見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

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二八三

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「貴様たち、何者だ」

 将軍の一人が言った。
髪の毛が逆立っている。
寝癖と言うわけではなさそうだ。
もう一人の将軍は幼く見える。
まだ十代かそこらか。
こんな歳で将軍職に就けるものなのか。

 普通ならここは下手に出るところだ。
帝国の将軍ともなれば、地位も名誉も一介の冒険者とは比べ物にならない。
だがどうせこの後、あの魔導士たちの正体次第では戦闘になるのだ。
いや、コイツらがネオジョルト討伐軍である以上、絶対に戦わねばならない。

 敬語など使っている場合ではない。

「……そっちの魔導士に聞きたいことがある」

 俺は魔導士を見据えて言った。

「聞いているのはこっちだぞ」

 髪の逆立った将軍が俺の質問を打ち消す。

「答えろ。何者だ」

 これでは話が進まない。
こう言うタイプは力でねじ伏せないと、絶対に退かないタイプだ。

「……誰でも良いだろ。こっちは気が立っているんだ。ぶちのめしてでも質問させてもらう」

 俺は早々とやる気になった。
妹の安否が掛かっている。
悪いが優しくはしない。

「ふん……不届き者のくせに大胆な。皇帝の城に無断で上がり込んだら死罪と言うのは知っていような」

「知らんな。回りくどいのはいらん。俺は急いでいる。掛かってこい」

 将軍の売り言葉を買って前へ出る。

「貴様、剣士だな。剣を抜け」

 賊相手にずいぶん寛大だな。
問答無用で斬り捨てるかと思ったが。

「心遣いは感謝するが、剣はない」

「なんだと?」

 このやり取りは、実は結構恥ずかしい。
カルタスにも言われたが、剣を持たない剣士などいない。
剣士失格だ。
以前の俺でも同じことを思っただろう。

「ふざけているのか……」

「いや、本気だ。事情はあるが、こちらの勝手な都合だ。相手には関係の無いこと。遠慮はいらん、気にするな」

 くそっ、そうは言ったがやっぱり恥ずかしい。
なまくらで良いから買っておくべきだった。

「……将軍と知っていて舐めた口を利けるとは思わんが、腕があっても素手では……貴様、死んだぞ」

 怒っているようには見えない。
努めて冷静だ。
逆上するタイプではないらしい。
見掛けによらんな。

 俺は素手で構えた。
実際に殴ってやれば相手の方が理解するだろう。
素手でも手加減無用だと。

「三人まとめて掛かって来い。棺に入れて家に帰してやる」

「さすが帝国の将軍。実力は知っているが、これほど自信があるとは……」

 カルタスが笑みを浮かべる。
コイツ、緊張している?
固唾を飲み込む音が聞こえた。

「戦闘は私も久しぶりな上に、相手が将軍じゃ緊張しちゃうわ」

 オレコが殊勝な事を言ったが、どこまで本気か。
クネクネしながら言うのを止めろ。
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