見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

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三〇〇

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「どうしても化け物側に付くか……」

 俺はメルドルムに言った。

「それを決めるのは俺じゃない。皇帝陛下であり、皇太子殿下だ」

 皇位継承順で言えば、ソル殿下は第二皇子だ。
つまり第一皇子であるユピテルとか言う皇子の方が、ソル殿下よりも発言権が強いと言うことになる。
メルドルムの言う皇太子殿下とは、ソル皇子ではなくユピテル皇子を指している。

 だから、ソル皇子には止められない。

 その為に外部の人間に協力を求めたのだろう。
だが、こんな化け物を排除できる人間はそうは居ない。
そこであえて敵とも言えるネオジョルト、もっと言えばこの俺を頼ったと言う訳か。

 巻き込まれたと言えばそうだが、元はと言えば帝国とオオムカデンダルが揉めたからだ。
関係ないとは言い難い。
それに、そのお陰で俺はプニーフタールへの手がかりを得た。
その分は働かせてもらおうか。

「ヒヒヒヒヒッ!」

 ワイトが執拗に迫ってくる。
こちらの攻撃が有効打にならない事を良いことに、無防備に迫ってくる。

「ドレインタッチか。厄介だな」

 触れずに倒す方法は無いか。
俺はもう一度触手を伸ばした。

「サフィリナックスヒューイット!」

 手首からクラゲ型の触手を伸ばす。
触手はワイトの体を難なく捉えた。

「イヒヒヒヒヒヒヒッ!」

 即死性の超猛毒触手がワイトの体を締め上げる。
もちろん毒など効果がないのは承知の上だ。
だが、捕まえるには十分だ。

「うおおっ!」

 俺はそのままワイトを振り回す。
そして地面や壁に力一杯叩き付けた。

「ヒヒヒヒヒッ!イヒヒヒヒヒヒヒッ!」

 ワイトの笑い声が一段と大きさを増す。
やはり打撃などの直接攻撃はダメージが少ないのだ。

「こうなったらお前がくたばるか、俺がへばるか、勝負だ」

 俺は体力の続く限り延々とワイトを振り回した。

 バシインッ!ドシインッ!
 バコッ!ドオンッ!バキイッ!

 地面がえぐれ、泉が砕けた。
水が流れだし辺りに広がる。

「この野郎、よくもユピテル殿下の泉を!」

 メルドルムが斬りかかる。
俺はそのまま振り回したワイトをメルドルムにぶつけた。

「うおおっ!」

メルドルムは吹き飛ばされ地面を転がった。

「トラゴス!魔法だ!ワイトに魔法攻撃を!」

 俺はトラゴスに向かって叫んだ。

「……我に命令するか」

 バフォメットに化身したトラゴスが俺を睨み付けた。

「トラゴス頼む!援護してくれ!ワイトに攻撃を!」

 カルタスも叫んだ。

「……良かろう」

 バフォメットは右手を上げる。

 ピシャアアアアアアンッ!
 ゴロゴロゴロゴロッ!

 その瞬間にワイト目掛けて黒い稲妻が落ちた。
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