283 / 826
二八三
しおりを挟む
「貴様たち、何者だ」
将軍の一人が言った。
髪の毛が逆立っている。
寝癖と言うわけではなさそうだ。
もう一人の将軍は幼く見える。
まだ十代かそこらか。
こんな歳で将軍職に就けるものなのか。
普通ならここは下手に出るところだ。
帝国の将軍ともなれば、地位も名誉も一介の冒険者とは比べ物にならない。
だがどうせこの後、あの魔導士たちの正体次第では戦闘になるのだ。
いや、コイツらがネオジョルト討伐軍である以上、絶対に戦わねばならない。
敬語など使っている場合ではない。
「……そっちの魔導士に聞きたいことがある」
俺は魔導士を見据えて言った。
「聞いているのはこっちだぞ」
髪の逆立った将軍が俺の質問を打ち消す。
「答えろ。何者だ」
これでは話が進まない。
こう言うタイプは力でねじ伏せないと、絶対に退かないタイプだ。
「……誰でも良いだろ。こっちは気が立っているんだ。ぶちのめしてでも質問させてもらう」
俺は早々とやる気になった。
妹の安否が掛かっている。
悪いが優しくはしない。
「ふん……不届き者のくせに大胆な。皇帝の城に無断で上がり込んだら死罪と言うのは知っていような」
「知らんな。回りくどいのはいらん。俺は急いでいる。掛かってこい」
将軍の売り言葉を買って前へ出る。
「貴様、剣士だな。剣を抜け」
賊相手にずいぶん寛大だな。
問答無用で斬り捨てるかと思ったが。
「心遣いは感謝するが、剣はない」
「なんだと?」
このやり取りは、実は結構恥ずかしい。
カルタスにも言われたが、剣を持たない剣士などいない。
剣士失格だ。
以前の俺でも同じことを思っただろう。
「ふざけているのか……」
「いや、本気だ。事情はあるが、こちらの勝手な都合だ。相手には関係の無いこと。遠慮はいらん、気にするな」
くそっ、そうは言ったがやっぱり恥ずかしい。
なまくらで良いから買っておくべきだった。
「……将軍と知っていて舐めた口を利けるとは思わんが、腕があっても素手では……貴様、死んだぞ」
怒っているようには見えない。
努めて冷静だ。
逆上するタイプではないらしい。
見掛けによらんな。
俺は素手で構えた。
実際に殴ってやれば相手の方が理解するだろう。
素手でも手加減無用だと。
「三人まとめて掛かって来い。棺に入れて家に帰してやる」
「さすが帝国の将軍。実力は知っているが、これほど自信があるとは……」
カルタスが笑みを浮かべる。
コイツ、緊張している?
固唾を飲み込む音が聞こえた。
「戦闘は私も久しぶりな上に、相手が将軍じゃ緊張しちゃうわ」
オレコが殊勝な事を言ったが、どこまで本気か。
クネクネしながら言うのを止めろ。
将軍の一人が言った。
髪の毛が逆立っている。
寝癖と言うわけではなさそうだ。
もう一人の将軍は幼く見える。
まだ十代かそこらか。
こんな歳で将軍職に就けるものなのか。
普通ならここは下手に出るところだ。
帝国の将軍ともなれば、地位も名誉も一介の冒険者とは比べ物にならない。
だがどうせこの後、あの魔導士たちの正体次第では戦闘になるのだ。
いや、コイツらがネオジョルト討伐軍である以上、絶対に戦わねばならない。
敬語など使っている場合ではない。
「……そっちの魔導士に聞きたいことがある」
俺は魔導士を見据えて言った。
「聞いているのはこっちだぞ」
髪の逆立った将軍が俺の質問を打ち消す。
「答えろ。何者だ」
これでは話が進まない。
こう言うタイプは力でねじ伏せないと、絶対に退かないタイプだ。
「……誰でも良いだろ。こっちは気が立っているんだ。ぶちのめしてでも質問させてもらう」
俺は早々とやる気になった。
妹の安否が掛かっている。
悪いが優しくはしない。
「ふん……不届き者のくせに大胆な。皇帝の城に無断で上がり込んだら死罪と言うのは知っていような」
「知らんな。回りくどいのはいらん。俺は急いでいる。掛かってこい」
将軍の売り言葉を買って前へ出る。
「貴様、剣士だな。剣を抜け」
賊相手にずいぶん寛大だな。
問答無用で斬り捨てるかと思ったが。
「心遣いは感謝するが、剣はない」
「なんだと?」
このやり取りは、実は結構恥ずかしい。
カルタスにも言われたが、剣を持たない剣士などいない。
剣士失格だ。
以前の俺でも同じことを思っただろう。
「ふざけているのか……」
「いや、本気だ。事情はあるが、こちらの勝手な都合だ。相手には関係の無いこと。遠慮はいらん、気にするな」
くそっ、そうは言ったがやっぱり恥ずかしい。
なまくらで良いから買っておくべきだった。
「……将軍と知っていて舐めた口を利けるとは思わんが、腕があっても素手では……貴様、死んだぞ」
怒っているようには見えない。
努めて冷静だ。
逆上するタイプではないらしい。
見掛けによらんな。
俺は素手で構えた。
実際に殴ってやれば相手の方が理解するだろう。
素手でも手加減無用だと。
「三人まとめて掛かって来い。棺に入れて家に帰してやる」
「さすが帝国の将軍。実力は知っているが、これほど自信があるとは……」
カルタスが笑みを浮かべる。
コイツ、緊張している?
固唾を飲み込む音が聞こえた。
「戦闘は私も久しぶりな上に、相手が将軍じゃ緊張しちゃうわ」
オレコが殊勝な事を言ったが、どこまで本気か。
クネクネしながら言うのを止めろ。
0
お気に入りに追加
33
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
王が気づいたのはあれから十年後
基本二度寝
恋愛
王太子は妃の肩を抱き、反対の手には息子の手を握る。
妃はまだ小さい娘を抱えて、夫に寄り添っていた。
仲睦まじいその王族家族の姿は、国民にも評判がよかった。
側室を取ることもなく、子に恵まれた王家。
王太子は妃を優しく見つめ、妃も王太子を愛しく見つめ返す。
王太子は今日、父から王の座を譲り受けた。
新たな国王の誕生だった。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
秘密結社ニヨル世界征服活動
uji-na
ファンタジー
【カムロキ】は偉大なる神州日本の復古を謳い、やがて全世界を手中に収めんと企む秘密組織である。
世界征服計画の第一段階として手始めに議事堂の占領と議員の洗脳を行うべく、潜伏中の地下から地表の市街地へと向かった秘密結社カムロキ。ところが、その先に待っていたものは奇妙な生物達が溢れる不思議な森だった。見知らぬ森に奇怪な生物の群れ、本来の目的地とは似ても似つかぬ場所。世界征服計画に早くも暗雲が立ち込める中、まずは情報を集めるためカムロキは調査に乗り出すのであった。
もう死んでしまった私へ
ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。
幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか?
今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!!
ゆるゆる設定です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる