330 / 826
三三〇
しおりを挟む
オオムカデンダルは吐き捨てるように言った。
ゴーレムは人を喰わないと思うが、今は黙っておこう。
「俺は覚悟していた。アンタならそう言うんだろうなと。だが、その前に俺は妹を救い出したい」
俺はオオムカデンダルに訴えた。
やれと言われれば何でもやるが、妹を救う事だけは最優先だ。
「いいとも。それに異論は無い。お前の妹を探す線から邪神まで繋がっているだろうからな」
止められなくて俺は安心した。
「さて、今の映像の中で『プニーフタールの解放まで人間はあと百名ちょっと、タレントは一人か二人』と言っていた。『あと』と言う事は『既に』何名かは囚われたか、或いは殺されている筈だ。言い方からするに百名以上だろう。残りの方が『あと百名』なのだから『既に』の方はそれ以上の筈だ」
俺は頷いた。
「タレントは餌だとして、人間は何の為に必要なんだ?しかも数百人単位で」
オレコが答えた。
「たぶん生贄だと思うわ。解放までに生贄が、あと百名ちょっとって事なんじゃないかしら」
そんなに大勢の人の命が必要なのか。
そこまで犠牲を払って何をするつもりなのか。
「なるほどな、生贄か。神に捧げるって訳だ。神は神でも邪神だが」
オオムカデンダルが鼻で笑った。
「そんなにたくさん人間が必要なら、たくさんの行方不明者が出てる事だろうよ。拐われたか殺されたかは判らんが」
「……俺は殺されたと思う」
俺は呟くように言った。
それにオオムカデンダルが返す。
「なぜそう思う?」
「俺は最初は行方不明者の探索の為に、あの山小屋へ冒険者たちとパーティーで向かったんだ。だがアンタも見た筈だ。あそこには化け物が居て、地下には人間が殺され吊るされていた」
今でも鮮明に思い出す。
息が苦しくなり、鼓動が早まる。
俺のトラウマと言っても良い。
「ふむ。なるほどねえ、つまりあの化け物が生贄を集める役だったと?」
「そうだ」
「確かに一理あるが、あの化け物に人集めは無理じゃ無いか?あんなのが村や街にやって来たらそれこそ大騒ぎだろう。行方不明者探索どころか即刻討伐対象だ。事件は明るみに出てる筈だ」
それはそうかもしれないが。
「山小屋に近付いた者だけを襲ったのかもしれない」
俺は食い下がった。
「アリジゴクや蜘蛛みたいに獲物が来るのを待つのか。効率が悪すぎる。とても数百名は集められまい」
俺は言葉に詰まった。
「……じゃあどうやって」
「簡単だ。そそのかした奴が居るんだろ。どこの世界でもいつの時代でも悪党のやる事はそう変わらん」
そそのかす?
誰が?
「そんな事まで判るもんか。それはほれ、ここに在るんじゃないのか?」
オオムカデンダルはそう言って機械を叩いた。
ゴーレムは人を喰わないと思うが、今は黙っておこう。
「俺は覚悟していた。アンタならそう言うんだろうなと。だが、その前に俺は妹を救い出したい」
俺はオオムカデンダルに訴えた。
やれと言われれば何でもやるが、妹を救う事だけは最優先だ。
「いいとも。それに異論は無い。お前の妹を探す線から邪神まで繋がっているだろうからな」
止められなくて俺は安心した。
「さて、今の映像の中で『プニーフタールの解放まで人間はあと百名ちょっと、タレントは一人か二人』と言っていた。『あと』と言う事は『既に』何名かは囚われたか、或いは殺されている筈だ。言い方からするに百名以上だろう。残りの方が『あと百名』なのだから『既に』の方はそれ以上の筈だ」
俺は頷いた。
「タレントは餌だとして、人間は何の為に必要なんだ?しかも数百人単位で」
オレコが答えた。
「たぶん生贄だと思うわ。解放までに生贄が、あと百名ちょっとって事なんじゃないかしら」
そんなに大勢の人の命が必要なのか。
そこまで犠牲を払って何をするつもりなのか。
「なるほどな、生贄か。神に捧げるって訳だ。神は神でも邪神だが」
オオムカデンダルが鼻で笑った。
「そんなにたくさん人間が必要なら、たくさんの行方不明者が出てる事だろうよ。拐われたか殺されたかは判らんが」
「……俺は殺されたと思う」
俺は呟くように言った。
それにオオムカデンダルが返す。
「なぜそう思う?」
「俺は最初は行方不明者の探索の為に、あの山小屋へ冒険者たちとパーティーで向かったんだ。だがアンタも見た筈だ。あそこには化け物が居て、地下には人間が殺され吊るされていた」
今でも鮮明に思い出す。
息が苦しくなり、鼓動が早まる。
俺のトラウマと言っても良い。
「ふむ。なるほどねえ、つまりあの化け物が生贄を集める役だったと?」
「そうだ」
「確かに一理あるが、あの化け物に人集めは無理じゃ無いか?あんなのが村や街にやって来たらそれこそ大騒ぎだろう。行方不明者探索どころか即刻討伐対象だ。事件は明るみに出てる筈だ」
それはそうかもしれないが。
「山小屋に近付いた者だけを襲ったのかもしれない」
俺は食い下がった。
「アリジゴクや蜘蛛みたいに獲物が来るのを待つのか。効率が悪すぎる。とても数百名は集められまい」
俺は言葉に詰まった。
「……じゃあどうやって」
「簡単だ。そそのかした奴が居るんだろ。どこの世界でもいつの時代でも悪党のやる事はそう変わらん」
そそのかす?
