205 / 826
二〇五
しおりを挟む
「かはあっ!」
息と同時に声が漏れる。
頭の半分が岩だらけの地面にめり込んだ。
首から背骨までダメージがある。
「んっふっふっ。これがDDTだ」
そう言ってオオムカデンダルが素早く立ち上がった。
俺も地面から頭を引き抜いて立ち上がる。
「……なんだ……今のは」
頭を掴まえて地面に叩きつける。
単純な技だ。
「だが、お前はかわせなかった。シンプルさ故に応用が利く。どんな場面からでも狙える」
確かにこんな技を生身の人間が食らったら、ひとたまりもあるまい。
「おらっ!もういっちょ!まだまだ行くぞ!」
オオムカデンダルがいつにも増してやる気を出している。
さっき『俺の好きなプロレス』とか言っていたな。
コイツ、さては楽しんでいるだけだろ。
それから夜まで俺はみっちりと『プロレス』なるものを教え込まれた。
無敵の肉体を得ても相手が同じ条件のオオムカデンダルでは意味がない。
キッチリとダメージは蓄積される。
くそ……ムチャクチャしやがって。
「まあ、この位やれば十分だろ。生身ならこうはいかない」
オオムカデンダルは満足そうに言った。
だが、確かに何度も食らって覚えるのにこの肉体はうってつけだ。
何ヵ月も掛かるような特訓も、この肉体なら半日もあれば習得できる。
相手がオオムカデンダルでさえなければ、よりパーフェクトだ。
「も……もういいか?明日には……出発したいんだが……」
俺はボロボロになりながら息も絶え絶えで話した。
「おう、いいとも。なんか面白いことがあったら連絡しろよ」
「お……面白いことって……?」
「なんでもだ。判るだろ?」
判るが、判りたくない。
要はトラブルって事だ。
好奇心旺盛だとは聞いていたが、いささか異常なレベルだろ。
世にこんなにもトラブル好きが他に居るだろうか。
「なるべくなら……お、面白いことには出会いたくないんだが……」
「なに言ってんだ。お前を旅立たせる理由はそれしかないだろ?」
隠しもしないのか。
「この世界は俺が思っていたよりも面白い。こんな事ならもっと早く世に出るべきだった」
俺はアンタらを世に引き戻した事を後悔している。
だが、彼らに出会わなければプニーフタールの事も判らなかったし、あの時点でみんな死んでいた。
人生なんて判らんもんだな。
「俺は……プニーフタールを追うだけだ」
「判ってるよ。お前にゃ悪いが、それも俺の面白いことだ」
そう言うとオオムカデンダルがへへっと笑った。
ムカつく所の筈だが、彼が言うと妙に納得してしまう。
これも彼の性格が成せるわざか。
そもそもムカついた所で、もう怒る気力もない程に俺は疲れきっていた。
息と同時に声が漏れる。
頭の半分が岩だらけの地面にめり込んだ。
首から背骨までダメージがある。
「んっふっふっ。これがDDTだ」
そう言ってオオムカデンダルが素早く立ち上がった。
俺も地面から頭を引き抜いて立ち上がる。
「……なんだ……今のは」
頭を掴まえて地面に叩きつける。
単純な技だ。
「だが、お前はかわせなかった。シンプルさ故に応用が利く。どんな場面からでも狙える」
確かにこんな技を生身の人間が食らったら、ひとたまりもあるまい。
「おらっ!もういっちょ!まだまだ行くぞ!」
オオムカデンダルがいつにも増してやる気を出している。
さっき『俺の好きなプロレス』とか言っていたな。
コイツ、さては楽しんでいるだけだろ。
それから夜まで俺はみっちりと『プロレス』なるものを教え込まれた。
無敵の肉体を得ても相手が同じ条件のオオムカデンダルでは意味がない。
キッチリとダメージは蓄積される。
くそ……ムチャクチャしやがって。
「まあ、この位やれば十分だろ。生身ならこうはいかない」
オオムカデンダルは満足そうに言った。
だが、確かに何度も食らって覚えるのにこの肉体はうってつけだ。
何ヵ月も掛かるような特訓も、この肉体なら半日もあれば習得できる。
相手がオオムカデンダルでさえなければ、よりパーフェクトだ。
「も……もういいか?明日には……出発したいんだが……」
俺はボロボロになりながら息も絶え絶えで話した。
「おう、いいとも。なんか面白いことがあったら連絡しろよ」
「お……面白いことって……?」
「なんでもだ。判るだろ?」
判るが、判りたくない。
要はトラブルって事だ。
好奇心旺盛だとは聞いていたが、いささか異常なレベルだろ。
世にこんなにもトラブル好きが他に居るだろうか。
「なるべくなら……お、面白いことには出会いたくないんだが……」
「なに言ってんだ。お前を旅立たせる理由はそれしかないだろ?」
隠しもしないのか。
「この世界は俺が思っていたよりも面白い。こんな事ならもっと早く世に出るべきだった」
俺はアンタらを世に引き戻した事を後悔している。
だが、彼らに出会わなければプニーフタールの事も判らなかったし、あの時点でみんな死んでいた。
人生なんて判らんもんだな。
「俺は……プニーフタールを追うだけだ」
「判ってるよ。お前にゃ悪いが、それも俺の面白いことだ」
そう言うとオオムカデンダルがへへっと笑った。
ムカつく所の筈だが、彼が言うと妙に納得してしまう。
これも彼の性格が成せるわざか。
そもそもムカついた所で、もう怒る気力もない程に俺は疲れきっていた。
0
お気に入りに追加
33
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
王が気づいたのはあれから十年後
基本二度寝
恋愛
王太子は妃の肩を抱き、反対の手には息子の手を握る。
妃はまだ小さい娘を抱えて、夫に寄り添っていた。
仲睦まじいその王族家族の姿は、国民にも評判がよかった。
側室を取ることもなく、子に恵まれた王家。
王太子は妃を優しく見つめ、妃も王太子を愛しく見つめ返す。
王太子は今日、父から王の座を譲り受けた。
新たな国王の誕生だった。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
もう死んでしまった私へ
ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。
幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか?
今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!!
ゆるゆる設定です。
秘密結社ニヨル世界征服活動
uji-na
ファンタジー
【カムロキ】は偉大なる神州日本の復古を謳い、やがて全世界を手中に収めんと企む秘密組織である。
世界征服計画の第一段階として手始めに議事堂の占領と議員の洗脳を行うべく、潜伏中の地下から地表の市街地へと向かった秘密結社カムロキ。ところが、その先に待っていたものは奇妙な生物達が溢れる不思議な森だった。見知らぬ森に奇怪な生物の群れ、本来の目的地とは似ても似つかぬ場所。世界征服計画に早くも暗雲が立ち込める中、まずは情報を集めるためカムロキは調査に乗り出すのであった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる