見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

文字の大きさ
上 下
350 / 826

三五〇

しおりを挟む
 は?

 俺は思わずタメ口で聞き返した。
いかん、相手は賢者様だ。

「あの、なぜ俺が悪党に顔を?」

 俺はごまかすように早口で尋ねた。

「蛇の道は蛇と言うだろが。悪には悪のコネクションもある。悪党の流儀も身に付けておけば、どっかでは役に立つ事もあるだろうて」

 そんなもんかね。
上手く丸め込まれてる気もするが。

「それは面白そうだ。俺も興味ある」

 オオムカデンダルが身を乗り出す。
だったらアンタが行ってくれよ。

「お主が行ったら話が終わってしまうわ。二秒で終わる」

 サルバスが呆れたようにオオムカデンダルを見た。
それはそうだろう。
この世の全てを無視して暴力で決着を着けるとなれば、オオムカデンダルが出て行ったら全ての話は終わってしまう。
ドラゴンでも出てくるのなら話は別だが。

「だいたい、レオに目的をやってくれと言ったのはお主ではないか」

 目的ねえ。
それがどうして俺の目的と言う事になるのか。
俺は別にそんな事に興味も無ければ、やる理由も無い。

「話の腰ばかり折りおって、進まんではないか」

 サルバスがため息混じりにぼやく。

「なかなか曲者揃いの筈だから、お前さんの強さを研くのにも、実力を測るにも良いと思うがの」

 そう言われては少しも興味が無い訳ではないが、何か引っ掛かる。
賢者サルバスの性格を考えれば、他に目的が有るように思えるのだが。

「まだ若いくせに、そう人を疑うものでは無いわ」

 サルバスはそう言ったが目が笑っているような気がする。
考えすぎか。

「なあなあ、じーちゃん。俺も行きたいぜ。行っても良いだろ?」

 オオムカデンダルはまだ諦めきれない。

「だーめじゃ!幹部のくせに判らんヤツだの。頭が乗り込んでどうするんだ」

 そう言うアンタもその頭を叱っているんだが。

「まあ、今回は我慢せえ。お前さんには今度取って置きの案件を教えてやるから」

 サルバスがオオムカデンダルをなだめた。
本当にそんな案件があるのかは判らん。

「ちっ……しょうがねえなあ。今回は諦めるかぁ。強いヤツが居なくて退屈なんだよなぁ」

 アンタが満足する相手なんかこの世に居るのか。

「向こうでは居たんだよ、うるせえのが。邪魔ばっかしやがって頭にくるのがよ。まあ、負けちまったんだけど」

 オオムカデンダルはそう言うと舌を出した。
本当か。
とても信じられない。
この男を負かすとはいったいどんなヤツなのか。

「ハッ、正義の味方さ。お役所のね」

 正義の味方。
役人なのか。
良く判らんな。

「まあ、今はそんな話はどうでも良い。レオ、お前の行動楽しみに観賞してるからな。舐められるんじゃねえぞ!」

 オオムカデンダルはそう言って俺の尻を叩いた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

生贄にされた先は、エロエロ神世界

雑煮
恋愛
村の習慣で50年に一度の生贄にされた少女。だが、少女を待っていたのはしではなくどエロい使命だった。

♡蜜壺に指を滑り込ませて蜜をクチュクチュ♡

x頭金x
大衆娯楽
♡ちょっとHなショートショート♡年末まで毎日5本投稿中!!

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

【完結】お父様に愛されなかった私を叔父様が連れ出してくれました。~お母様からお父様への最後のラブレター~

山葵
恋愛
「エリミヤ。私の所に来るかい?」 母の弟であるバンス子爵の言葉に私は泣きながら頷いた。 愛人宅に住み屋敷に帰らない父。 生前母は、そんな父と結婚出来て幸せだったと言った。 私には母の言葉が理解出来なかった。

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

冤罪だと誰も信じてくれず追い詰められた僕、濡れ衣が明るみになったけど今更仲直りなんてできない

一本橋
恋愛
女子の体操着を盗んだという身に覚えのない罪を着せられ、僕は皆の信頼を失った。 クラスメイトからは日常的に罵倒を浴びせられ、向けられるのは蔑みの目。 さらに、信じていた初恋だった女友達でさえ僕を見限った。 両親からは拒絶され、姉からもいないものと扱われる日々。 ……だが、転機は訪れる。冤罪だった事が明かになったのだ。 それを機に、今まで僕を蔑ろに扱った人達から次々と謝罪の声が。 皆は僕と関係を戻したいみたいだけど、今更仲直りなんてできない。 ※小説家になろう、カクヨムと同時に投稿しています。

処理中です...