見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

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二九一

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 ガキッ!ギャリギャリギャリギャリギャリッ!

 目に見えないプロテクションの壁に、スクリューシェイブクロウを突き立てる。
高速回転する手首が、火花を散らして大音響を鳴らす。

「な、なんなんだッ……!?」

 メルドルムが声をあげた。

 ギャリギャリギャリッ!バキインッ!

 プロテクションが割れた。
こんな物で俺は止められない。

「どけっ!」

 俺はマザに向かって走った。

「くっ!」

 慌ててマザが剣を構えた。
させるか。

「サフィリナックスブレード!」

 両手の肘から小指の先まで、真っ赤な光の線が走る。己の両腕を刃と化した。

「むんっ!」

「ヤアァッ!」

 お互いが気合いと共に剣と腕を振るった。

 バキインッ!

 互いの攻撃がぶつかり合う。
甲高い音を発てて折れたのはマザの剣だった。

「馬鹿な!?」

「剣も藍眼鉱でこしらえるべきだったな」

 俺はマザの横をすり抜けながらそう言った。

 ザザザザザザザッ!

 足を止めずに魔導士、いや、おそらくは『カーディナル』に向かって走る。

 ボッ!

 片方のカーディナルがロッドを向けたその先から、ファイヤーボールが放たれた。

「チッ!」

 俺は舌打ちしながらも片手でそれを打ち消す。
来るのが判っていればこの程度のファイヤーボールなど、どうと言う事はない。

 しかし、全くの呪文詠唱無しにこうもポンポンとファイヤーボールを撃てるのか。
その一方で、片方のカーディナルが地面に魔方陣を描く。
速いぞ。
なんだそのスピードは。

 信じられないスピードでカーディナルは魔方陣を描ききった。

 カッ!

 魔方陣が光り、その機能が発動された事を示す。
なんだ。
何が起こる。

 ズズズ……ズズ……ッ!

 魔方陣から何かが現れようとしている。
駄目だ。
完全に現れる前に阻止しなければ。
俺は嫌な予感に襲われた。

「サイクロプスか何か知らんが、これ以上面倒くさくされてたまるか」

 俺は標的をカーディナルから魔方陣に切り替える。

 ズズズ……!

 だが、もうほとんど姿が現れていた。
なんだあれは。
人か?
あまり大きくない。
と言うか全く大きくない。
人間と同じサイズだ。

 だが、禍々しい気を放っている。
少なくとも人間じゃないのは間違いない。
黒い煙のような物がソレに吸い込まれていく。
そして形がハッキリと実体化した。

 バッ!

 背中からコウモリのような羽が大きく開かれる。

 あれは……

 実際には見たことも無いが、絵物語や聖書で読んだ悪魔にそっくりな風貌だ。
そんな馬鹿な。

「な……なんだと?」

 誰かが呟いた。
メルドルムもマザも固まっている。
カルタスとオレコも同様だった。

「こ、こんな物が城内に……ッ!?」

 言わんこっちゃない。
ソル皇子はこう言う事を恐れていたのだろう。
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