204 / 826
二〇四
しおりを挟む
そう言うとオオムカデンダルは『もっと離れろ』と手でジェスチャーした。
俺は言われた通り少し距離を取る。
「お前は中間距離から接近戦までが向いている。まあ、これは好みの問題もあるから、お前が遠距離戦闘がしたいと思えばそれを禁止する事もない。最終的には好きにやれ、だ」
オオムカデンダルのレクチャーが始まった。
「ただ、格闘だけは習熟しろ。俺たちの最終的な強みはフィジカルだからな。小細工なしに殴るのがもっとも速い」
確かに。
だが、格闘などほとんど経験がない。
基本的に剣の修行に大部分を費やしてきたのだ。
だから剣士をやっている。
今から格闘家になるのもなんだかなぁ、と言うのが本心だ。
「別に剣士を続ければいいじゃん。辞める必要はない。それとは別に格闘を覚えれば良いんだ」
簡単に言ってくれるな。
「まあ、迷わずやれよ、やれば判るさ」
そう言ってオオムカデンダルが笑った。
何がおかしいのかは判らないが、彼的に何か面白いことを言ったのかもしれない。
「お前には俺の好きな『プロレス』を中心に仕込んでやる」
「プロレス?聞いたことないな」
「ふふ。俺の世界で人気の格闘ショーだ」
「ショーなのか?」
「ああ。だが、舐めてると痛い目をみるぜ。最強の格闘ショーだからな」
ショーなのに最強?
サッパリ訳が判らない。
「いいか。もっとも重要なのはメンタリティーだ」
いきなり精神論からか。
大丈夫かこれ。
「闘魂だ。判るか?負けない不屈の意思だよ」
ああ。
理解は出来んが判るよ。
アンタを見てればな。
要は相当な負けん気だ。
「よし!直接体に教えてやる、掛かってこい!」
そう言うとオオムカデンダルが手招きをする。
彼の強さはよく知っているが、自分が強くなった事もよく判る。
ここは恐れずに自分を試す時だ。
「よし、いくぜ!」
俺も覚悟を決めて飛び掛かる。
感覚的には剣士の感覚だ。
間合い、タイミング。
剣のない分リーチは無いが、スピードのある踏み込みでカバーする。
ジャッ!
足下の砂が鳴る。
一瞬で懐に入った。
我ながら速い。
そのままがら空きのボディーにパンチを叩き込む。
ドムッ!
入った。
会心の一撃だ。
「むぅ……ッ!」
オオムカデンダルのくぐもった声がわずかに漏れる。
効いている。
トドメには早いが決められる時に決める。
相手はあのオオムカデンダルだ。
「フッ!」
短く息を吐きながら、アゴを狙ってアッパーを最短距離で放つ。
もらった。
ガシッ
突然、頭にオオムカデンダルの腕が巻き付いた。
なんだ。
「オオッ!」
オオムカデンダルが吼えた。
俺のアッパーは手で押さえられ、そのまま抱え込んだ俺の頭を背後に倒れながら地面に打ち付けた。
俺は言われた通り少し距離を取る。
「お前は中間距離から接近戦までが向いている。まあ、これは好みの問題もあるから、お前が遠距離戦闘がしたいと思えばそれを禁止する事もない。最終的には好きにやれ、だ」
オオムカデンダルのレクチャーが始まった。
「ただ、格闘だけは習熟しろ。俺たちの最終的な強みはフィジカルだからな。小細工なしに殴るのがもっとも速い」
確かに。
だが、格闘などほとんど経験がない。
基本的に剣の修行に大部分を費やしてきたのだ。
だから剣士をやっている。
今から格闘家になるのもなんだかなぁ、と言うのが本心だ。
「別に剣士を続ければいいじゃん。辞める必要はない。それとは別に格闘を覚えれば良いんだ」
簡単に言ってくれるな。
「まあ、迷わずやれよ、やれば判るさ」
そう言ってオオムカデンダルが笑った。
何がおかしいのかは判らないが、彼的に何か面白いことを言ったのかもしれない。
「お前には俺の好きな『プロレス』を中心に仕込んでやる」
「プロレス?聞いたことないな」
「ふふ。俺の世界で人気の格闘ショーだ」
「ショーなのか?」
「ああ。だが、舐めてると痛い目をみるぜ。最強の格闘ショーだからな」
ショーなのに最強?
サッパリ訳が判らない。
「いいか。もっとも重要なのはメンタリティーだ」
いきなり精神論からか。
大丈夫かこれ。
「闘魂だ。判るか?負けない不屈の意思だよ」
ああ。
理解は出来んが判るよ。
アンタを見てればな。
要は相当な負けん気だ。
「よし!直接体に教えてやる、掛かってこい!」
そう言うとオオムカデンダルが手招きをする。
彼の強さはよく知っているが、自分が強くなった事もよく判る。
ここは恐れずに自分を試す時だ。
「よし、いくぜ!」
俺も覚悟を決めて飛び掛かる。
感覚的には剣士の感覚だ。
間合い、タイミング。
剣のない分リーチは無いが、スピードのある踏み込みでカバーする。
ジャッ!
足下の砂が鳴る。
一瞬で懐に入った。
我ながら速い。
そのままがら空きのボディーにパンチを叩き込む。
ドムッ!
入った。
会心の一撃だ。
「むぅ……ッ!」
オオムカデンダルのくぐもった声がわずかに漏れる。
効いている。
トドメには早いが決められる時に決める。
相手はあのオオムカデンダルだ。
「フッ!」
短く息を吐きながら、アゴを狙ってアッパーを最短距離で放つ。
もらった。
ガシッ
突然、頭にオオムカデンダルの腕が巻き付いた。
なんだ。
「オオッ!」
オオムカデンダルが吼えた。
俺のアッパーは手で押さえられ、そのまま抱え込んだ俺の頭を背後に倒れながら地面に打ち付けた。
0
お気に入りに追加
33
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
【完結】お父様に愛されなかった私を叔父様が連れ出してくれました。~お母様からお父様への最後のラブレター~
山葵
恋愛
「エリミヤ。私の所に来るかい?」
母の弟であるバンス子爵の言葉に私は泣きながら頷いた。
愛人宅に住み屋敷に帰らない父。
生前母は、そんな父と結婚出来て幸せだったと言った。
私には母の言葉が理解出来なかった。
冤罪だと誰も信じてくれず追い詰められた僕、濡れ衣が明るみになったけど今更仲直りなんてできない
一本橋
恋愛
女子の体操着を盗んだという身に覚えのない罪を着せられ、僕は皆の信頼を失った。
クラスメイトからは日常的に罵倒を浴びせられ、向けられるのは蔑みの目。
さらに、信じていた初恋だった女友達でさえ僕を見限った。
両親からは拒絶され、姉からもいないものと扱われる日々。
……だが、転機は訪れる。冤罪だった事が明かになったのだ。
それを機に、今まで僕を蔑ろに扱った人達から次々と謝罪の声が。
皆は僕と関係を戻したいみたいだけど、今更仲直りなんてできない。
※小説家になろう、カクヨムと同時に投稿しています。
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる