349 / 826
三四九
しおりを挟む
「なるほどのお」
オオムカデンダルから事情を聞いて、サルバスが俺を見る。
目を細めて一見、好好爺風だが彼もまた好奇心の塊だった。
好奇心に負けて帝国からネオジョルトへやって来たような爺さんなのだ。
油断はならない。
「はて、目的と言ってものう……なんでもええのか?」
「ああ、なんでもいい。やり甲斐のありそうなのを頼むよ。この世界の事はじーちゃんに頼んだ方が間違いが少ないだろ?」
オオムカデンダルの言葉にサルバスが反応する。
「間違いが少ないは誤りだ。間違いがないと言え」
「悪かったよ。じーちゃんに頼めば間違いがない」
「良かろう」
サルバスが、素直に言い直したオオムカデンダルの言葉に満足そうに頷いた。
「ふむ。こやつの様子はここで観られるんじゃろ?」
サルバスがオオムカデンダルに確認した。
「ああ。観られるよ」
知ってはいたが、改めて言われるとなんだかショックだ。
俺にプライベートなどない。
気にしても仕方がない事だが、誰でも勝手に見られると言うのは改善してもらおう。
「だったら面白い事があるぞ」
サルバスがニッと顔をほころばせた。
「お前さん、強さにこだわっとったろ。どうじゃ腕自慢と競ってみんか?」
なんの事だ。
格闘大会なんて興味ないぞ。
そんな場合でもない。
「帝国にはのう。いくつかの闇の勢力と言うのがある」
なんだそれは。
「簡単に言えば、犯罪者集団だ。それが集まって各々勢力拡大を狙っとる訳だ。利権は独り占めしたかろ?」
つまりなにか。
ネオジョルトみたいな秘密結社がいくつもあると言うのか。
「左様。と言っても、ここほど強力な所は無いだろうがね」
当たり前だ。
こんな滅茶苦茶な力を持った連中が、そこらにホイホイ居てたまるか。
「だがね、中には面倒臭い奴らも居るもんで、帝国も取り締まりには手を焼いておる。将軍連中を駆り出しても完全に撲滅までは出来なんだ」
それは賢者サルバスの力を以てしてもか。
「はっはっはっ。言いにくい事を言いおるな。ま、否定はせんよ。鬼は退治できても小さな蟻を一匹残らず駆除するには家ごと焼くしかあるまい。それは無理な相談じゃ」
言い得て妙だな。
「レオに害虫駆除でもやらせるのか?」
オオムカデンダルが言った。
俺の目的とはそんなもんなのか。
何だか馬鹿らしくてガックリときてしまう。
「いや、違うのう。必要悪と言うのもあってな、あれはあれで存在価値があるのじゃ」
じゃあ、なんだと言うのか。
「お前さんちょっと乗り込んで引っ掻き回してこい。秘密結社の戦闘隊長なら裏社会で顔を売るのも悪くなかろう。それにワルの流儀と言うのを学ぶ良い機会じゃ」
オオムカデンダルから事情を聞いて、サルバスが俺を見る。
目を細めて一見、好好爺風だが彼もまた好奇心の塊だった。
好奇心に負けて帝国からネオジョルトへやって来たような爺さんなのだ。
油断はならない。
「はて、目的と言ってものう……なんでもええのか?」
「ああ、なんでもいい。やり甲斐のありそうなのを頼むよ。この世界の事はじーちゃんに頼んだ方が間違いが少ないだろ?」
オオムカデンダルの言葉にサルバスが反応する。
「間違いが少ないは誤りだ。間違いがないと言え」
「悪かったよ。じーちゃんに頼めば間違いがない」
「良かろう」
サルバスが、素直に言い直したオオムカデンダルの言葉に満足そうに頷いた。
「ふむ。こやつの様子はここで観られるんじゃろ?」
サルバスがオオムカデンダルに確認した。
「ああ。観られるよ」
知ってはいたが、改めて言われるとなんだかショックだ。
俺にプライベートなどない。
気にしても仕方がない事だが、誰でも勝手に見られると言うのは改善してもらおう。
「だったら面白い事があるぞ」
サルバスがニッと顔をほころばせた。
「お前さん、強さにこだわっとったろ。どうじゃ腕自慢と競ってみんか?」
なんの事だ。
格闘大会なんて興味ないぞ。
そんな場合でもない。
「帝国にはのう。いくつかの闇の勢力と言うのがある」
なんだそれは。
「簡単に言えば、犯罪者集団だ。それが集まって各々勢力拡大を狙っとる訳だ。利権は独り占めしたかろ?」
つまりなにか。
ネオジョルトみたいな秘密結社がいくつもあると言うのか。
「左様。と言っても、ここほど強力な所は無いだろうがね」
当たり前だ。
こんな滅茶苦茶な力を持った連中が、そこらにホイホイ居てたまるか。
「だがね、中には面倒臭い奴らも居るもんで、帝国も取り締まりには手を焼いておる。将軍連中を駆り出しても完全に撲滅までは出来なんだ」
それは賢者サルバスの力を以てしてもか。
「はっはっはっ。言いにくい事を言いおるな。ま、否定はせんよ。鬼は退治できても小さな蟻を一匹残らず駆除するには家ごと焼くしかあるまい。それは無理な相談じゃ」
言い得て妙だな。
「レオに害虫駆除でもやらせるのか?」
オオムカデンダルが言った。
