見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

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三三〇

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 オオムカデンダルは吐き捨てるように言った。
ゴーレムは人を喰わないと思うが、今は黙っておこう。

「俺は覚悟していた。アンタならそう言うんだろうなと。だが、その前に俺は妹を救い出したい」

 俺はオオムカデンダルに訴えた。
やれと言われれば何でもやるが、妹を救う事だけは最優先だ。

「いいとも。それに異論は無い。お前の妹を探す線から邪神まで繋がっているだろうからな」

 止められなくて俺は安心した。

「さて、今の映像の中で『プニーフタールの解放まで人間はあと百名ちょっと、タレントは一人か二人』と言っていた。『あと』と言う事は『既に』何名かは囚われたか、或いは殺されている筈だ。言い方からするに百名以上だろう。残りの方が『あと百名』なのだから『既に』の方はそれ以上の筈だ」

 俺は頷いた。

「タレントは餌だとして、人間は何の為に必要なんだ?しかも数百人単位で」

 オレコが答えた。

「たぶん生贄だと思うわ。解放までに生贄が、あと百名ちょっとって事なんじゃないかしら」

 そんなに大勢の人の命が必要なのか。
そこまで犠牲を払って何をするつもりなのか。

「なるほどな、生贄か。神に捧げるって訳だ。神は神でも邪神だが」

 オオムカデンダルが鼻で笑った。

「そんなにたくさん人間が必要なら、たくさんの行方不明者が出てる事だろうよ。拐われたか殺されたかは判らんが」

「……俺は殺されたと思う」

 俺は呟くように言った。
それにオオムカデンダルが返す。

「なぜそう思う?」

「俺は最初は行方不明者の探索の為に、あの山小屋へ冒険者たちとパーティーで向かったんだ。だがアンタも見た筈だ。あそこには化け物が居て、地下には人間が殺され吊るされていた」

 今でも鮮明に思い出す。
息が苦しくなり、鼓動が早まる。
俺のトラウマと言っても良い。

「ふむ。なるほどねえ、つまりあの化け物が生贄を集める役だったと?」

「そうだ」

「確かに一理あるが、あの化け物に人集めは無理じゃ無いか?あんなのが村や街にやって来たらそれこそ大騒ぎだろう。行方不明者探索どころか即刻討伐対象だ。事件は明るみに出てる筈だ」

 それはそうかもしれないが。

「山小屋に近付いた者だけを襲ったのかもしれない」

 俺は食い下がった。

「アリジゴクや蜘蛛みたいに獲物が来るのを待つのか。効率が悪すぎる。とても数百名は集められまい」

 俺は言葉に詰まった。

「……じゃあどうやって」

「簡単だ。そそのかした奴が居るんだろ。どこの世界でもいつの時代でも悪党のやる事はそう変わらん」

 そそのかす?
誰が?

「そんな事まで判るもんか。それはほれ、ここに在るんじゃないのか?」

 オオムカデンダルはそう言って機械を叩いた。
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