見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

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二一二

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 いったい、何の目的で行動しているのか。
狂信者の気持ちなど判る筈もないが、大体は『世界に破滅をッ!』なんて事を言っている。
これはあくまで俺のイメージだ。

 そんな奴らの行き先を推測するのは無理だろう。
つまり起きた事件の後を追うしか今のところ手立てが無いと言うことか。

 こうなってくると情報収集が鍵だ。
徹底的に情報収集して、不可思議な事件を追う。
今後の基本方針はこれだ。
後手に回らざるをえないのがもどかしい。

 そう言えば、あの首だけヴァンパイアはどうしたんだろうか。
突然俺はヴァンパイアが気になった。
結局奴はプニーフタールとは関係無かったようだ。
タイミング的に紛らわしいが、偶然だろう。

 とは言え、あれで諦めるとも思えなかった。

「まあ、首だけで何が出来るかと言われれば……」

 そこまで口に出して、俺は止めた。
出来ることなど何もない。
首だけでも飛んではいたな。
あと消えたりも出来るのだろうか。
だとしたら、せいぜい万引きくらいか。

 こうなると夜の帝王も形無しだな。
俺は気の毒に思いつつも、込み上げる笑いを圧し殺した。

 こんこん

 小一時間ほど経った頃、部屋のドアをノックする音がした。

「開いている」

 俺はドアに向かって声を掛けた。

 ガチャ

 ドアが開いて顔を出したのはマズルだった。

「何か用か」

 俺はマズルに尋ねた。

「それはこっちのセリフだ。町に何の用だ」

「随分だな。用がなければ町にも来てはいかんのか」

「それは相手による」

 そりゃそうだろうが、俺にだって都合と言う物がある。

「斡旋所に確認を頼みに来ただけだ。用が済んだら出て行くさ」

「斡旋所?そうか、お前冒険者を装っているんだったな」

「別に装っている訳じゃない。俺は本当に冒険者だ」

 マズルが眉間にシワを寄せる。

「お前は山賊の一味だろ。今さら俺に嘘を言うのか」

 面倒な事になった。
オオムカデンダルが『面倒だから説明はしない』と、いつも言う気持ちが判ってきた。

「お前は誤解している。まあ、別にその誤解を解こうとは思わないが、俺は嘘をついている訳じゃない。説明すれば長くなる」

「説明しろ」

 は?

「説明されなければ判らん」

「聞いてどうする?」

「それを判断する為に説明しろ」

 理路整然としているな。
こんなヤツだっけ。

 仕方なく俺は説明できる部分だけを説明した。
それでもかなりの時間を要したのは言うまでもない。

「……じゃあ何か、お前はプニーフタールと狂信者たちを追うために彼らの仲間になったと」

「そうさ。言うなれば俺は悪魔と契約して魂を売ったに等しい。だから言い訳はしない。目的を達成する為には手段は選ばん」
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