見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

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二八八

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 どかっ!

「ぐっ!」

 メルドルムがくぐもった叫び声をあげた。
俺はメルドルムの頭を抱えたまま、舞い戻った勢いでそのまま地面に倒れ込む。
そして彼の脳天を地面に叩きつけたのだ。

 スイングDDT

これもプロレス技の一つだ。
接近戦、格闘戦では多彩な技が局面によって選択出来る。
プロレスと言うのも奥が深い。

「どういう動きだ……」

 マザが助けに入るタイミングが判らずに躊躇する。
あれだけ絡み合ったら助けに入るのは難しい。
最悪の場合、仲間に攻撃が当たってしまう。
彼らを分断し、個別に倒す。
これが俺の作戦だ。

「くっ……そ!」

 メルドルムが首を押さえながらヨロヨロと立ち上がる。

「貴様!」

 メルドルムが怒りに任せて剣を突き出す。
好都合だ。

「やめるんだ!一人で掛かるな!」

 マザが叫んだがもう遅い。
剣をかわして懐に入る。
足を引っ掛けて体勢を崩す。

「くっ!」

 メルドルムが慌てて離れようとするが、そうはさせるか。
背後から相手の足に自分の足を掛ける。
逆の足を両手で掴み、抱えるように後ろへ倒れこんだ。

「くっ!また……!」

そのままの勢いで相手を抱えたまま、ゴロゴロと地面を転がり回る。

「う……く……ッ!」

メルドルムが必死にもがくが、単純なパワーでは改造人間のクラッチから逃れる事は出来ない。
相手は目が回り、同時に股裂きの痛みに襲われる。
回転のスピードが速いほど効果がある。

 これがローリングクレイドルだ。

「うぐあああっ!」

 メルドルムは叫ぶしかない。
そしてマザも助けに入ることは出来ない。
これだけ絡み合い、しかも地面を転がり回るのだ。

「くっ!離れろ!」

 苦し紛れにマザが剣を振るう。
俺はその瞬間を狙ってマザの前にメルドルムの体を持ってくる。

「くっ……!くそっ!」

 マザの剣はピタリと止まる。
止めるしかないのだ。
殺したくないのであれば。

「おかしな技を使いやがって……!」

 マザが唇を噛み締める。
悪いな。
俺も負けられないんだ。

 ぼおおおおおおおんっ!

 突然、爆発が起こった。
俺もメルドルムも空中に投げ出される。

「うおおっ!?」

「ぐああっ!」

 二人はバラバラに地面に落ちた。
当然、技は外れてしまった。
何事かまだ判らない。
だが、俺は立ち上る黒煙を見て理解した。

 魔法か。
ファイヤーボールだな。
そこまでの威力は無かった。
命中もしていない。
至近距離に着弾させて、爆風で吹き飛ばしたのだ。

 誰が?

 決まっている。
俺は奴らに目を向けた。
俺の視線の先には二人の魔導士が映っていた。
杖を構えた片方がゆっくりとこちらへ歩き出す。

 遂にお出ましか。
俺は不思議と喜びを感じていた。
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