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二二三
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これはゾンビーではない。
だがライカンスロープでもない。
じゃあ、何なのだ。
俺の知識に該当するモンスターはいない。
グールのようでもある。
だがグールはグールと言う種族だ。
人間がグール化することはない。
その時、俺はひとつの事を思い出した。
「あの時の……」
俺がオオムカデンダルと出会うきっかけとなった、あのモンスター。
名前も知らない。
種族も判らない。
叩いても斬ってもお構いなしに襲い掛かってくる、あの木こり。
「似ている……」
全く同じとは言えないかもしれないが、似ていると思った。
だとしたら、これはプニーフタールに繋がる道なのか。
俺の体の震えはピタリと止まった。
怒りが、憤怒が、沸き上がる。
彼らにではない。
プニーフタールを信奉する狂信者どもにだ。
「済まん。許してくれとは言わん。恨んでくれていい」
俺はもう一度彼らに詫びると、今度は迷いなく構えをとった。
あの時、オオムカデンダルは木こりの首をへし折って、そのまま引きちぎった。
首を胴体と切り離せば、生きていようが死んでいようが関係無いと。
どうせもう動けないのだからと、そう言った。
首だ。
首を切り離す。
「サフィリナックスブレード!」
俺の肘から小指の付け根まで、膝から爪先まで、赤く光る線が現れる。
「はあっ!」
気合い一閃、水平に腕を薙ぎ払う。
同時に二人の首が飛んだ。
これなら。
これで全員の首を切り離す。
俺は獣のように身を踊らせて、手当たり次第に彼らの首をはねた。
血しぶきが辺りに渦巻く。
風に舞って鮮血が赤い煙となる。
ざしゅ!
ばしゅ!
ずばっ!
辺り一面に転がった頭部が呻き声をあげる。
だが、もう俺に迷いは無かった。
こうするしかないのだ。
どうせ俺には何も助けられない。
これからも、こんな事が何度もあるのだろう。
その度に、俺はこうするしかないのだ。
俺はプニーフタールに呪われている。
だったら呪われついでに彼らの恨みも引き受けてやる。
そして、奴らに、狂信者どもに、それを全て支払わせる。
「ちょっと凄いわね……」
令子が一部始終を見て呟いた。
「じゃあ、私もちょっとだけ」
ぎゃあああああ!
令子がそう言うと、村人たちの群れから絶叫が轟いた。
ああああああっ!
あがあああああっ!
同時にゴリッ!ボキッ!と鈍い嫌な音が聞こえる。
ゴリッ!
ゴキッ!
バキッ!
ゴリゴリゴリッ!
いったい何の音なのか。
ここからではまだ、令子の姿は見えない。
まだたくさんの群れに囲まれた状態だ。
俺は気にしつつも、襲い来る群れを次々に返り討ちにした。
もう、残りは数名しか残っていない。
ばしゅ!
「ぎいっ!」
はねた首がおかしな声を発しながら地面に落ちた。
だがライカンスロープでもない。
じゃあ、何なのだ。
俺の知識に該当するモンスターはいない。
グールのようでもある。
だがグールはグールと言う種族だ。
人間がグール化することはない。
その時、俺はひとつの事を思い出した。
「あの時の……」
俺がオオムカデンダルと出会うきっかけとなった、あのモンスター。
名前も知らない。
種族も判らない。
叩いても斬ってもお構いなしに襲い掛かってくる、あの木こり。
「似ている……」
全く同じとは言えないかもしれないが、似ていると思った。
だとしたら、これはプニーフタールに繋がる道なのか。
俺の体の震えはピタリと止まった。
怒りが、憤怒が、沸き上がる。
彼らにではない。
プニーフタールを信奉する狂信者どもにだ。
「済まん。許してくれとは言わん。恨んでくれていい」
俺はもう一度彼らに詫びると、今度は迷いなく構えをとった。
あの時、オオムカデンダルは木こりの首をへし折って、そのまま引きちぎった。
首を胴体と切り離せば、生きていようが死んでいようが関係無いと。
どうせもう動けないのだからと、そう言った。
首だ。
首を切り離す。
「サフィリナックスブレード!」
俺の肘から小指の付け根まで、膝から爪先まで、赤く光る線が現れる。
「はあっ!」
気合い一閃、水平に腕を薙ぎ払う。
同時に二人の首が飛んだ。
これなら。
これで全員の首を切り離す。
俺は獣のように身を踊らせて、手当たり次第に彼らの首をはねた。
血しぶきが辺りに渦巻く。
風に舞って鮮血が赤い煙となる。
ざしゅ!
ばしゅ!
ずばっ!
辺り一面に転がった頭部が呻き声をあげる。
だが、もう俺に迷いは無かった。
こうするしかないのだ。
どうせ俺には何も助けられない。
これからも、こんな事が何度もあるのだろう。
その度に、俺はこうするしかないのだ。
俺はプニーフタールに呪われている。
だったら呪われついでに彼らの恨みも引き受けてやる。
そして、奴らに、狂信者どもに、それを全て支払わせる。
「ちょっと凄いわね……」
令子が一部始終を見て呟いた。
「じゃあ、私もちょっとだけ」
ぎゃあああああ!
令子がそう言うと、村人たちの群れから絶叫が轟いた。
ああああああっ!
あがあああああっ!
同時にゴリッ!ボキッ!と鈍い嫌な音が聞こえる。
ゴリッ!
ゴキッ!
バキッ!
ゴリゴリゴリッ!
いったい何の音なのか。
ここからではまだ、令子の姿は見えない。
まだたくさんの群れに囲まれた状態だ。
俺は気にしつつも、襲い来る群れを次々に返り討ちにした。
もう、残りは数名しか残っていない。
ばしゅ!
「ぎいっ!」
はねた首がおかしな声を発しながら地面に落ちた。
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