見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

文字の大きさ
上 下
223 / 826

二二三

しおりを挟む
 これはゾンビーではない。
だがライカンスロープでもない。
じゃあ、何なのだ。
俺の知識に該当するモンスターはいない。
グールのようでもある。
だがグールはグールと言う種族だ。
人間がグール化することはない。

 その時、俺はひとつの事を思い出した。

「あの時の……」

 俺がオオムカデンダルと出会うきっかけとなった、あのモンスター。
名前も知らない。
種族も判らない。

 叩いても斬ってもお構いなしに襲い掛かってくる、あの木こり。

「似ている……」

 全く同じとは言えないかもしれないが、似ていると思った。
だとしたら、これはプニーフタールに繋がる道なのか。

 俺の体の震えはピタリと止まった。
怒りが、憤怒が、沸き上がる。
彼らにではない。
プニーフタールを信奉する狂信者どもにだ。

「済まん。許してくれとは言わん。恨んでくれていい」

 俺はもう一度彼らに詫びると、今度は迷いなく構えをとった。

 あの時、オオムカデンダルは木こりの首をへし折って、そのまま引きちぎった。
首を胴体と切り離せば、生きていようが死んでいようが関係無いと。
どうせもう動けないのだからと、そう言った。

 首だ。
首を切り離す。

「サフィリナックスブレード!」

 俺の肘から小指の付け根まで、膝から爪先まで、赤く光る線が現れる。

「はあっ!」

 気合い一閃、水平に腕を薙ぎ払う。
同時に二人の首が飛んだ。

 これなら。
これで全員の首を切り離す。
俺は獣のように身を踊らせて、手当たり次第に彼らの首をはねた。

 血しぶきが辺りに渦巻く。
風に舞って鮮血が赤い煙となる。

 ざしゅ!
ばしゅ!
ずばっ!

辺り一面に転がった頭部が呻き声をあげる。
だが、もう俺に迷いは無かった。
こうするしかないのだ。
どうせ俺には何も助けられない。
これからも、こんな事が何度もあるのだろう。
その度に、俺はこうするしかないのだ。

 俺はプニーフタールに呪われている。

だったら呪われついでに彼らの恨みも引き受けてやる。
そして、奴らに、狂信者どもに、それを全て支払わせる。

「ちょっと凄いわね……」

 令子が一部始終を見て呟いた。

「じゃあ、私もちょっとだけ」

 ぎゃあああああ!

 令子がそう言うと、村人たちの群れから絶叫が轟いた。

 ああああああっ!
あがあああああっ!

 同時にゴリッ!ボキッ!と鈍い嫌な音が聞こえる。

 ゴリッ!
ゴキッ!
バキッ!
ゴリゴリゴリッ!

 いったい何の音なのか。
ここからではまだ、令子の姿は見えない。
まだたくさんの群れに囲まれた状態だ。

 俺は気にしつつも、襲い来る群れを次々に返り討ちにした。
もう、残りは数名しか残っていない。

 ばしゅ!

「ぎいっ!」

 はねた首がおかしな声を発しながら地面に落ちた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ボロ雑巾な伯爵夫人、やっと『家族』を手に入れました。~旦那様から棄てられて、ギブ&テイクでハートフルな共同生活を始めます2~

野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
ファンタジー
 第二夫人に最愛の旦那様も息子も奪われ、挙句の果てに家から追い出された伯爵夫人・フィーリアは、なけなしの餞別だけを持って大雨の中を歩き続けていたところ、とある男の子たちに出会う。  言葉汚く直情的で、だけど決してフィーリアを無視したりはしない、ディーダ。  喋り方こそ柔らかいが、その実どこか冷めた毒舌家である、ノイン。    12、3歳ほどに見える彼らとひょんな事から共同生活を始めた彼女は、人々の優しさに触れて少しずつ自身の居場所を確立していく。 ==== ●本作は「ボロ雑巾な伯爵夫人、旦那様から棄てられて、ギブ&テイクでハートフルな共同生活を始めます。」からの続き作品です。  前作では、二人との出会い~同居を描いています。  順番に読んでくださる方は、目次下にリンクを張っておりますので、そちらからお入りください。  ※アプリで閲覧くださっている方は、タイトルで検索いただけますと表示されます。

ロリっ子がおじさんに種付けされる話

オニオン太郎
大衆娯楽
なろうにも投稿した奴です

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

英雄になった夫が妻子と帰還するそうです

白野佑奈
恋愛
初夜もなく戦場へ向かった夫。それから5年。 愛する彼の為に必死に留守を守ってきたけれど、戦場で『英雄』になった彼には、すでに妻子がいて、王命により離婚することに。 好きだからこそ王命に従うしかない。大人しく離縁して、実家の領地で暮らすことになったのに。 今、目の前にいる人は誰なのだろう? ヤンデレ激愛系ヒーローと、周囲に翻弄される流され系ヒロインです。 珍しくもちょっとだけ切ない系を目指してみました(恥) ざまぁが少々キツイので、※がついています。苦手な方はご注意下さい。

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

伯爵夫人のお気に入り

つくも茄子
ファンタジー
プライド伯爵令嬢、ユースティティアは僅か二歳で大病を患い入院を余儀なくされた。悲しみにくれる伯爵夫人は、遠縁の少女を娘代わりに可愛がっていた。 数年後、全快した娘が屋敷に戻ってきた時。 喜ぶ伯爵夫人。 伯爵夫人を慕う少女。 静観する伯爵。 三者三様の想いが交差する。 歪な家族の形。 「この家族ごっこはいつまで続けるおつもりですか?お父様」 「お人形遊びはいい加減卒業なさってください、お母様」 「家族?いいえ、貴方は他所の子です」 ユースティティアは、そんな家族の形に呆れていた。 「可愛いあの子は、伯爵夫人のお気に入り」から「伯爵夫人のお気に入り」にタイトルを変更します。

生贄にされた先は、エロエロ神世界

雑煮
恋愛
村の習慣で50年に一度の生贄にされた少女。だが、少女を待っていたのはしではなくどエロい使命だった。

妻がエロくて死にそうです

菅野鵜野
大衆娯楽
うだつの上がらないサラリーマンの士郎。だが、一つだけ自慢がある。 美しい妻、美佐子だ。同じ会社の上司にして、できる女で、日本人離れしたプロポーションを持つ。 こんな素敵な人が自分のようなフツーの男を選んだのには訳がある。 それは…… 限度を知らない性欲モンスターを妻に持つ男の日常

処理中です...