見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

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二八七

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 俺は一瞬面食らったが、これを左手で払いのける。
マザの剣だ。
大柄なメルドルムの影になって、小柄なマザの剣が矢のように飛び出してくる。
メルドルムの初太刀も常人には見切れない筈だ。
そこへ、二の太刀が仕込まれているとは。
この二人は共闘するのに慣れている。

 一+一が二ではなく、三にも四にもなっている。
コンビネーションの意味はここにある。

「それぞれでも十分に強いのにか……恐ろしいな」

 俺は彼らの底の見えない強さに驚いたが、変身した以上負けるわけにはいかない。
たぶんオオムカデンダルも見ている筈だ。

「これもかわすのか。やるな」

 メルドルムの頬を汗が伝う。
驚いているのは向こうも同じか。
ならば。

「今度は俺の番だ!」

 そう叫んで今度は俺が攻撃に転じる。
さっきと同じく、素早いパンチを連打した。

 ガガガガガガ!

「う!がっ!ごっ!ぐっ!ぶふっ!」

 今度は全弾ヒットした。
さすがにガードも間に合わない。
メルドルムの体は宙に持ち上がり、もんどりうって地面を転がった。

 ドサッ!ゴロゴロ

 だが、致命傷にはまだ遠い。
やはり藍眼鉱だ。
あの鎧が将軍の命を救っている。

「ぐっ……くそっ!化け物か」

 メルドルムが剣を地に突いて立ち上がる。
お前に化物呼ばわりされたくない。

「メルドルム。コンビネーションでなければ無理だ」

 マザがそう言いながらメルドルムの横に立った。

「将軍が一人で勝てない相手とはな……傷つくぜ」

 俺だって傷ついてる。
改造人間と正面から戦える強さには嫉妬も覚える。

「いくよ、メルドルム!」

「ああ!」

 二人は同時に左右から攻め立てる。
大振りの威力は捨て、小さく隙のない連打で主導権を渡さないつもりだ。
打ち合わせなしで、即興でこれが出来るのか。

 俺は二人の攻撃を両手で別々にさばく。
メルドルムの剣を頭を傾けてかわす。
同時にマザの突きを左手で払い、そのまま剣に沿ってパンチをはわせる。

「おっと!」

 マザがギリギリでこれをかわす。
入れ替わりにメルドルムの前蹴りが脇腹にヒットした。
だが、構わず相撃ち気味に俺もキックを繰り出す。

 ドカッ!

 お互いに腹を押さえて後ろへたたらを踏んだ。
まだだ。
なんとか踏みとどまって、すぐに前へ出る。

「オオッ!」

 メルドルムが吠える。
雄叫びと共に三度兜割りだ。
くそ、体勢が不完全でこれはかわせない。

 俺は苦し紛れに腕を盾にして前へ突き出す。

 ガキッ!

 兜割りが腕で遮られる。

「なにっ!」

 メルドルムが驚きの声をあげた。
俺は間髪入れずに剣を弾き返し、そのまま懐に入ってメルドルムの首に腕を巻き付けた。

「うぬっ!なにを……!」

 そのまま体をメルドルムに預け、彼を支点にして振り子のように回転し舞い戻る。
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