誰が?
「そんな事まで判るもんか。それはほれ、ここに在るんじゃないのか?」
オオムカデンダルはそう言って機械を叩いた。
0
お気に入りに追加
32
あなたにおすすめの小説
ボロ雑巾な伯爵夫人、やっと『家族』を手に入れました。~旦那様から棄てられて、ギブ&テイクでハートフルな共同生活を始めます2~
野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
ファンタジー
第二夫人に最愛の旦那様も息子も奪われ、挙句の果てに家から追い出された伯爵夫人・フィーリアは、なけなしの餞別だけを持って大雨の中を歩き続けていたところ、とある男の子たちに出会う。
言葉汚く直情的で、だけど決してフィーリアを無視したりはしない、ディーダ。
喋り方こそ柔らかいが、その実どこか冷めた毒舌家である、ノイン。
12、3歳ほどに見える彼らとひょんな事から共同生活を始めた彼女は、人々の優しさに触れて少しずつ自身の居場所を確立していく。
====
●本作は「ボロ雑巾な伯爵夫人、旦那様から棄てられて、ギブ&テイクでハートフルな共同生活を始めます。」からの続き作品です。
前作では、二人との出会い~同居を描いています。
順番に読んでくださる方は、目次下にリンクを張っておりますので、そちらからお入りください。
※アプリで閲覧くださっている方は、タイトルで検索いただけますと表示されます。
英雄になった夫が妻子と帰還するそうです
白野佑奈
恋愛
初夜もなく戦場へ向かった夫。それから5年。
愛する彼の為に必死に留守を守ってきたけれど、戦場で『英雄』になった彼には、すでに妻子がいて、王命により離婚することに。
好きだからこそ王命に従うしかない。大人しく離縁して、実家の領地で暮らすことになったのに。
今、目の前にいる人は誰なのだろう?
ヤンデレ激愛系ヒーローと、周囲に翻弄される流され系ヒロインです。
珍しくもちょっとだけ切ない系を目指してみました(恥)
ざまぁが少々キツイので、※がついています。苦手な方はご注意下さい。
伯爵夫人のお気に入り
つくも茄子
ファンタジー
プライド伯爵令嬢、ユースティティアは僅か二歳で大病を患い入院を余儀なくされた。悲しみにくれる伯爵夫人は、遠縁の少女を娘代わりに可愛がっていた。
数年後、全快した娘が屋敷に戻ってきた時。
喜ぶ伯爵夫人。
伯爵夫人を慕う少女。
静観する伯爵。
三者三様の想いが交差する。
歪な家族の形。
「この家族ごっこはいつまで続けるおつもりですか?お父様」
「お人形遊びはいい加減卒業なさってください、お母様」
「家族?いいえ、貴方は他所の子です」
ユースティティアは、そんな家族の形に呆れていた。
「可愛いあの子は、伯爵夫人のお気に入り」から「伯爵夫人のお気に入り」にタイトルを変更します。
妻がエロくて死にそうです
菅野鵜野
大衆娯楽
うだつの上がらないサラリーマンの士郎。だが、一つだけ自慢がある。
美しい妻、美佐子だ。同じ会社の上司にして、できる女で、日本人離れしたプロポーションを持つ。
こんな素敵な人が自分のようなフツーの男を選んだのには訳がある。
それは……
限度を知らない性欲モンスターを妻に持つ男の日常
幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話
妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』
『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』
『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』
大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる