見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

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二五四

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「まあ、いいさ。顔のことは言われ慣れてるよ」

 カルタスはそう言って小さくため息を吐いた。

「カルタスはね、元傭兵なのよ」

 傭兵か。
なるほど、そっちの印象は見た目通りだ。
なぜ花屋なんかしてるのか。
傭兵より儲かる花屋とは何だ?
花に武器を紛れ込ませて密輸でもしてんのか。

「してねえよ」

 カルタスが強く否定した。

「普通の花屋だよ」

 その花屋が昼間っから店を放って服屋に何の用だ。

「コイツとは昔、冒険者だった頃の腐れ縁だ」

 カルタスがオレコを親指で指した。

「……昔の話よ。マズルとはパーティーを組んでたの。でもせっかくブラックナイトクラスに昇級したのに、突然『警備隊に入る』とか言い出しちゃって。ホント、訳判んない」

 オレコが首をすくめる。
マズルとパーティーを組んでいたのか。

「アンタもブラックナイトに昇級したのか」

 俺が尋ねるとオレコはウインクで返した。

「そうよ。私はレンジャー、マズルは剣士。カルタスは傭兵として何度もモンスター討伐作戦で顔を会わせたのよ」

 そう言うことか。
聞いてみないと判らない物だ。
元レンジャーが情報屋とは、適材適所な感じもする。

「マズルが辞めても冒険者を続ければ良かったんじゃないのか?」

 オレコが首を横に振った。

「そうなんだけどね、マズルとは馬が合ったのよ。他の冒険者とパーティー組むって考えた時、なんかつまんないなって思っちゃって」

 俺は誰とでもパーティーを組んでいた。
その気持ちはまだ判らない。
ただ一人、レンジャーの彼女を除いては。
彼女が冒険者を辞めると言ったら、俺は一緒に辞める気になれるのだろうか。

「ま、おしゃべりはこのくらいにして、ワタシは行ってくるわ」

 オレコは今度こそ店を出て行った。

「しゃーねぇなあ。じゃあ、アンタで良いや」

 カルタスが頭を掻きながら俺の背中を押した。

「お、おい。何の話だ?」

 俺は驚いてカルタスの顔を見た。
顔を見て二度驚きそうになる。
どう見ても何人か殺してる顔だ。
傭兵上がりなら当然何人か殺してるんだろうが。

「人は殺してねーよ。モンスター専門だ」

 カルタスが笑った。
本当か?
内心まだ疑っていた。

「そんな事より、どこへ行こうってんだ?」

 俺はカルタスに尋ねた。

「来てくれりゃ判る」

 カルタスはそう言うばかりで答えない。
なんだ?トラブルか?
しかしトラブルで他人の助けが要るような男ではあるまい。
なんなら相手を殺して埋めてしまいそうだ。
まさか、埋める手伝いか?

「お前、ホントいい加減にしろよ」

 カルタスが苦笑いする。
怒らないのを見ると、意外といいヤツなのかも知れないなと思った。

 大通り沿いにしばらく歩くと、花屋が見えてきた。
この店か?

「そうだ」

 カルタスはそう言って店の中へと俺を押し込んだ。
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