見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

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二〇四

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 そう言うとオオムカデンダルは『もっと離れろ』と手でジェスチャーした。
俺は言われた通り少し距離を取る。

「お前は中間距離から接近戦までが向いている。まあ、これは好みの問題もあるから、お前が遠距離戦闘がしたいと思えばそれを禁止する事もない。最終的には好きにやれ、だ」

 オオムカデンダルのレクチャーが始まった。

「ただ、格闘だけは習熟しろ。俺たちの最終的な強みはフィジカルだからな。小細工なしに殴るのがもっとも速い」

 確かに。
だが、格闘などほとんど経験がない。
基本的に剣の修行に大部分を費やしてきたのだ。
だから剣士をやっている。
今から格闘家になるのもなんだかなぁ、と言うのが本心だ。

「別に剣士を続ければいいじゃん。辞める必要はない。それとは別に格闘を覚えれば良いんだ」

 簡単に言ってくれるな。

「まあ、迷わずやれよ、やれば判るさ」

 そう言ってオオムカデンダルが笑った。
何がおかしいのかは判らないが、彼的に何か面白いことを言ったのかもしれない。

「お前には俺の好きな『プロレス』を中心に仕込んでやる」

「プロレス?聞いたことないな」

「ふふ。俺の世界で人気の格闘ショーだ」

「ショーなのか?」

「ああ。だが、舐めてると痛い目をみるぜ。最強の格闘ショーだからな」

 ショーなのに最強?
サッパリ訳が判らない。

「いいか。もっとも重要なのはメンタリティーだ」

 いきなり精神論からか。
大丈夫かこれ。

「闘魂だ。判るか?負けない不屈の意思だよ」

 ああ。
理解は出来んが判るよ。
アンタを見てればな。
要は相当な負けん気だ。

「よし!直接体に教えてやる、掛かってこい!」

 そう言うとオオムカデンダルが手招きをする。
彼の強さはよく知っているが、自分が強くなった事もよく判る。
ここは恐れずに自分を試す時だ。

「よし、いくぜ!」

 俺も覚悟を決めて飛び掛かる。
感覚的には剣士の感覚だ。
間合い、タイミング。
剣のない分リーチは無いが、スピードのある踏み込みでカバーする。

 ジャッ!

 足下の砂が鳴る。
一瞬で懐に入った。
我ながら速い。
そのままがら空きのボディーにパンチを叩き込む。

 ドムッ!

 入った。
会心の一撃だ。

「むぅ……ッ!」

 オオムカデンダルのくぐもった声がわずかに漏れる。
効いている。
トドメには早いが決められる時に決める。
相手はあのオオムカデンダルだ。

「フッ!」

 短く息を吐きながら、アゴを狙ってアッパーを最短距離で放つ。
もらった。

 ガシッ

 突然、頭にオオムカデンダルの腕が巻き付いた。
なんだ。

「オオッ!」

 オオムカデンダルが吼えた。
俺のアッパーは手で押さえられ、そのまま抱え込んだ俺の頭を背後に倒れながら地面に打ち付けた。
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