俺の目的とはそんなもんなのか。
何だか馬鹿らしくてガックリときてしまう。
「いや、違うのう。必要悪と言うのもあってな、あれはあれで存在価値があるのじゃ」
じゃあ、なんだと言うのか。
「お前さんちょっと乗り込んで引っ掻き回してこい。秘密結社の戦闘隊長なら裏社会で顔を売るのも悪くなかろう。それにワルの流儀と言うのを学ぶ良い機会じゃ」
0
お気に入りに追加
32
あなたにおすすめの小説
ボロ雑巾な伯爵夫人、やっと『家族』を手に入れました。~旦那様から棄てられて、ギブ&テイクでハートフルな共同生活を始めます2~
野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
ファンタジー
第二夫人に最愛の旦那様も息子も奪われ、挙句の果てに家から追い出された伯爵夫人・フィーリアは、なけなしの餞別だけを持って大雨の中を歩き続けていたところ、とある男の子たちに出会う。
言葉汚く直情的で、だけど決してフィーリアを無視したりはしない、ディーダ。
喋り方こそ柔らかいが、その実どこか冷めた毒舌家である、ノイン。
12、3歳ほどに見える彼らとひょんな事から共同生活を始めた彼女は、人々の優しさに触れて少しずつ自身の居場所を確立していく。
====
●本作は「ボロ雑巾な伯爵夫人、旦那様から棄てられて、ギブ&テイクでハートフルな共同生活を始めます。」からの続き作品です。
前作では、二人との出会い~同居を描いています。
順番に読んでくださる方は、目次下にリンクを張っておりますので、そちらからお入りください。
※アプリで閲覧くださっている方は、タイトルで検索いただけますと表示されます。
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
英雄になった夫が妻子と帰還するそうです
白野佑奈
恋愛
初夜もなく戦場へ向かった夫。それから5年。
愛する彼の為に必死に留守を守ってきたけれど、戦場で『英雄』になった彼には、すでに妻子がいて、王命により離婚することに。
好きだからこそ王命に従うしかない。大人しく離縁して、実家の領地で暮らすことになったのに。
今、目の前にいる人は誰なのだろう?
ヤンデレ激愛系ヒーローと、周囲に翻弄される流され系ヒロインです。
珍しくもちょっとだけ切ない系を目指してみました(恥)
ざまぁが少々キツイので、※がついています。苦手な方はご注意下さい。
【完結】義妹とやらが現れましたが認めません。〜断罪劇の次世代たち〜
福田 杜季
ファンタジー
侯爵令嬢のセシリアのもとに、ある日突然、義妹だという少女が現れた。
彼女はメリル。父親の友人であった彼女の父が不幸に見舞われ、親族に虐げられていたところを父が引き取ったらしい。
だがこの女、セシリアの父に欲しいものを買わせまくったり、人の婚約者に媚を打ったり、夜会で非常識な言動をくり返して顰蹙を買ったりと、どうしようもない。
「お義姉さま!」 . .
「姉などと呼ばないでください、メリルさん」
しかし、今はまだ辛抱のとき。
セシリアは来たるべき時へ向け、画策する。
──これは、20年前の断罪劇の続き。
喜劇がくり返されたとき、いま一度鉄槌は振り下ろされるのだ。
※ご指摘を受けて題名を変更しました。作者の見通しが甘くてご迷惑をおかけいたします。
旧題『義妹ができましたが大嫌いです。〜断罪劇の次世代たち〜』
※初投稿です。話に粗やご都合主義的な部分があるかもしれません。生あたたかい目で見守ってください。
※本編完結済みで、毎日1話ずつ投稿していきます。
伯爵夫人のお気に入り
つくも茄子
ファンタジー
プライド伯爵令嬢、ユースティティアは僅か二歳で大病を患い入院を余儀なくされた。悲しみにくれる伯爵夫人は、遠縁の少女を娘代わりに可愛がっていた。
数年後、全快した娘が屋敷に戻ってきた時。
喜ぶ伯爵夫人。
伯爵夫人を慕う少女。
静観する伯爵。
三者三様の想いが交差する。
歪な家族の形。
「この家族ごっこはいつまで続けるおつもりですか?お父様」
「お人形遊びはいい加減卒業なさってください、お母様」
「家族?いいえ、貴方は他所の子です」
ユースティティアは、そんな家族の形に呆れていた。
「可愛いあの子は、伯爵夫人のお気に入り」から「伯爵夫人のお気に入り」にタイトルを変更します。
妻がエロくて死にそうです
菅野鵜野
大衆娯楽
うだつの上がらないサラリーマンの士郎。だが、一つだけ自慢がある。
美しい妻、美佐子だ。同じ会社の上司にして、できる女で、日本人離れしたプロポーションを持つ。
こんな素敵な人が自分のようなフツーの男を選んだのには訳がある。
それは……
限度を知らない性欲モンスターを妻に持つ男の日常
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる