見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

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二六八

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「いや、お前は店があるだろう」

「臨時休業だ」

「トラゴスはどうなる」

「う……それは……」

 そうだろう。
トラゴスが居る以上、お前は留守番兼子守りだ。

「じゃあ、私も行きます」

 トラゴスが突然口を挟む。
何でそうなる。

「ピクニックに行くわけじゃない。連れては行けない」

 俺はトラゴスに釘を刺した。

「判ってます。でもカルタス様の迷惑になりたくないのです」

 俺の迷惑は良いのか。
大人しく二人で留守番しててくれれば、誰にも迷惑は掛からないんだが。

「君が故郷に帰る時まで無事で居てもらわなければ困る。俺も一緒に行く予定なんだからな。カルタスと待っててくれ」

 俺はトラゴスを説得した。

「私も役に立てます。大丈夫です」

 意外と頑固だな。
俺はトラゴスに対する認識を改めた。

「役に立てますって……」

 俺は頭を掻いた。

「まあまあ、トラゴスもこう言っている事だし彼女に免じて許してやってくれよ」

 お前は留守番だと言っている。
いや、トラゴスもだが。

「……判った、誤解があるようだから、この際言っておこう。俺はメチャクチャ強い。誰の助けも要らないほどにだ。ハッキリ言って全員足手まといだから付いてくるな」

 俺は仕方なく本心をぶちまけた。
このままでは、らちが明かない。

「ほーお」

 カルタスがおかしな声をあげた。

「俺やオレコよりもか?俺は冒険者では無いが、実力的にはブラックナイトクラスと変わらんぞ」

 カルタスの表情が険しくなっている。
プライドを刺激してしまったか。
だが、これは事実だ。

「言いたくは無かったがその通りだ。だから来なくていい」

「お前、剣士だよな?剣も盾も持ってねえじゃねえか」

「この前、丁度破損したんだよ。いずれ買い直すが今は時間がない」

「ケッ……剣士が剣も持たずに戦いに赴くだと?戦いをなめんじゃねえ。ましてや俺たちより強いだなんて……このホラ吹きめ!」

 面倒くさい男だ。
あれだけ豪放磊落な性格なのに、腕っぷしに関してだけは譲れない物があるらしい。

 オレコは黙っていたが、興味深そうに俺を見ている。
俺を値踏みしているのか。

「……口で言っても判らんか。じゃあ試してみるか?」

 俺はカルタスを真っ直ぐに見る。
カルタスも俺の視線を真っ向から受け止める。

「ふ」

 ふ?

「ふ……ふははははは!」

 カルタスが突然馬鹿笑いし出した。

「良いじゃねえか。本来ならそう言う冗談は嫌いだが、お前は何かを予感させる。その物腰、立ち振舞、自信がなければ嘘でもそこまでは出来まい」

 なんだ?
つまり何が言いたい。

「益々俺は付いて行きたくなったぜ。お前の言葉が本当かどうか確かめてやる。なあに心配するな、嘘でもお前を責めやしないし、トラゴスも俺がちゃんと守るからよ」
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