく破天荒に行動する方が良いだろう。
真面目に冒険者として常識的に生きてきた俺にとって、これはなかなか難しいことではあった。
だが、一方で気持ちよくもある。

 もちろん、行動のお手本はオオムカデンダルだ。
彼ならこうしそうだと言うのを想像しながら振る舞う。
我ながら上手く真似しているのではないか。

「ちょっとお客人、さすがにそれは」

 見知らぬ男が声を掛けてきた。
厳つい顔に立派なガタイ。
用心棒兼従業員て所か。

「なんだ。バッケスは良いと言ったぞ」

「ガキをたくさん呼ぶ事までは許可してないと思うんですがね」

「だったら今、許可を取るさ」

「……お客人。あんまり勝手が過ぎるとさすがに迷惑なんですが」

 男の雰囲気が段々と本性を隠しきれなくなっている。

「キロ。構わないから早く行って呼んでこい」

 俺はそう言ってキロを行かせた。

「待ちなキロ!お前は座ってろ!」

 男は前を通り過ぎようとしたキロの首根っこを掴まえて、席に放り投げた。

「きゃっ!」

 キロが勢い余って椅子にぶつかり、そのまま床に転げた。

「ふん」

 男が鼻を鳴らす。

「おい」

 俺の呼び掛けに男がギロリと俺を睨んだ。

「なんです?」

「女子供はもっと優しく扱え」

 男が、へっと鼻で笑った。

「アンタもいつまでもでかい顔してるんじゃねえ!」

 言うと同時に俺の胸ぐらを掴まえる。

「ほお。お前が先に手を出したんだぜ?」

 俺は隣に黙って立っているバッケスの顔を見た。
ヤツはただ黙って成り行きを見守っている。
俺は男の手を掴まえると、いとも容易く捻りあげる。

「うぎゃあ!いててててててててて!」

「ごめんなさいは?」

「ああ!いてて!なんだとテメエ!離しやがれ!」

 男は反抗的な態度を崩さなかった。
それでこそ暴れる為の良い口実が出来ると言うものだ。

「そうじゃない。ごめんなさいだ」

 俺はさらに腕を捻った。
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